職場で孤独を感じていませんか?自分だけが輪には入れていない疎外感や周りからサポートを得られない絶望感なども持っているなら、少しでも楽になる方法が必要でしょう。解決に導く方法を心理学的に考えてみました。
- あなただけではない職場の孤独感
- 孤独で業績も悪化する
- 孤独を解消するカギは「与える」
- 孤独を感じる3つのシチュエーション
あなただけではない職場の孤独感
まず、伝えたいのは、職場で孤独を感じているのが、あなただけではないことです。
やや古い資料になりますが、2011年の産業能率大学の調査によれば、職場で孤独を感じる人は「よくある」「ときどきある」「まれにある」まで含めると6割を超えているのです。
しかもNHKの調査によれば、「仕事に直接関係する範囲でのつきあい(形式的なつきあい)」を支持する人の割合は、1988年が15.1%だったのに、 2018年には 27.1%に増加。逆に「何かにつけ相談したり助け合えるようなつきあい(全面的な付き合い)」を支持する人の割合は、1988年が 44.6%と半数に近かったのに、 2018年には 37.2%まで減っているのです。
煩わしい人間関係を逃れたい人が増える中で、職場で孤独を感じる人は2011年の調査時よりさらに増えているかもしれません。
そのうえ新型コロナウイルスの影響で、会社によってはかなりの頻度でテレワークが実施されています。ちょっと声をかけようと思っても、チャットでは気おくれしてしまうといったことあるかもしれません。
孤独で業績も悪化する
じつは職場での孤独は、業績にも影響します。
浅井浩一氏は著書『1万人のリーダーが悩んでいること』で、ある企業のメンタルヘルス調査の結果を元に次のように書いています。
営業拠点Aでは、お互いに相談できない雰囲気がまん延していたために、誰もが「孤独」に仕事をし、行き詰った仕事も自分ひとりで抱え込んで解決しようとしていたがために、効率が落ちて残業が増えてしまいました。全員が「不要な多忙さ」に追われていたのです。
一方、助け合って解決する風土ができていた営業拠点Bは、全員がイキイキと働けているうえに、好調な業績を維持できています。
つまりかなりの人が職場での孤独を感じており、その解消は業績の改善にもつながるのです。ついつい「声をかけるのが悪いのでは……」と考えがちですが、そうした行動がプラスに働く可能性が高いことを、まず認識しておきましょう。
孤独を解消するカギは「与える」
さて、では孤独の解消は、どうしたらいいのでしょうか?
心理学者の水島広子氏は、著者『「孤独力」で“ひとりがつらいが楽になる”』で次のように書いています。
孤独は、ありのままの自分が「つながっている感覚」を持たない限り解消されません。
そして「心を開き、つながりを得るためのコツ」を、次のようにシンプルにまとめています。
「自分がここから何を得られるか」に目を向けるのではなく、「自分が何を与えることができるのか」に目を向けることです。
孤独だから何かを求めれば、その願望は膨らんでいきます。一人でいるのがつらいからとお酒を飲み続ければアルコールへの依存が高まり、飲んでいないときはもっと寂しくなってしまいます。
このような心理となるのは、孤独から何かを得ようとしたときに「満たされない自分」を意識してしまうからです。
孤独を感じる3つのシチュエーション
職場での孤独の解消法も、自分が何を与えられるのかを考えるところから始めてみましょう。シチュエーション別に解説していきます。
①プレイングマネージャーの場合
もしあなたがプレイングマネージャーといった存在なら、『1万人のリーダーが悩んでいること』のアドバイスが役立つでしょう。
あなた自身が積極的にメンバーに「困ったこと」を開示し相談し、「ああ、自分たちも困ったことを相談していいんだ」と思わせる必要があります。
部下からのアクションを待つのではなく、自ら働きかけて、部下によい影響を与えるところから組織を改革していけばいいのです。
②自分の意見が通らず孤立した場合
チームで仕事をするときは、自分の意見が反映されないことも少なくありません。ただ、そこで人間関係までぎくしゃくしてしまうと、孤立してしまう結果に……。
こうした状態は、そもそも仲間から「賛同」を「得ようとした」結果です。つまり孤独の解消とはベクトルが逆。やるべきことは仲間に何かを与えることですので、自分の意見へのこだわりを捨てて協力すればいいのです。
自分の考えとはことなる方針でも、チームの一員として、できるだけうまくいくようにサポートする。すると、ひとり孤独を感じていたときは異なり、自分自身も閉じていた心が開くでしょう。(『「孤独力」で“ひとりがつらいが楽になる”』)
自分の意見にこだわらず行動する姿は、仲間からの信頼を勝ち得る礎となりますし、将来的にプラスに働く可能性が高いでしょう。少なくとも意見が通らないからと孤立するより、はるかに大きな「財産」を手にするはずです。
③コミュニケーションが苦手な場合
コミュニケーションが苦手な人が、「誰か理解してくれないかな」と周りの人から「理解」を得ようとすれば、孤独感は深まるばかりです。ここで与えるのは、「自分についての理解」です。敵対する気はもちろん、一緒に居るのが嫌なわけでもない、ただコミュニケーションが苦手だと伝えることが重要です。
水島広子氏は、次のように書いています。
言葉によるコミュニケーションが苦手なのであれば、例えば笑顔で会釈する、というだけでも、相手から見たときに「自分のことを嫌いなわけではないのだ」「本当はみんなと仲よくやっていきたいのかもしれない」という部分は伝わります。
さて、ここで問題になるのがテレワークです。
会社によっては雑談できる場などを用意していますが、そこに参加するには自らの発信が必要で、コミュニ―ションが苦手な人にはハードルが高いかもしれません。
そうした解決法のヒントになるのが、「与える」がわかりにくければ感謝の気持ちでも同じ意味だという、水島広子氏の言葉です。
何か親切にされたとき、教えてもらったときなどに、「ありがとう」だけではなく、「いつも的確なアドバイスで本当に助かっています」など、感謝の気持ちがしっかり伝わるように一言添えてみませんか。
そのきっかけさえないと感じるなら、仕事の方法やちょっとした疑問について軽く質問して、それに感謝の意を示すのもいいでしょう。
最初に書いた、みんなが孤独を感じていて、その解消は業績アップにもつながるという事実を思い出してください。ほんの少しの勇気が、さまざまな環境を変えていく可能性を持っています。
心理学に興味のある方や学んでみたい方はこちらをご覧ください。
監修:日本産業カウンセラー協会
参考:『「孤独力」で“ひとりがつらいが楽になる”』(水島広子 著/さくら舎)
/『1万人のリーダーが悩んでいること』(浅井浩一 著/ダイヤモンド社)
/第2回 ビジネスパーソンのコミュニケーション感覚調査