健やかな自尊心はどうやったら育つ? 子どもが自分を本当に愛せる人間になるには

少年犯罪が目立つようになり、14歳が「キレやすい時期」とされた頃がありましたね。中学生から高校生にかけては、とくに自分自身に対して意識が向きがちです。その時期に健やかな自尊心を育てるには、どんなことが必要なのでしょうか。

  1. 青年期の手前に立ちはだかる自己不全感
  2. 親との関係性が自尊心に多大な影響を及ぼすといわれている
  3. 子どもを肯定することと、手放しに誉めることは違う
  4. 自尊心の高低ではなく、自尊感情の振り幅が重要!
  5. 自分のいいところも悪いところも自覚させるのが親の役割

青年期の手前に立ちはだかる自己不全感

多くの心理学者が、自尊心は10代前半から低下し始め、18歳になる頃まで低下し続けると指摘しています。そこには多くの要因があるでしょうが、やはりたくさんの人たちと交わるようになり、自分より優れたところのある人が大勢いると知ること、また単純に勉強についていけなくなることなどが挙げられるでしょう。

体格にも違いが出てきて、身長やボディラインなどをクラスメイトと比べて落ち込むといったことも、自尊心の低下につながります。他者の出現、環境の変化、自分自身の心身の変化が、自己不全感を募らせるきっかけとなるのです。

親との関係性が自尊心に多大な影響を及ぼすといわれている

そう、中高生の頃は、いわば「世間にもまれる」第一段階を経験する時期です。発達心理学によれば、そこで自尊心をうまく保てるかどうかは、両親との関係性が大きなカギを握っているとされています。

幼児期から少年期にかけて、両親による肯定が日常的に得られていれば、精神が安定し自尊心を大きく損なうことがないとされています。一方で両親の不仲や離婚、暴力など自分を否定される出来事が多いほど、子どもの自尊心は育たないというのです。

とくに父親から受容されているか否かが、女子の自己肯定感に影響を及ぼすという報告もなされています。これは、思春期において自尊心を損なう度合いが、男子よりも女子に大きいといわれていることと合わせて興味深いことです。

子どもを肯定することと、手放しに誉めることは違う

しかし、子どもをひたすら肯定して育てることには、問題もあります。「とにかく何でも肯定しよう」と思い、悪いことは小さく叱り、よいことは手放しでほめるような子育てを繰り返していると、自尊心は高まるものの、肥大しやすくなってしまうのです。

肥大した自尊心は本人の気持ちを不安定にします。自己肯定が得られないことも問題ですが、真の問題は自尊感情の振り幅にあるのではないでしょうか。そう考えた心理学者が、実験を行っています。


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自尊心の高低ではなく、自尊感情の振り幅が重要!

一般的には、自尊心を高めた子どもは抑うつ傾向が低く、成績や対人関係も良いとされている一方で、「プライドの高い人はすぐ傷つく」とも指摘されています。しかし心理学の現場では、「自尊感情の高さではなく、その振り幅が精神の安定に影響を及ぼす」という考え方が、受け入れられています。

心理学者の原田宗忠氏は「なぜ、自尊感情が揺れやすい者と揺れにくい者がいるのだろう」と疑問を呈し、思春期の葛藤を経験してきた250名の大学生たちにアンケートをとりました。その結果、本当に精神的に安定しているのは、単に自尊心の強い者ではなく、自分の良い面も悪い面もよく知り、かつそれでも自分を肯定していて自尊感情の振り幅が小さい者であると結論付けたのです。

人は自分に万能感を持っていると、その感覚が崩されたときに大きく精神を乱されます。自尊心を大きく乱される出来事が、挫折です。挫折がその人の人生に暗い影を落とすのか、それとも明日を生きるエネルギーとできるのか。それが人生の明暗を分けることは、一般的な感覚としてもよく知られていますよね。

挫折から立ち直る力をつけることは、自尊心をずっと保ち続けてゆくことよりも、はるかに大事なこととされています。本当に必要なのは、自己を万能と錯覚するような感覚を育てることではなく、広く深く自分を知ることで、障害が立ちはだかってもしなやかに立ち向かっていく力ではないでしょうか。

自分のいいところも悪いところも自覚させるのが親の役割

自尊感情の揺れ幅の大きさが精神に大きなダメージを与えることを考えると、本当に子育てにおいて大事なのは、子ども自身に自分のいいところも悪いところも自覚させてゆくことだといえます。そのうえで、「いいところも悪いところも、すべてひっくるめて、あなたのことが大好き」と伝えていければ、子どもの健やかな自己肯定感を育てることができるでしょう。

そのためには、親側が客観的に我が子の長所と短所を見極めてゆくことが必要になってきます。褒めるところと注意するところがあまりに見当外れでは、子どもは正しい自己肯定感を育むことができません。子どもをよく観察し、社会的な存在としてどんなところが強み弱みとなるのかを、できる限り正確に本人へ伝えられるようにしましょう。

参考:『危機を生きる』(ナカニシヤ出版)p.81

「青年期における自尊感情の揺れと自己概念との関係」原田宗忠、『教育心理学研究』2008

「両親との情緒的関係が青年期の攻撃性に与える影響―自己愛・自尊心を仲介にー」永森悠紀、西村昭徳、『東京成徳大学診療心理学研究』第16号

「大学生の自尊心と関連する諸要因に関する研究」豊田加奈子、松本恒之、『東邦大学人間科学総合研究所紀要』創刊号(2004)

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