「オキシトシン」というホルモンを知っていますか? 「愛情ホルモン」と呼ばれ、人間関係に影響を与える神経伝達物質です。また、オキシトシンが分泌されると幸福感を高める効果もあるとも言われています。そんなオキシトシンの増やし方をまとめました。
- オキシトシンが分泌されるとどうなる?
- 心をこめてハグする
- 他人とのつながりを持つ
- ペットとたわむれる
- 音楽を聴く・歌う
- オキシトシンのマイナス面
オキシトシンが分泌されるとどうなる?
オキシトシンは妊娠・出産・授乳に関連するホルモンです。分娩を促進したり、母乳が出るようにするのも、この神経伝達物質のおかげです。また子どもとの結びつきにも大きな役割を果たすことが知れており、マウスの実験ではオキシトシンの出ないお母さんマウスは、子どもにエサを与えたり、育てたりすることが少なくなるそうです。
ストレスを抑制して不安を減少させたり、食べ過ぎを抑えるといった効果もあります。つまりオキシトシンが分泌されれば、肥満を防止することもできるのです。
面白いのは、オキシトシンが他人への信頼感をアップさせることでしょう。
神経経済学者のポール・ザックは、会ったことも話したこともない人を信じてお金を渡せるのかを実験することで、信頼感を測りました。結果、オキシトシンの濃度が高いほど、より多くのお金を渡すという結果が出たのです。
加えてオキシトシンを吸入すると、見ず知らずの他人に、主催者が実験参加者に配ったお金をすべて渡す人が2倍に増えました。
さらに別の実験では、オキシトシンの分泌量が多いと、共感力もアップすることがわかっています。
つまり母性的な行動の促進、ストレスの抑制、信頼感と共感力のアップという社会生活に好影響を与える行動や気持ちを生み出すのがオキシトシンなのです。
では、どうすればオキシトシンが分泌されるのか、説明していきましょう。
①心をこめてハグする
パートナーや子どもなどをハグすることで、オキシトシンが分泌されます。先にも紹介した神経経済学者のポール・ザックは、1日8回のハグを推奨しています。
ただしおざなりなハグではいけないとのこと。心を込めてハグをすることが、オキシトシン分泌には大切なのだそうです。
②他人とのつながりを持つ
友人や同僚とのちょっとした会話でも、オキシトシンが分泌されます。またSNSでの交流でもオキシトシンの増加が認められました。SNSを使った恋人とのやり取りでは、1.5倍のオキシトシンの分泌が確認されています。
つまり人間関係を構築する行動が、オキシトシンを分泌させるのです。ハグする文化があまりない日本人は、会話やSNSでのやり取りでオキシトシン分泌を狙うのがいいのかもしれません。
③ペットとたわむれる
ペットをなでたり抱っこしたりすると、オキシトシンが分泌されます。ただしペットとの関係が良好の場合のみオキシトシンが増加するそうです。好かれていないと感じるペットをなでても、「愛情ホルモン」は分泌されないのです。
ただペットに嫌われているからといってあきらめる必要はありません。アイコンタクトとスキンシップで、ゆっくりとペットとの愛情を確かめ合うと、わずか1ヵ月でオキシトシンが分泌されるようになったという実験結果があるからです。
ペットに好かれていないと感じている方は参考にしてみてください。
④音楽を聴く・歌う
心地よい音楽を聴くことも、オキシトシンの上昇につながります。ただ、もっとオキシトシンを分泌させたいなら、一緒に歌うのがいいようです。スポーツチームの応援などでも、応援歌を歌ったりすることがありますが、それはオキシトシンの分泌を促し、個々人の結びつきを強化する効果があったようです。
大人になると合唱をする機会など滅多にないので、カラオケでデュエットをするとオキシトシン・アップにつながるでしょう。
オキシトシンのマイナス面
ここまでオキシトシンのプラス面ばかり書いてきましたが、じつはマイナス面もあります。
よく指摘されるのが、自分と同じグループを最優先にするために他のグループを排斥したり、グループの利益を得るために嘘をつくといった行動です。具体的には、外国人排斥やグループ間の暴力沙汰といったことが起きる可能性があります。
グループ内の結びつきが強いからこそ他者の排除が起きるのであり、オキシトシンがグループの絆を強めた「副作用」とも言えるものです。
「愛情ホルモン」が分泌されれば、仲間とのより強い結び付きが生まれ、幸福感も高まります。マイナス面にも注意しながら、オキシトシンの分泌アップを目指したいですね。
人の心のしくみについて興味のある方は、こちらもご覧ください。
監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会
参考:『今日がもっと楽しくなる行動最適化大全』(樺沢紫苑/KADOKAWA )/「信頼と道徳性、そしてオキシトシン」(ポール・ザック/TEDGlobal 2011)/「How Music Brings People Together」(Shahram Heshmat Ph.D./Psychology Today)