休日に何もする気が起きなくて、ノロノロと夕方にベッドから起き出し、ボーっとネットを見て過ごしてしまった。仕事以外、誰とも話していなくて寂しい。そんな人に試してほしい心理学のメソッドをお教えしましょう。

- 危険な孤独
- 回避行動が悪循環に
- 負担の少ない行動から実行
- 悪い習慣を置きかえる
- ドタキャン防止のために
危険な孤独
孤独が悪影響を及ぼすことは広く知られています。孤独を感じる人は一般的な人に比べて死亡率が1.3~2.8倍も上がりますし、アルツハイマー病になるリスクは2倍以上とも言われています。
政府も孤独対策には力を入れ始めており、16歳以上の2万人を対象とした「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査」も実施しています。その調査によれば、「外出をしない」人は、孤独感が「しばしばある・常にある」が16.0%、「ときどきある」が23.6%、「たまにある」が13.1%で合計52.7%となっています。一方、全体の統計は「しばしばある・常にある」が4.9%、「ときどきある」が15.8%、「たまにある」が19.6%の合計40.3%。比べると合計で12.4ポイントも違うのです。
また失業中だったり、同居人がいなかったり、未婚の人は孤独を感じる傾向が高いこともわかりました。
回避行動が悪循環に
問題は孤独だと感じていても、なかなか孤独の解消に動きたいと思わないことでしょう。新しい友達をつくったり、マッチングアプリで恋人を探したり、出会いのある飲み会に参加したりといったことが、とにかく面倒に感じてしまうケースも少なくないからです。もちろん平日は忙しく働いて、会社と自宅を往復する日々で休日は何もする気が起きないというのもわかります。
ただ、あまり孤独に浸っていると、ますます行動を起こしにくくなる可能性があることを知っておきましょう。ノースウェスタン大学のベンジー・カベラゼ博士は、回避行動が加速するとどんどん人とのかかわりから遠ざかってしまう可能性があると指摘しています。
もう少し具体的に考えてみましょう。
最初に友達との飲み会をドタキャンしたのは、友人のM美からのマウンティングをされた後のことでした。「もう大人なんだから、いい靴ぐらい履いた方がいいよ」という一言で、一気に飲み会がイヤになってしまったのです。もしかしたら何気ない一言だったのかもしれませんが、どこか下に見られていたという思いが確信に変わった瞬間でした。そんな不快な思いはもうしたくない、でも断るのも……という葛藤がドタキャンに繋がってしまったのです。
それ以降、M美の居ない、さまざまなお誘いも面倒に感じるようになっていきました。もう人付き合いの煩わしさを感じたくないため、あまり友人とも連絡を取らず、休日でも自宅でゴロゴロするようになってしまいました。
イヤな思いから回避行動を取ると、その瞬間は不快感から逃れられた喜びを感じますが、繰り返すうちに不快感に対する「恐怖」が強化され、関連の行動を避けるようになってしまうことがあるのです。そうなると、どんどん人付き合いから遠ざかってしまいます。仕事での人間関係であれば、そこまで面倒もないのですが、プライベートはひたすら孤独。そんな人も少なくありません。
こうした行動が強化されていくと、友達との楽しかった記憶や、新しい友達ができたりしたときのワクワク感、友人から感謝されたときの嬉しさといった記憶が薄らいでしまう可能性があることを、先述のベンジー・カベラゼ博士は指摘しています。
負担の少ない行動から実行
そこで最初に、自分にとって最も必要な人間関係がどのようなものかを考えてみましょう。恋人が必要だと感じる人もいれば、一緒に趣味を楽しんでくれる人が欲しい人もいるでしょう。あるいは1ヵ月に1回ぐらい、気軽に会える飲み友達がほしいといったこともあるかもしれません。
重要なことは、自分の気持ちにウソをつかない事。そして会えば、自分のテンションが上がるだろうと思える交遊関係を考えてみることです。例えばSNSには向くけれど、リアルではどこか自分のテンションを下げてしまうような人との付き合いは、ピックアップする必要はありません。
次に、テンションが上がるような交遊関係を得られる方法をできるだけ考えます。例えば恋人がほしいなら、マッチングアプリの登録や交友関係の広い友達への声掛けといったことが必要かもしれません。趣味の仲間を得たいなら、同じ趣味の仲間がどんな活動をしているのかをWebで検索したり、OFF会などが開催されていないのかを調べる必要があるでしょう。
次に、ピックアップした方法を、自分への負荷の少ない順から実行していきます。このとき実行するための準備が必要になってくることもあります。例えば美容院に行ったり、最新の趣味の情報を仕入れたりといったことも出てくるでしょう。こうしたことも思いつくそばからメモって、簡単なものから実行していきましょう。
そうした動きの中でスムーズにできなくなっていることを発見するかもしれません。プライベートのラインのリズムがイマイチだったり、美容院での会話がぎこちなかったり。「あれ? こんな感じだっけ?」と思ったら、引きこもっていた自分のリハビリだと思うようにしましょう。
悪い習慣を置きかえる

もう一つ重要なことは、人に会わない、自宅に引きこもるといった状態を強化するような行動を、別の行動に置き換えることです。例えば週末の夜になると、ダラダラとYouTubeを見てしまい、寝不足から朝寝坊、休日の活動時間が取れないといった状態であれば、夜中のYouTubeを映画に変えてみましょう。2時間程度で終わるので、YouTubeより区切りがつけやすいかもしれません。さらに行動を置き換えたときの気持ちを、5段階などで評価して記録しておくといいでしょう。YouTube見終わったときは、「あー、また夜更かしした……」と最悪の気分の「1」だったのに、映画を見終わってモニターの電源を落としたときには「少し健康的になれた」と「3」と評価できるかもしれません。自分の気分を記録しておくことで、外に向けて意識を開いていく過程を認識できる可能性があります。場合によっては、よりよい行動を習慣にしたくなることもあるでしょう。自分が気分よく過ごせるために、どんな行動をすればいいのかを知るためにも、ぜひ記録してみてください。
ドタキャン防止のために
いろいろな準備を重ねて、いざ友人作りに出かけようとしたときに、ドタキャンしたくなったりすることもあるでしょう。そのときのために、自分に語りかける文章を用意し、リマインダ―などで出発前に届くようにしておくことも有効でしょう。
「〇〇(自分の名前)、行きたくなくなる気持ちもわかるよ。面倒なことを経験したことも多かったしね。でも一人はやっぱり寂しいし、思い出してみたら友達と楽しい時間もけっこう過ごしてきたよね。
そもそも面倒だと思っても、会ってしまえば楽しめることも知っているよね。ちょっと後ろ向きになってしまうことは恥じる必要なないよ。久しぶりなだけだから。さあ、支度をしよう!」
まるで親友が自分の背中を押してくれるような文章をつくり、ドタキャンしたくなったときに読みましょう。そのときに、自分を説得するように感情を入れて声に出して読むと、より効果がアップします。
それでも乗り気がしないなら、どうして乗り気じゃないのかを考えてみるのもいいでしょう。そして自分の妄想している最悪の未来(例えば、みんなからマウントされるとか!)が起きないことを再確認しましょう。
「趣味の仲間に変なマウンティングされたことないよな」とか、「今日、会う人たちは気遣いのできる人だよな」といった具体です。
今日は寂しいのに面倒で人付き合いから遠ざかり始めている人の対処法を紹介しました。「孤独」をこじらせると、より抜け出すのが大変になります。ちょっと面倒だという日々が続いていたなら、早めに試してみましょう。
心のしくみについて興味のある方は、こちらもご覧ください。
監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会
参考:「Confronting Loneliness With Tools From Psychological Science」(Benji Kaveladze/Psychology Today)/「Behavioral Activation and How to Use It」(Evan Starkman/WebMD)/「8 Tips for Using Behavioral Activation to Treat Depression」(Matthew Tull/verywellmind)