病気やけがで休んだとき、 有給を使い果たしても「傷病手当」があるから大丈夫

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ふだん健康に生活していると、病気やけがで長期間の療養が必要になったときのことなどあまり考えていなのではないでしょうか。でも、病気やけがは、ある日突然やってきます。長く仕事を休まなければならなくなったら、無給での欠勤や休職になってしまうのでしょうか。社会保険でもらえる手当と、自分で入る保険を上手に組み合わせて乗り切る方法をお伝えします。

  1. 全治2ヶ月!? 仕事も生活もどうしよう……
  2. 社会保険に入っていれば傷病手当金を申請できる
  3. 有休を使いつつ、待期期間の3日間を完成させよう
  4. 退職を余儀なくされても引き続き支給を受けられる
  5. 傷病手当金も使い果たしたときのための「所得補償保険」
  6. 民間保険は、精神疾患での請求は難しいことも
  7. 有給休暇と公的・民間保険を駆使して長期療養を乗り切ろう

全治2ヶ月!? 仕事も生活もどうしよう……

病院のベッド数が足りない!と騒ぎになる現代、一般的な病気で長期入院に陥ることはあまりないでしょう。しかし、骨折を伴うけがを負うと、入院・リハビリ含め2ヶ月、3ヶ月の療養生活を送ることになったらどうでしょう。長期療養となった場合「自分の生活はどうなってしまうのか?」と不安になりませんか。

こんなとき、「とりあえず病気やけがの状況については『すぐ治る』と報告して、余っている有休を総動員しよう」と考えしまう人はいませんか。差し当たってはそれで何とかなるかもしれませんが、有休を使い果たしたらどうしますか。無休での欠勤または休職という形になってしまいます。じつは会社側に病気やけがの具合を正確に話すことで、場合によっては長く手当がもらえる傷病手当金という制度があることを知っていますか?

社会保険に入っていれば傷病手当金を申請できる

傷病手当金は、社会保険に加入している社員が利用できる制度です。病気やけがで療養が必要になったとき、最長で1年6か月のあいだ最低限の収入が保障されます。支給額は、給与のおよそ2/3です。

支給額について詳しくいえば、「支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額を30日で割り、2/3をかけた金額」が、申請した日数に限り支給されます。ちょっとわかりづらいですが、過去1年間の平均月給額の2/3が、日割りで支給されるということです。

有休を使いつつ、待期期間の3日間を完成させよう

傷病手当金をもらうには、3日間の待期期間を完成させた後でなければなりません。待期期間とは、申請条件を満たすための期間であり、仕事が全くできない状態が3日間続いた後に傷病手当金の申請ができるのです。「仕事が全くできない状態」が条件なので、「ちょっとベッドでパソコン開いて業務上のメールを」といったことはできませんから、注意が必要です。

待期期間には、土日や祝日といった公休や、有休休暇が含まれてもよいとされます。よって、待期期間には有休を申請したほうがいいでしょう。とにかく3日間、待期期間を完成させてから申請に移ります。


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退職を余儀なくされても引き続き支給を受けられる

長期療養中に、「こんな状況では、仕事をすることができない。会社側にも迷惑がかかる」と、上司などとも相談の上、退職を決めたとします。でも、退職日までに社会保険に加入していた期間が継続して1年以上あり、病状が変わらず仕事ができないままなら、引き続き支給を受けられます。

傷病手当金も使い果たしたときのための「所得補償保険」

給与の2/3しかもらえないとはいえ、働けない期間に一定の収入があるのはありがたいことですね。しかし、「1年6ヶ月を過ぎても仕事ができる状態にならなかったらどうしよう?」と不安がよぎることもあるでしょう。実際、めったにあることではありませんが、絶対にないとはいえません。

傷病手当金が出ると知ったうえでも不安な人や、そもそも自営などで傷病手当金が使えない人は、自力でセーフティネットを張る必要があります。貯蓄も手段の一つですが、損保会社が展開している「所得補償保険」や、生命保険会社が展開している「就業不能保険」」に入っておくのもいいでしょう。

所得補償保険も就業不能保険も、病気やけがで長期間仕事を休まざるを得なくなったときに保険金が出るものです。契約時に自分で設定した金額が、毎月受け取れます。ただし、いずれの保険も支払い対象外期間があるのが一般的で、「病気やけがの状態になってから、90日あるいは180日は保険金が受け取れない」という契約になっています。

つまり、病気やけがを負ってから180日間は傷病手当金を頼りに生活し、以後は民間の保険を使って生活費を補うということができます。また、傷病手当金の切れる1年6ヵ月目までは保険金の削減を行うタイプの契約もあり、若干保険料が安くなるメリットがあります。

民間保険は、精神疾患での請求は難しいことも

所得を確実なものにするために民間保険を検討するなら、気をつけるべきことがあります。それは、所得補償保険も就業不能保険も精神疾患での利用は難しいケースが多いということです。精神疾患こそ長引く可能性のある病気といえるので、使えないのは少し残念ですね。傷病手当金のほうは、精神疾患であっても受け取ることが可能です。

有給休暇と公的・民間保険を駆使して長期療養を乗り切ろう

実は、傷病手当金は自動的に支給されるものではなく、自ら申請しなければ受け取ることができません。もちろん総務部、人事部などが助言をしてくれるでしょうが、自分でもあらかじめ知識をつけておいたほうがいいでしょう。会社の制度、公的制度、民間保険をうまく利用して、人生のピンチを切り抜けて!

【関連リンク】日本産業カウンセラー協会のご紹介
日本産業カウンセラー協会は、産業カウンセラーの育成をはじめ、企業・団体向けの研修や相談、個人向けの電話相談活動など、働く人と組織の課題解決を支援します。

監修:日本産業カウンセラー協会

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