「孤独」は避けるべきものだと思っていませんか？　しかし人生に必要な孤独もあるようです。ドラマ『孤独のグルメ』にある自由を満喫するような孤独は重要なものなのです。孤独の効果と楽しみ方をまとめてみました。

• 死亡リスクを高める孤独
• 人生を豊かにする孤独って？
• 孤独を積極的に受け入れる条件

死亡リスクを高める孤独

先進国の孤独は世界的な問題となっています。日本でも2021年に孤独･孤立対策担当大臣が誕生しました。孤独への対策を国として考えなければならないほど、問題が深刻化しているともいえるでしょう。

実際、シカゴ大学の心理学者ジョン・カシオポ博士の調査によれば、孤独の死亡リスクは肥満の2倍だそうです。メタボリックシンドロームといった肥満は生活習慣病の大きな原因と言われていますが、その2倍も死亡リスクが高まるというのは恐ろしいことです。

『孤独の達人　自己を深める心理学』（諸富祥彦／PHP研究所）によれば、日本では配偶者と別れた男性に孤独のダメージが高いことが知られており、糖尿病や肝臓の病気などが結婚を継続している人より、はるかに高くなっているそうです。

こうした情報を耳にすると、とにかく「孤独」を避けたいと感じるものですが、じつは大きな問題となるのは、「非選択的な孤独」と言われているもの。自分で選んだわけではなく、否応なく社会的に孤立してしまった孤独です。

人生を豊かにする孤独って？

一方、孤独を楽しんでみようとするのが「選択的孤独」です。

さまざまなしがらみから抜け出して、一人の時間を楽しむ。そんな孤独です。大人気ドラマ『孤独のグルメ』などは、その典型でしょう。自分一人でめいっぱい楽しむために、好きな料理を好きなだけ頼み堪能する。これが上司や部下と一緒だと、こんな自由には振る舞えないものです。

さらに意図的に孤独に浸ろうとするのが「実存的な深い孤独」です。己の内面を見つめて、本当の自分を取り戻そうとする孤独です。こうした孤独は人間としての成長を生み、少数のごく親密な人の深い関係を回復すると言われています。

ミドルベリー大学のヴァージニア・トーマス助教授は、自分にとって必要な孤独と有害な孤独の違いを、「自分自身とつながっているのかどうか」だと解説しています。こうした孤独はセルフケアと自己発見につながり、高いレベルの幸福につながるとも指摘しています。

しかし価値ある孤独を、遠ざけてしまう人もいるでしょう。孤独に対するマイナスのイメージが強い人は、孤独にも価値があることを認める必要があるかもしれません。

またせっかくの孤独な時間を、ただ浪費するのではなく、自分の心としっかりつながれる活動に費やすことも大切でしょう。ほっとできる活動、一人でも楽しいと思える行動、自分のことを振り返る時間になる方法を考えてみましょう。

そしてヴァージニア・トーマス助教授は、孤独から抜け出すサインを見落とさないように忠告しています。自分と向き合う時間が十分だと感じたら、家族や友人に積極的に声をかけましょう。

孤独を積極的に受け入れる条件

孤独をより積極的に取り入れた生き方を選択することで、現代人は真に豊かな生活ができると指摘しているのは、諸富祥彦・明治大学教授です。ただ、そのためには、必要な条件がいくつかあるようです。『孤独の達人　自己を深める心理学』（（PHP研究所））には、12の条件が書かれていますが、そこからいくつかを紹介しましょう。

「他人からの承認を求めないこと」

社会的な評価からSNSの「いいね」まで、多く人は他人からの承認を求めて活動しています。そうした価値観から距離を置き、自分を価値ある存在として認めてくれる人と一緒に過ごすことが重要だそうです。

自分が決めた価値観で進むことを、孤独は後押ししてくれるようです。

もちろん完璧に他人の目を気にしないようにはできないでしょう。しかし孤独を楽しめるぐらいに、他人の目を気にしないようすれば、より生きやすくなるかもしれません。

「今ここを生きよ」

過去に捕らわれ、未来への空想に生きるのではなく、目の前のことに集中することが大切だと、諸富教授は指摘します。マインドフルネスなどを実践したりするのも効果的でしょう。

今を生きるポイントは、「今ここに集中しなければならない」と思い詰めないことだそうです。そうした思いは、逆に未来や過去への執着につながります。むしろ「今は未来を夢想しているな」「今は過去を悔いているな」といった心の動きをみつめることで、過去や未来に執着することがなくなるそうです。

孤独を楽しみ、孤独を極めすぎると仙人のような生活になってしまうかもしれません。しかし孤独を受け入れ、自分とつながり、自分の価値観で今を生きることに意識を向けると、これまでとは違った世界が見えるかもしれません。

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監修：一般社団法人 日本産業カウンセラー協会

参考：『孤独の達人　自己を深める心理学』（諸富祥彦／PHP研究所）／「8 Ways to Embrace Solitude」（Virginia Thomas Ph.D.／Psychology Today）