孤独の危険性が叫ばれる中、男女差による状況の違いも指摘されるようになりました。そこで男性の孤独の危険性とその対処方法について、まとめてみました。
- 男性の孤独死が多い
- 家事分担が孤独の一つの原因?
- 観察するのが苦手?
男性の孤独死が多い
近年、「孤独・孤立」が社会問題の一つとして、非常に注目を集めています。米国のブリガムヤング大学の調査によれば、1人で過ごすことが多い人や孤独を感じている人は、寿命が縮む可能性が30%も高くなるそうです。
さまざまな調査結果を受け、日本でも「孤独・孤立」対策に向けた動きが加速しています。2021年に厚生労働省が実施した「人々のつながりに関する基礎調査」なども、そうした流れの一環でしょう。
この調査によれば、孤独感についての男女差はあまりないように見えます。
【男性】
しばしばある・常にある 4.9%
時々ある 14.0%
たまにある 15.9%
合計 34.8%
【女性】
しばしばある・常にある 4.1%
時々ある 14.9%
たまにある 18.8%
合計 37.8%
しかし内容をもう少し深く見てみると、男女差がハッキリしてきます。
「愚痴を聞いてくれる人の有無」だと、男性は全年齢で女性の2倍以上が「いない」と答えています。さらに2020年の国勢調査でも、50歳時点の未婚率は男性が25.7%で、女性が16.4%となっています。もちろん家族が居れば孤独にならないというわけではありませんが、男性の方がやや家族と縁遠いことがわかります。
また東京都の孤独死の調査では、女性と比較すると年齢によっては男性の方が6倍近く孤独死が多いのです。
こうした数字を見ると、やや深刻さが伝わるのではないでしょうか?
家事分担が孤独の一つの原因?
セラピストであり作家でもあるロバート・タイビ氏は、男性がパートナーとの関係性に消極的な傾向があると指摘しています。その理由の一つが、伝統的な性差別的な役割に縛られていることだそうです。
家事や育児などは女性の役割と思っている男性は、男女ともフルタイムで働いているときは、特にパートナーの怒りをかう可能性が高まります。一方で家事や育児などを手伝ったときに、パートナーからの感謝や注目を得られなかったことへの不満が、家事・育児により消極的な態度を生み出し可能性もあるそうです。
パートナーから見ればたいして家事をしていないのに、もっと感謝してほしいといった態度に腹が立つのも当然かもしれません。一方で仕事に対しては、家事には見せない積極性を示すので、それを目にするパートナーの思いも複雑でしょう。
これは米国のセラピストの指摘ですが、日本でも長年連れ添った妻の夫に対する好感度の違いは、家事育児を男性が手伝ったかどうかが大きいという結果もあります。男性が孤独に陥りやすい原因の一つは、こんなところにもあるのかもしれません。
こうした家事分担に端を発するパートナーとの諍いは、片方だけが我慢しないことや、片方が相手を軽蔑したり支配したりしないような形での解決が必要になるので、両方が納得できるポイントを探す必要があるそうです。
観察するのが苦手?
ノースイースタン大学のマリアン・マスト氏によれば、女性は男性よりも相手を観察する傾向が強いそうです。
この実験では、男性2人、女性3人が座って話している場面が映像に映し出されます。そのビデオを見た後に、「右から4番目に座っている人は、茶色のズボンをはいていましたか?」といった質問を投げかけます。こうした質問に女性は細かく正確に答えられることがわかりました。一方、男性はあまり答えられなかったそうです。
よく彼女の髪型が変わっていても気づかないといったことが、鈍感な男性の例として語られますが、どうやら人を観察し記憶することが男性は女性よりは不得意なようです。
ただ、これが生物的な性差かどうかはハッキリしていません。男性も人間に興味を持ち、しっかりと相手を観察することを心がければ、相手の様子をもっと詳しく把握することができ、それが人付き合いにプラスになるといった指摘もあります。
確かに仕事や勝負事で、相手への観察がとても重要なときに、男性の観察が鈍いという話はあまり聞きません。もっと相手の観察が必要だという思いが、状況を変えていくのでしょう。
今日は深刻な孤独に陥りやすい男性の、人間関係における行動の特徴についてまとめてみました。
心のしくみについて興味のある方は、こちらもご覧ください。
監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会
参考:『世界最先端の研究が教える新事実 心理学BEST100』(内藤誼人/総合法令出版)/「人々のつながりに関する基礎調査」(厚生労働省)/「注目される家庭・地域社会における男性の孤独・孤立」(岡元真希子/日本総研)/「Why Are So Many Men So Passive in Their Relationships?」(Robert Taibbi L.C.S.W./Psychology Today)