「あの夫婦、なんだかどんどん似てくるみたい……」と思ったことはありませんか。それ、気のせいではありません。心理学的にも、遺伝子レベルでも、夫婦が似てくる理由を説明できます。理由を知ったら、誰かに話したくなりますよ。
- 夫婦の顔や性格が似てくるのは当たり前?
- 心理学的には、親しい仲だと「ミラーリング」が働くから
- 遺伝子学的には、胎児を介して父親のDNAが母体内に紛れ込むから!?
- 毎年、家族写真を撮ると、面白い発見があるかも!?
夫婦の顔や性格が似てくるのは当たり前?
夫婦が似てくるのは、同じような生活を送っているからでしょうか。確かに、起きる時間も寝る時間も同じ、食べる物も同じ、居住空間も同じ……であれば、だんだん似てくるような気もします。
でも、それなら共同生活をしている人たちはみんな似てきても不思議はありません。寮で生活していたらみんな顔が似てきたという話は聞きませんし、相撲部屋はほぼ共同生活ですが、関取が部屋別に似た雰囲気の顔をしているかというと、そうとはいえないですよね。
夫婦の顔や性格が似てくるのは、夫婦ならではの事情があります。心理学的見解と、遺伝子レベルでの見解を解説しましょう。
心理学的には、親しい仲だと「ミラーリング」が働くから
心理学的には、「ミラーリング」という言葉で説明できます。
「ミラーリング」とは、相手のしぐさや行動、言った言葉を真似ることです。相手がペンを取ったら自分もペンをとる、相手がパソコンを開いたら自分も開くなど、主にビジネスシーンで親近感を演出するために使われる技術として、広く知られています。
このミラーリングは、好きな相手や親しい人と接していると、無意識にとってしまう行動です。ミラーリング夫婦が長年一緒に生活を続けていたら、しぐさや行動が似てくるのは当然といえるでしょう。顔の表情なども真似ている可能性があるので、顔が似てくる現象も説明できます。
好きな相手や親しい人と接していると、なぜ動作をマネてしまうのでしょうか。それは、相手と同じ行動をとって安心したいという心理が働くからだといわれています。「同調効果」とも呼ばれる現象です。街を歩いていると、ファッションや髪形の傾向が同じ2人連れが歩いているのをよく見かけるでしょう。同性の場合はとくにわかりやすいですね。夫婦でなくても、友人を長く続けていると、やはり起こりやすくなるのです。
遺伝子学的には、胎児を介して父親のDNAが母体内に紛れ込むから!?
出産を経験した妻は、より夫に似てくるという説があります。そのカギとなるのは、赤ちゃんです。
胎児と母親は胎盤でつながっていて、胎児は胎盤から酸素や栄養を受け取ります。そしてただ受け取るだけでなく、胎児の側からも胎盤を介して母体内にDNAを送っているのです。これによって母親の血液に胎児のDNAが混入するため、採血によって胎児の遺伝子を調べることができるようになっています。
胎児のDNAが母体血中に漂っているということは、父親のDNAの一部が母体に紛れ込むということ。胎児のDNAは、母親由来が半分、父親由来が半分だからです。ここに着目し、「話は、夫婦の顔が似てくるっていう話につながるんだけど」と著書『胎児のはなし』で明らかにしているのが、産婦人科医の増崎英明氏です。
胎児のDNAが母体中でどんな影響を及ぼすのかについては、まだまだわかっていません。でも、妻の体内に夫由来のDNAが混ざるというなら、顔が似てくる可能性が全くないとは言えないかもしれませんね。この場合、妻の顔が夫に近づいてくることになります。なんともびっくりしてしまう話です。
毎年、家族写真を撮ると、面白い発見があるかも!?
心理学的にも、遺伝子的にも、夫婦が似てくる理由を見つけることができます。研究がもっと進めば、「似たもの夫婦」という言葉は「何を、当たり前のこと言ってるの?」と一蹴されてしまうかもしれませんね。
「本当かな」と思ったあなたも、「面白いな」と思った人も、これから毎年、同じような構図で家族写真を撮影してみてはいかがでしょうか。何年かたって、夫婦の顔に注目して見比べてみると、「やっぱりだんだん似てきてるね!」なんていう発見があるかもしれません。
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監修:日本産業カウンセラー協会
参考:『胎児のはなし』増崎英明、ミシマ社/『心理学がイッキにわかる本』渋谷昌三、西東社