恋人の心をもっとしっかりと捕まえたい。仕事関係の人との関係性を強めたい。そんなときプレゼントや会食に力を入れる人も多いでしょう。しかしそんなお金を使わなくても、関係性を強める方法を心理学者が教えてくれました!
- 初対面の人にも有効
- 夫婦関係にもプラスに
- まだまだある好奇心が人間関係にプラスに働くワケ
- 2つの好奇心と人間関係
- 自らの好奇心を高める方法って?
初対面の人にも有効
人間関係を強化したいと思うとき、多くの人は会食やプレゼントに頼ります。もちろん、こうした行動は心理学的にもプラスになることがわかっています。会う回数が多ければ好意を抱きやすいといった心理は「ザイオンス効果」と呼ばれていますし、食事を一緒にすると親近感が湧きやすくなるのは「ランチョン・テクニック」と呼ばれます。
しかし人間関係を強化するポイントとして、意外に語られていないのが好奇心です。
好奇心を持つことは、お互いをよく知らない関係でも効果的に働きます。
カリフォルニア大学バークレー校のエミリーJ.キャンベル博士によれば、知らない人同士をペアにして互いに相手のことを質問し合うという実験があり、そのとき相手に好奇心を示した人は、相手から温かくて魅力的な人だと評価されたと書いています。そして、そうした感情は見知らぬ人との会話に不安を感じるタイプの人でも起きたというのです。
これは逆のパターンを考えればわかるでしょう。せっかく会ったのに生返事ばかりして、自分に興味を示さない人を魅力的だと感じるわけもありません。つまり人は自分に興味を持ってくれる人を、魅力的だと判断する傾向にあるのです。
ただ、この実験で重要なことは、自分自身に本心から興味を示した人を、好意的に判断したことでしょう。例えば担当者には興味はないけれど、彼が裁量権を持っている仕事に興味がある場合や、相手に興味があるような仕草だけを示した場合は、人間関係が強化されるのか微妙なところでしょう。
夫婦関係にもプラスに
さらに好奇心の有無は、夫婦関係にも強い影響を与えることがわかっています。イスラエルにあるアリエル大学のマーヤン・ボイマン=メシタとハダッサ・リットマン=オヴァディアの研究によれば、好奇心が強い人のパートナーほど結婚生活の満足度が高いことがわかっています。
その要因として指摘されているのが、好奇心旺盛な人が持ちやすい柔軟な思考です。面白いと思ったら飛びついてみるタイプの人は、いつも決まった生活パターンを崩さないような人より、柔軟な発想を持っている可能性が高いことはわかるでしょう。そうした頭の柔らかさが、夫婦間の問題解決にも役立っており、それが良好な夫婦関係に繋がっているのだと指摘しています。
よく知らない人同士が関係性を深める場合だけではなく、長期的な人間関係強化にも好奇心は有効に働くのです。
まだまだある好奇心が人間関係にプラスに働くワケ
上記以外にも好奇心の強さが人間関係にプラスに働く理由があります。
まず好奇心の強い人は、幸福である確率が上がります。好奇心は肯定的な感情や人生に対する満足度などが高いという研究結果もあります。幸福そうな人と不幸そうな人がいたら、多くの人が幸福そうな人と仲良くなりたいと思うでしょう。つまり好奇心旺盛な人は、その幸せそうな姿で人を惹きつけることができる可能性があるのです。
また好奇心の強い人は、勉強や仕事のパフォーマンスが少しずつ向上していく傾向があるといった研究結果も報告されています。何が良くて何が悪かったのかを考え、よりよい方法を求めて行動していく人が少なくないからです。
さらに好奇心は他人への共感を促進するといったことも知られています。「それで、どうしたの?」「それから、どうなったの?」といった質問をして、「そうなんだ! すごいよね」といった会話が行われれば、自分の気持ちに共感してくれたと多くの人が感じるでしょう。また、共感は他人との人間関係を強めるポイントの一つなので、この点でも対人関係にプラスに働くことは明らかでしょう。
また好奇心の強い人は逆境に強いとも言われています。新しさを探求したいという欲求が、変化への対応力を強化するからだそうです。つまり好奇心の強い人は、人としての強さを持っている可能性があるのです。これもまた人間関係にプラスに働く可能性があります。
さらにペンシルベニア大学のジェームズ・パウェルスキー博士は、新規性への欲求は人間関係の満足度の向上に関係していると指摘しています。たしかに恋人同士などでは、マンネリ感がマイナスに働くことがあります。いつ会っても同じような会話で、同じような行動しかしない人よりは、新しい自分を見せてくれる人に惹かれるものでしょう。
2つの好奇心と人間関係
オーストラリア国立大学の心理学者ウィリアム・ホワイトクロス博士によれば、何かを知りたいという好奇心は、わからないことを避けたり、恐れたり、批判したりしたくなる衝動を打ち消すと報告しています。
一方で、情報不足を補いたいという好奇心は、知らないことで生じる否定的な感情を和らげたいと感じる好奇心です。
どちらの好奇心も状況によってはプラスに働きますが、対人関係強化においては、何かを知りたいという好奇心の方がより効果的でしょう。
まず何かを知りたいという好奇心は、先にも示した通り関係性が浅い人間関係を深める可能性があります。どんな人なんだろうという思いが、相手の感情にもプラスの影響を与えるからです。
また、すでに人間関係が構築されている場合でも、先の見えない状況になったときに、つらい体験から楽しいチャレンジへと変える可能性があります。例えば仕事でトラブルに見舞われたときや、想定外の問題が家族に降りかかったとき、前向きに対処しようと現実に向き合う人を批判する人はいないでしょう。
つまり人間関係に強弱に関係なく、何かを知りたいという好奇心が関係性を深める可能性があるのです。
自らの好奇心を高める方法って?
さて、ここまでは、好奇心がいかに人間関係にプラスに働くのかを書いてきましたが、好奇心を持てない場合はどうすればいいのでしょうか?
ペンシルベニア大学のジェームス・パウェルスキー博士は、相手への思い込みを捨てて質問してみることを勧めています。例えば「学校の先生だから、こんな生活だろう」と思い込まないで、「休日はどんなふうに過ごしているんですか?」といったようにたずねてみるのです。意外な一面が、そうした質問から明らかになるかもしれません。
また、人間関係を深めたい人と、一緒に新しいことに挑戦してみましょう。食事に行く店を変えるだけでもいいし、思い切ってキャンプなど、まったく新しい時間を共有してみるのもいいでしょう。恋人同士なら、何をするのかブレインストーミングして、新しい楽しみを探してみるのもお勧めです。
自分の好奇心を強めたいと思う場合は、まず「快適なゾーン」から抜け出しみましょう。わかりきっているから安心だといった生活のあり方を変えてみるのです。さらに新しいスキルを学ぶといったことも、好奇心を刺激する要因となります。
わからないという気持ちを受け入れ、それを楽しむといった態度も、何かを知りたいという好奇心を育む可能性があります。わからないことに不安を感じるのは、当たり前の感情です。その一方で、その不確実な状況を楽しむといったことも人はできるのです。不確実な状況になったら、意図的にそれを楽しんでみましょう。
今回は好奇心と人間関係の強化についてまとめました。
言われてみれば納得なのですが、人間関係を強化するのに好奇心が重要だと考えないことも多いでしょう。さまざまな人間関係を強化するために、好奇心を刺激する行動を起こしてみませんか?
心のしくみについて興味のある方は、こちらもご覧ください。
監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会
参考:「Curious About How to Build a Stronger Relationship?」(Suzie Pileggi Pawelski James Pawelski/Psychology Today)/「Six Surprising Benefits of Curiosity」(EMILY CAMPBELL/The Greater Good Science Center)/「The Importance Of Being Curious」(Dalia Molokhia/Harvard Business Publishing)/「知りたいという「好奇心」は不安解消に繋がる、研究結果」(マーク・トラバース/Forbes Japan)