解雇以外で会社を辞めたら、すぐには失業保険が下りないのでしょうか?自己都合退職だと3ヶ月は失業給付が下りない失業保険ですが、やむを得ない場合はその限りではありません。特定理由離職者について解説します。
- 失業保険は自己都合退職の場合、3ヶ月は失業給付が下りない
- 特定理由離職者とは、雇い止めや、やむを得ない事由により離職を余儀なくされた人
- 解雇などの特定受給資格者との違い
- 判断するのは誰?
- 会社側と主張がかみ合わなくても大丈夫
- 腑に落ちない離職のうえ、腑に落ちない給付金を受給しないために
失業保険は自己都合退職の場合、3ヶ月は失業給付が下りない
失業保険(正しくは「雇用保険」)を使うと、たとえ会社を辞めたとしても給付金が一定期間支給されます。ハローワークで職を探しながら、短くとも3ヶ月は給与の5~8割を受け取れるので、「いざとなったら会社を辞めて、しばらく失業保険でしのごう」と考えている人もいるかもしれませんね。
しかし、失業保険には落とし穴があります。それは、自己都合で離職した場合、3ヶ月の給付制限があることです。つまり、「人間関係に疲れたから辞めたい」「新しい環境にチャレンジしたい」といった、一身上の都合で会社を辞めた場合は、3ヶ月間収入なしで暮らさなければなりません。
でも、自己都合であっても、「本当は働きたいのに、働けない状況に追い込まれて」辞める人もいるわけです。そんな人は、3ヶ月もの間無収入の状態に追いやられることに納得がいかないかもしれません。そのような場合の救済措置があります。
特定理由離職者とは、雇い止めや、やむを得ない事由により離職を余儀なくされた人
失業保険給付における特定理由離職者とは、期間の定めのある労働契約が更新されない雇い止めや、その他やむを得ない理由によって退職した人を指します。具体的には、次のような人です。
・体力不足や心身障害、病気やケガ、視力や聴力・触覚の減退によって退職した人
・父母や子どもの疾病、けがなど家族事情の急変によって退職した人
・単身赴任など家族との別居が難しくなって退職した人
・結婚に伴う住所の変更により通勤が難しくなって退職した人
・転勤による単身赴任が不可能になって退職した人
・事業所が通勤困難な場所へ移転し、退職した人
・配偶者の転勤によって退職した人
・企業の人員整理などで希望退職に応募した人
解雇などの特定受給資格者との違い
特定理由離職者とは別に、特定受給資格者という枠も存在します。これは、会社の倒産や解雇によって離職した人です。特定受給資格者と判断されると、自己都合による退職者と違い、次のような優遇措置があります。
・雇用保険の被保険者期間が、離職以前の1年間において6ヶ月以上あれば受給資格が得られる。(自己都合による退職者の場合は2年間で12ヶ月以上)
・被保険者期間や年齢によっては給付日数が手厚くなる場合がある(具体的には、例えば34歳で6年間被保険者であったなら、180日。自己都合による退職者の場合は90日となる。)
特定理由離職者と判断された場合には、特定受給資格者と同様の優遇措置を受けられる可能性があります。
判断するのは誰?
特定理由離職者であるか否かを判断するのは、公共職業安定所、つまりハローワークです。ハローワークが、離職票に書かれた離職理由をもとに、また離職理由を確認できる資料をもとに判断します。
離職理由を確認できる資料とは、例えば自分や家族の病気・ケガによる離職の場合は医師の診断書、配偶者の転勤による退職の場合は転勤辞令や住民票の写しなどです。離職理由を客観的に認められるような資料を提出する必要があります。
会社側と主張がかみ合わなくても大丈夫
離職票は会社側が作成するものなので、離職理由の記載が本人の主張とかみ合わないこともあるかもしれません。離職票の⑦欄にある「離職理由欄」に注目し、本人の意識と違う場合は、まずは会社に問い合わせましょう。正しい理由へ訂正してもらうよう願い出ます。
もしも応じてもらえない場合は、離職票の2枚目にある本人判断欄で「異議あり」に丸を付け、ハローワークに相談しましょう。ハローワークは、それぞれの主張を確認できる資料を確認したうえで、慎重に判断を行います。
腑に落ちない離職のうえ、腑に落ちない給付金を受給しないために
新しい環境で頑張りたいと思う間もなく、職を失うことを余儀なくされてしまったら、悔しい気持ちの行き場がないですよね。せめて失業給付の面だけでも、優遇措置を受けたいものです。
「夫の転勤だって自己都合のうちだもの、しょうがない」
「病気になってしまった自分自身に責任がある」
どうかそんなふうに考えないで、公共のセーフティーネットを上手に利用してください。
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参考:特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準(厚労省)