3歳になる頃から、子どもは他の子どもと一緒に遊びを行うようになります。でも、そもそもどうして、遊びは大事なこととされるのでしょう?発達心理学から見た遊びの役割について解説します。
- 子どもは遊ぶのが仕事!でも、なんで遊ぶ?
- 人間は「遊ぶ動物」だからこそ脳が発達する
- 遊びにおける試行錯誤が創造性と柔軟性を養う
- ごっこ遊びがとくに子どもの発達を促すといわれる理由
- 子どもと遊ぶときは、その行為がどんな側面を発達させるかを意識してみよう
子どもは遊ぶのが仕事!でも、なんで遊ぶ?
子どもって放っておくと一日中遊んでいますよね。しかも、同じ遊びを何回してもぜんぜん飽きません。仕事から帰ってくると「遊んでよ!」とせがまれて、「正直疲れているから困ったな……」と感じたことのある母親、父親は多いでしょう。
でも、子どもの発達にとって、遊びは本当に大事なのです。その理由を知れば、毎日の「遊んで」コールも、また違った見方ができるかもしれませんよ。ただ、何も考えずに遊びの相手をするのと、「この子の発達に必要なのだ」と思いながら積極的にかかわるのでは、充実感が違うでしょう。ぜひ、わが子と本気で遊ぶために、遊びの役割について知っておきましょう。
人間は「遊ぶ動物」だからこそ脳が発達する
「遊び」についての理論を展開したヨハン・ホイジンガは、人間を「ホモ・ルーデンス」と名付けたことで有名です。ホモ・ルーデンスは、「遊ぶ人」と訳されます。ホイジンガは遊びこそが他の動物と人とを分かつ最大の行為であるとしました。文化と呼ばれるものはすべて、遊びの中から生まれたというのです。
確かに、スポーツという文化が遊びから生まれたというのはうなずけます。政治や法律なども、「一定のルールを守る」ことが基盤にあることを考えれば、遊びが政治や法律のルーツにつながると考えられるでしょう。宗教もまた、たくましい想像力のたまものです。
ホイジンガの理論に影響を受けたロジェ・カイヨワは、遊びをいくつかの類型に分け、人間の文化をいずれかの遊びの発展形と捉えました。ホイジンガとカイヨワ、2人の学説にのっとれば、私たちの生活を回しているルールはもちろん、学びや芸術、科学などすべてが「遊び」のたまものということになります。
つまり、子どもの頃にあらゆる遊びを体験することは、世間のルールを守り、学習し、自己を表現し、物事を科学的に理解するために最も大事なことだといえます。
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遊びにおける試行錯誤が創造性と柔軟性を養う
遊びがどれだけ子どもの発達に有効かは、それが身体的遊びであるほどわかりやすいでしょう。鬼ごっこは足腰と機敏性を鍛え、鉄棒は上半身の身体能力を高めてくれます。それでは、知能における発達は、遊びによってどのように叶えられるのでしょうか。
心理学者のダンスキーとシルヴァマンは、遊びにおける子どもの知能発達について、次のような実験をしました。幼児を3つのグループに分け、1つめにはペーパータオルやクリップといった日用品を大量に与えて自由に遊ばせます。2つめのグループには、大人がそれらの日用品を使うのを見てまねさせます。3つめには、クレヨンで好きに絵を描かせます。
次に実験者は、3つのグループの子どもたちに日用品の一つを示し、「これは、いろんな使い方ができますよね。どんな使い方があるか、教えてくれませんか?」と質問しました。すると、その日用品で自由に遊んだ第一のグループの子どもたちが、圧倒的に多数のユニークな回答を行ったのです。普通では考えられないような、自由な発想も他出しました。
このことから、ものを使って自由に遊ばせることは、子どもたちが試行錯誤しながら道具の性質を知り、自らそれを活かして新しい使用法を思いつく、つまり創造性や柔軟性を培うために有効だと考えられます。創造性も柔軟性も、社会人にとって喉から手が出るほど欲しいものではないでしょうか。
ごっこ遊びがとくに子どもの発達を促すといわれる理由
初めからルールの定められたカードゲームより、またよく作られた知的遊びより、ごっこ遊びがとくに子どもの発達を促すといわれる理由は、まさに創造性や柔軟性を養うために最適という考え方によります。用意されるものがシンプルであればあるほど、子どもはそこに自分なりのルールを見出し、何かに見立てて遊び始めることでしょう。
また、ごっこ遊びはコミュニケーション能力の発達にもつながります。「ごっこ」ができるということは、その行為が「にせものであること」、「集団で理解できるある一定のルールを持っていること」、「その場では役割を演じなければならないこと」を理解しなければなりません。このような複雑な物事を理解し、他の子どもとスムーズに遊べるほど、その子の知能とコミュニケーション能力が発達していることを、ごっこ遊びは証明してくれるのです。
子どもと遊ぶときは、その行為がどんな側面を発達させるかを意識してみよう
子どもに遊びをせがまれたときは、「その遊びは、この子のどんな力を伸ばしてくれるのかな?」と考えるようにしましょう。すると不思議なもので、子どもの成長のためと思えばどんどん気持ちが乗ってきます。そして、どんな遊びが好きで、どんな遊びには興味がないのかを観察できれば、子どもの個性をいち早くとらえることができるでしょう。
ときには親のほうから「こんな遊びをしよう」と提案してみるのもいいですね。そのとき、複雑なルールや高価な遊具は必要ありません。子どもは「これで遊ぼう」といわれれば、どんなものでも自分で何とか工夫して遊ぼうとします。遊び方やルールは、子どもの反応に合わせて決めていくと、面白い遊びを発明できますよ!
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監修:日本産業カウンセラー協会
参考:『子どもの育ちを支える発達心理学』(朝倉書店)