子育てって、楽しいの? キツイの? 心理学的解釈でスッキリ解決

ネットを覗くと、子育ての辛さについて嘆く声も、幸せや楽しさに関する声もたくさん目にします。子育てというのは楽しいのでしょうか、それとも辛いものなのでしょうか? その答えは、心理学を使えば明快です。

  1. 子育てはやりがいのあることだと誰もが言うけれど
  2. 人は認知的不協和を解消したい生き物
  3. ズバリ子育て体験を評価した心理実験がある
  4. 報われなさは脳内で「やりがい」に化ける

子育てはやりがいのあることだと誰もが言うけれど

母親による一対一の子育て、いわゆる「ワンオペ育児」が問題視され、父親の子育て参加が叫ばれています。ネットの口コミを覗けば「保育園落ちた……」に始まり、母親が子育てを「辛い」「悩みが多い」「耐えかねる」とする情報が目につきます。これから結婚や出産を控えている人からすれば、「相当の覚悟が必要なんだな」と思ってしまうのではないでしょうか。

一方で、母親になることの幸せや、子育ての楽しさに関する情報もまた、巷にはあふれています。

実は、筆者は現在6ヶ月の息子を抱えながらこの記事を書いています。産前、子育てに関して聞いた情報には、ポジティブなものもネガティブなものもありました。「生まれてからは、幸せな気持ちがずっと続くよ」「生まれたら大変だけど、体力は、子どもと一緒についていくからね」「なんだかんだ、自分の子どもはかわいいよ」……などなど。

いざ子どもが生まれてみると、子育ての大変さには度肝を抜かれました。1時間刻みの細切れ睡眠は当たり前、食事をする時間も十分になく早食いでよくお腹を壊し、抜け毛がひどくて見た目が7歳は老けました。美容院にも、自分の病院にも行けずとても不自由です。確かに子どもはかわいい気がするけれど、そんなことはチリ一つの慰めにもなりません。 リアルな例を出そうと私事をつらつら書いてしまいましたが、このように子育ては本当に大変です。もちろん子どもの顔を見ているだけで幸せと思う時間もあり、しみじみと産んでよかったとも思うのですが、冷静に考えてみると大変さと幸福度のバランスが悪いような気が……。

では、 私も含めて 世の中の人は、何をもって「子育ては楽しい」「子どもがいて、何より幸せ」と言うのでしょうか。

人は認知的不協和を解消したい生き物

「認知的不協和」という心理学用語があります。人が矛盾した認知を抱えた状態のことを表しますが、認知的不協和に陥ると人は矛盾に対して不快な感情が起こるため、その矛盾を解消しようとして態度や行動を無意識に変えると考えられています。

認知的不協和の例として有名なのが、「酸っぱい葡萄」というイソップ寓話です。キツネがブドウの木を見つけ、実を食べようとしますが、ブドウの身は高い枝にありどうしても届きません。キツネはとうとう諦め、「どうせあんなブドウはすっぱくてまずいんだ」と負け惜しみを言いながら去っていきます。どうしても食べられないものを脳内で「まずいもの」とみなし、気持ちに折り合いをつけようとするのです。 この寓話と対になる話として「甘いレモン」といわれるものもあります。これは、必死になって手に入れたレモンに価値があると思いたくて、「このレモンは甘い」と思い込む心理反応です。

ズバリ子育て体験を評価した心理実験がある

心理学者のエイバックとスティーヴ・モリスによる子育ての親を対象にした心理実験が、トーマス・ギロビッチ博士の著書の中で取り上げられています。ある親たちには子どもを一人前にするまでにかかる経済的負担の情報だけを与え、他の親たちには高齢になって子どもたちから与えられる金銭的、身体的な支援についての情報もプラスして与えました。

その後、親であることの喜びや子育ての価値について述べた文章に同意するかどうかを親たちに尋ねました。「人生において子育てほどやりがいのあるモノはない」、「子どものいない人は子どものいる人より鬱になる可能性が高い」といった文章です。すると、負担情報だけを与えた親たちのほうが、一層強くそれらの文章に同意したのです。

報われなさは脳内で「やりがい」に化ける

この実験結果からは、子育ての負担が大きいにもかかわらずそれをせざるを得ない「矛盾的状態」に対する不快感を緩和するため、つまり子育てで生まれる認知的不協和を解消するために認知に修正を加え、体験を正当化する心理効果がみられます。報われなさは、脳内で「やりがい」に修正されたと考えられます。

つまり、子育ては辛いものですが、辛さそのものが「楽しい」「やりがいがある」と感じる材料になっているのかもしれません。 もちろん子育てそのものにもやりがいがあることは実感していますが、 その辛さが金銭などで解消されてしまったら、きっとやりがいが少し 薄れてしまうことでしょう。

私たちの脳は、自分が生きづらさを感じないよう、うまく認知をコントロールさせているようです。

参考

『その部屋のなかで最も賢い人』(青土社)p.152

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