役割が人をつくる! 看守と囚人の心理学からみる上司と部下

人事担当者の頭をいつも悩ますのが、「リーダーに誰を据えるか」ということです。部下の顔を一人ずつ思い浮かべてみても、どうもイマイチ、誰もリーダー向きじゃない……。そう思うのは当然です。だって、誰もまだリーダーじゃないんですから。やらせてみれば、そのうち「上司」にふさわしい顔つきになっていきますよ。実験心理学が、そう教えてくれます。

  1. 「アイツは頼りないから昇進なんてムリ」と思い込んでいませんか
  2. 実験が成功しすぎて中止になった!ジンバルドの模擬監獄実験
  3. 役割が人をつくる

「アイツは頼りないから昇進なんてムリ」と思い込んでいませんか

プロジェクトリーダーを決めなければならなくなったとき、人事異動で誰かを昇進させなければならなくなったとき、あなたは何を基準に「上に立つ人」を決めていますか。リーダーの器じゃないと思われる人ばかりで、「どうしてうちの部署は人材がいないんだろう……」と嘆く前に、考えてみてください。あなたが頼りないと思っているからこそ、その人は頼りなくなってしまうのではないでしょうか。

人は、与えられた役割を演じようとする社会的な動物です。そして、演じているうちに「本物」になっていくことができます。人間の恐ろしさを露呈させたといわれる模擬監獄実験から、人はいかに役割演技に没頭していくかをみてみましょう。

実験が成功しすぎて中止になった!ジンバルドの模擬監獄実験

1971年、スタンフォード大学で心理学者の人バルドが行ったのが、模擬監獄実験です。実験のために募集したアルバイト人員から、精神的に安定していて反社会的行為に関係したことのない人を選び出し、10人の囚人と11人の看守に分けて、2週間の役割実験を行うこととしました。

ジンバルドがこの実験で実証したかったのは、「人はある役割を割り当てられると、その役割に沿った行動や考え方を取るようになる」ということです。つまり、囚人役はより人としての自信を喪失して受け身な行動をとるようになり、看守役は自然と囚人をアゴで使ったり、威張り散らしたりするようになれば、実験は成功ということになります。

ところが、この実験は思いのほか早い段階で成果を上げます。実験を始めて2日目には囚人側に不安や怒り、抑うつといった感情が芽生え始め、看守側にはすぐに攻撃的な行動が見られるようになったのです。囚人の無気力状態が深刻になり、実験者の見ていないところで看守による囚人への暴行が始まったので、この実験はわずか6日で中止となってしまいました。

役割が人をつくる

ジンバルドの模擬監獄実験は、人が与えられた役割を演じようとしているうちに、その役割が内面のアイディンティティにまで影響を及ぼすことを示唆しています。「暴力が許される状況なら、人はどんどんエスカレートするということでは?」と実験を解釈することは簡単ですが、この実験結果をポジティブな状況に活かせないでしょうか。

役割が人をつくるなら、人は肩書を与えられれば、その肩書にふさわしい行動をとるようになるとも考えられます。リーダーにふさわしいからリーダーになるのではなく、リーダーになるから、リーダーにふさわしい行動や考え方が身につくのです。

「頼りないアイツ」でも、責任ある立場になれば大変身する可能性が十分にあります。それでもやっぱり慎重になりたい、というときは、新人の教育係や飲み会の幹事など、小さなことから任せてみましょう。きっと、意外に頼もしい一面を見ることができますよ。

参考:『社会心理学ショート・ショート』

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