ダイエットをしているのに、料理が余ると「もったいない」と食べてしまう人はいませんか?うなずいた方はサンクコスト効果の影響を目の当たりにしています。ときに会社も個人も破滅に導く、サンクコスト効果について解説します。
- 時間や費用をかけている物事を途中でやめられる?
- サンクコスト効果がコンコルド効果ともいわれる理由
- 損切りできない経営者にはご用心!
- 第三者の冷静な意見に耳を傾けよう
どんな物事でも、時間や費用をかければ、自分にとって価値あるものと感じるでしょう。しかし、まさにその物事が、これからの自分にとって「お荷物」にしかならないとしたら、どうしますか。バッサリと切り捨てることができるでしょうか?
時間や費用をかけた出来事を、「せっかくだから」「もったいないから」と感じてやめられなくなってしまうことを、サンクコスト(埋没費用)効果といいます。今までに払ったコストをムダにすることが惜しくなり、結局は損失が大きくなってしまうのです。
身につける機会のない高価なブランド品はなかなか捨てられませんが、そのぶん空間コストを何年にもわたって失っていることになります。たった今「あと60分待ち」と言われたのに「もう20分も並んだのだし」とそのまま行列に並べば、合計80分の時間的コストを失います。それでもやはり、人は自分が今まで払ったコストを棒に振ることができない傾向があります。
サンクコスト効果がコンコルド効果ともいわれる理由
サンクコスト効果は、コンコルド効果とも呼ばれています。イギリスとフランスが共同で開発を進めた旅客機「コンコルド」にちなんで名づけられたものです。1962年に開発がはじめられたコンコルドは、常識を超える高性能が画期的で、開発当初は世界各国から注文が集まりました。
しかし、開発が始まると、さまざまな問題が露呈してきました。コンコルドは燃費が非常に悪く、通常よりも長い滑走路を別に用意する必要があり、他の旅客機に影響を与えないよう航路を別に用意しなければならないことが分かったのです。そして、価格は膨れ上がりました。
これらのことが判明してからコンコルドはキャンセルが続き、ついには開発予算の回収すら不可能な状態まで追い込まれました。つまり、大赤字です。しかしプロジェクトは進み、しまいには数兆円の赤字を抱えた旅客機が誕生してしまったのです。
コンコルドの開発が進んでしまった背景には、「ここで開発をやめたら、今までの労力がすべて無になる」というプロジェクトチームの意識が働いたといいます。やめなければ、今までのコストよりもはるかに膨大な時間的、費用的コストを払うことになるのに、チームは退くことができませんでした。
損切りできない経営者にはご用心!
経営者がサンクコスト効果に陥りやすい性格をしていると、会社がだんだん傾いてくる恐れがあります。「この事業には今までこれだけの投資をしてきたのだから、多少不振でも続けよう」などという口癖のある経営者には注意が必要です。投資を続ける理由が「そのうち上向きになる根拠があるから」ならいいのですが、「もったいないから」では、完全に過去のコストに引きずられています。
事業を進めるにあたっては、埋没費用には思い切って目をつむり、これからの利益を考えなければなりません。なかなか損切りできない経営者についていくと、破滅は目に見えています。社長の言動に目を配りつつ、自分も今までの苦労を無にするのは「もったいない」という意識に縛りつけられていないか、常に思考を巡らせましょう。
第三者の冷静な意見に耳を傾けよう
自分がサンクコストに惑わされていないか確かめるには、第三者に意見を求めるのが最も有効です。実際に時間的、費用的コストを払っていない人のほうが、状況について冷静に判断できるからです。このとき、どんな厳しい意見を言われたとしても、「これまでの努力を知らないくせに」などとムッとしてはいけません。そう思うこと自体が、サンクコスト思考に陥ってしまっていることの証拠になってしまいますよ。
参考:『手にとるように社会心理学がわかる本』内藤誼人、かんき出版