煽り運転の元凶は本能への刺激だった!?

煽り運転が大きな社会問題となっています。しかし、どうして運転をすると、これだけ凶暴になる人が増えるのでしょうか?その秘密を心理学的に考察しました。

  1. 繰り返される「煽り運転」
  2. スピードアップに働く本能
  3. 車間距離を空けて闘争本能を刺激しない
  4. 本能に支配されない方法とは

繰り返される「煽り運転」

連日のように「煽り運転」による逮捕が報道されています。

宮城県では、煽り運転を注意しようとトラックのステップに足をかけた男性を、車体にしがみつかせたまま6キロ以上走行。蛇行運転を繰り返したとして、殺人未遂の罪で逮捕されました。

また福島県では、前を走る車を煽った上に、刃物をちらつかせて脅したとして暴力行為法違反での逮捕者がでています。この容疑者は、「気分良く運転していたのに、車線変更してきた車に前に割り込まれて腹が立った」(『福島民友 みんゆうNet』2019年2月23日)と供述しているそうです。

煽って運転するだけではなく、注意しようとした人を振り落とそうとしました。このように行動が過激化するのは、運転の影響も大きいのでしょう。

もちろん、この事件の容疑者たちが特に凶暴だという可能性もあります。それでも同じ被害者と加害者であっても、路上であれば口げんかで終わったかもしれないケースが、運転をしていることで殺人未遂や暴力行為となり逮捕まで発展したかもしれないという可能性も捨てきれないと感じるのです。

スピードアップに働く本能

そもそも車を飛ばしたがる人が多いのはどうしてでしょう。

「物流ウィークリー」に、40年にわたり交通事故防止の研究をしている松永勝也・九州大学名誉教授の次のようなコメントが紹介されています。

「他者よりも速く移動できる者が生き延び、その特性が本能として受け継がれてきた。この『先急ぎの本能』が、運転においても影響を与えている」

エサのある場所により速く移動し、危険からは素早く逃げる。そんな野生の本能がハンドルを握ることによって刺激され、よりスピードを上げたいと思ってしまう、と松永名誉教授は分析しているわけです。確かにハンドルを握った瞬間、性格が変わったようにスピードを出す人はいます。その「先急ぎの本能」が危険性を高めていることは、多くの人が納得できることでしょう。

車間距離を空けて闘争本能を刺激しない

しかし運転はスピードだけに影響を与えるわけではありません。運転と本能との関係について『毎日使える、必ず役立つ心理学』(サラ・トムリー 著/河出書房新社)は、ダニエル・カーネマンの「速い思考・遅い思考」の理論を使って説明しています。

カーネマンによれば、人には2つの思考があるそうです。

1つは「速く、本能的で、無意識のうちに働き、説得力があって感情にあふれている」<速い思考>、もう一つは「遅く複雑で、意識しないと働かず、理性的で、判断を下すことも計算することもできる」<遅い思考>。

<速い思考>は、事が起きると勘定的にすぐに結論を出します。運転でいえば、「てめえ、割り込みやがったな」という感じ。

これを<遅い思考>が抑えることができればいいのですが、この<遅い思考>が怠け者らしく、疲れると機能しないで<速い思考>に従ってしまうらしいのです。

しかも<速い思考>は曖昧さがなく、相手がわざと割り込んだと思うだけではなく、事実と認定してしまうらしいのです。

そのうえ車線変更による割り込みは、生物にとっての領域侵犯となります。そこに家族やパートナーが同乗していようものなら、闘ってでも排除しようという本能に火がついてしまうとのこと。

まして実際にブレーキをかけるようであれば、そこに命の危険を感じ取り、一気に先頭モードに突入してしまうのです。

これはライオンの群れに、いきなりチーターが走って飛び込んできたようなものです。群れを守るために、ライオンは牙をむき出して応戦しようとします。たとえチーターが別なものに気を取られて、ライオンの生活領域に踏み込んでしまっただけだとしても、ライオンにとっては生命にかかわる大問題。攻撃のために走りこんできたと勘違いします。

よく安全運転には車間距離が重要だと言いますが、人間の闘争本能を刺激しないためにも、車間距離が大切だったのですね。

本能に支配されない方法とは

では、運転による本能の刺激にどう対処すればいいのでしょうか?

『毎日使える、必ず役立つ心理学』は<遅い思考>が働くようにすべきだと教えてくれます。

まず、運転でストレスが溜まりすぎる前に休息をとること。<遅い思考>が働く環境を作ることが重要になります。

さらに<速い思考>が働き始めるサイン(鼓動や早まる、歯を食いしばるなど)が出たら、実際には命の危険がない状態であることを認識し、怒りが激怒や暴力に変わっていくのを食い止めるのです。

車の運転が本能に直結するからこそ争いも大きくなるのでしょうが、その本能的な怒りが、本当の生命の危機から生まれたものではないことを知っておくのは、怒りを抑えるのに有効かもしれません。

パーソナルスペースがほとんどない満員電車ですら怒りなく乗車できることを考えれば、やや車間が縮まる車線変更に目くじらを立てるのがおかしいとわかるでしょう。

逆に本能に従うことで、生命も社会的な地位も失ってしまう可能性があることも、肝に銘じて運転しましょう。

参考:「 物流ウィークリー」(https://weekly-net.co.jp/news/35880/)『毎日使える、必ず役立つ心理学』(サラ・トムリー 著/河出書房新社)

関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です