子どもにベストな先生の選び方

塾などで子ども学力を伸ばしたいとき、どんな先生が最適だと思いますか? 学歴? コミュニケーション能力? 教え方?親の評価と子どもの評価が違う場合もあるでしょう。そこで心理学的な視点での子どもの教師の選び方をまとめました。

  • 良い教師を選ぶ能力は重要
  • たずねる相手を選んでいる
  • 記憶や学習意欲にも差が
  • 必要なのは子どもに期待する教師

良い教師を選ぶ能力は重要

子どもの教育における教師の重要性について、まず進化心理学的な説を紹介しておきましょう。
か弱い存在である子どもは、騙されていいように利用される危険を避ける必要があります。その基本となるのは、助言者を慎重に選ぶことだと言われています。

例えば雨に濡れて風邪をひきたくないなら、天気予報のうまい人に助言を求めるでしょう。文明が栄えていない時代、体力のない子どもは、小さな選択のミスから命を落とすことも少なくありませんでした。しかも子どもには状況を観察し、的確な判断を下すための能力や経験が備わってはいないのです。結果、誰に助言を求めればいいのか、選択の能力を進化させてきたというのです。

こうした歴史から子どもは、学ぶべき相手を慎重に選ぶようになったと言われています。その「慎重さ」については、心理実験が証明しています。

たずねる相手を選んでいる

保育園児を対象にした心理実験では、

「『賢い』人間に質問した回数が、能力不足に見えた人物に質問した回数の三倍はあった」(『信頼はなぜ裏切られるのか』デイヴィッド・デステノ/白揚社)

といった報告があります。
また愛着スタイルの調査と結びつけたとき、子どもからの信頼が薄い母親の場合、子どもが質問相手に選ぶのが母親より馴染みのない保育士の方が多かったという結果もあります。馴染みのない保育士であっても、答える能力があるなら、そちらを選択するというわけです。

さらに信頼できない人より、信頼できる人から聞いた方が、同じ情報でもよく覚えていることも明らかになっています。

記憶や学習意欲にも差が

では、子どもはどんな基準で教師を選んでいるのでしょうか?
子どもが最初に選択するのは、よく知っている人で、なおかつ間違いのない情報を提示できる人です。子どもはよく知っている人への信頼が強い傾向にあるので、よく知っていて能力もあるなら、そうした人に助言を求めるのはあたりまえでしょう。

ただしよく知っている人の情報が間違っていそうだと感じた場合、子どもはあまり知らない人でも能力のある人に質問をします。

では、子どもが先生の能力を図る機会がない場合、何を基準に選択するのでしょうか? じつはこれも心理実験で明らかになっています。ポイントは、自分に近いかどうかです。例えば同じような方言を使っているだけでも、方言を使わない先生より子ども学習意欲が高まるそうです。

学習意欲や記憶に影響が出るとなると、子どもが気に入った先生が最も学習効果が高いということになりそうです。そして子どもが選んだ要因は、大人が気づかないような自分とのささいな類似点かもしれません。心理学的に見れば、そうしたポイントは大人が気にしがたちな学歴などより、子どもの学習にはプラスに働く可能性があります。

必要なのは子どもに期待する教師

子どもが気に入る先生が最高だという結論に少し疑問を持つ人に、大人が判断しやすい良い教師のポイントもお教えしましょう。

それは教師が子どもの成長に期待をかけているかどうかです。というのも心理学では期待された人は、期待されなかった人より能力を伸ばす「ピグマリオン効果」が知られているからです。

子どもの潜在能力を信じ、きちんと成長していくと信じられる教師は、子どももより成長できるのです。逆に子どもの成長を信じられない教師は、本来持っている子どもの伸びしろをつぶしてしまう可能性があるそうです。

今日は子どもの先生選びのポイントをまとめてみました。

人の心のしくみについて興味のある方は、こちらもご覧ください。

監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会

参考:『信頼はなぜ裏切られるのか』デイヴィッド・デステノ/白揚社

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