あなたの最初の記憶は、どのようなものですか? 近年の研究により、私たちはこれまでいわれていたよりも幼い時の記憶を持っていることがわかりました。そこで幼児の記憶について、情報をまとめてみました。

- 2歳から記憶が!?
- 言葉の発達と記憶の関係
- どうすれば幼児の時の記憶がよみがえる?
2歳から記憶が!?
自分の最初の記憶を思い出してみてください。何歳の記憶ですか? 3歳~4歳ぐらいの記憶なら一般的と言えるでしょう。ただし「2歳以下の記憶」だと、それは親・兄弟の話や写真などから作り出した「記憶」で実際の体験を覚えていない可能性が高いそうです。というのも2歳以下の脳は、記憶を司る海馬が未発達で、長期に記憶を残しておけないと考えられているからです。
ただしまったく記憶できないわけではありません。
発達心理学者のキャロリン・ロヴィー・コリア―氏によれば、赤ちゃんでも短期の記憶であれば持つことができるそうです。1歳なら8週間、2歳なら12週間ほど記憶が保てるとのこと。つまり長期間、記憶にとどめることが難しいのです。
こうした研究から、人は3歳以前に起きた出来事は思い出せないと言われてきました。しかしニューファンドランド記念大学のキャロル・ピーターソン博士は、これまでの常識より1年早い2歳から人は記憶を持っていると指摘しています。
ただ多くの人が時期を間違ってしまう傾向があるというのです。具体的には2歳半の記憶なのに、3歳半だと勘違いするといったことが起きるそうです。
言葉の発達と記憶の関係
しかも赤ちゃんは言葉を話せないため、記憶を思い出すときに大切なさまざまな結びつきがつくりにくいのです。
例えばリンゴをむいている母親を見たとしても、リンゴを「赤い丸いもの」としか認識できないと、リンゴと母親が結びつきにくいため思い出しにくくなってしまうわけです。
過去の記憶を思い出そうとしたとき、周辺の情報を与えられて、全体像を思い出すことは多いでしょう。例えば子ども時代の友達の名前が浮かばなくても、足が速かった、背が高かったといった情報が思い出し、いきなりニックネームを思い出すといったパターンです。こうしたことは、思い出したい記憶の周辺を言葉で整理して覚えているからこそ起こるのです。
どうすれば幼児の時の記憶がよみがえる?

2歳ともなると、個人差はあるものの話すようになりますし、ごっこ遊びなどもするようになります。大人から見ると覚えておいてほしいなと思うこともあるでしょう。
では、どうすれば幼児期の記憶を思い出す可能性が高まるのでしょうか?
最も有望なのは、香りと結びつけることでしょう。もともと香りと記憶が結びつきやすいことは知られています。フランスの作家マルセル・プルーストが『失われた時を求めて』に描いた、紅茶に浸したマドレーヌを口に含んだ途端に幼少期のことを思い出すシーンから、香りから記憶を呼び覚ますことはプルースト効果と呼ばれています。
また赤ちゃんは「母親の匂い」や「母乳の匂い」を記憶しており、赤ちゃんを安心させる要素になると言われています。つまり嗅覚の刺激は、香りと一緒に周辺の記憶を呼び覚ます可能性があるのです。
一般的には経験した当時と同じような状況に身を置くと、記憶がよみがえる可能性が高まります。例えば通っていた保育園に行ってみたり、2~3歳の誕生日会の飾りつけを見たりすることも有効でしょう。
2歳から記憶があると知ると、子どもの2歳の誕生日をちょっと頑張りたくなってしまうかもしれませんね。
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監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会
参考:参考:『心理学ビジュアル百科』(越智啓太/創元社)/『意識的な行動の無意識的な理由』(越智啓太/創元社)/「Your first memory is probably older than you think」(Alexandru Micu/ZME Science)