ワル自慢・ヤンチャ自慢をする心理とその対処法とは?

「昔、オレは悪かった」といったヤンチャ自慢は、聞いているほとんどの人がゲンナリする話題です。ところが中高年男性の中には、そうした話題を口にする人がいます。自慢する心理と対処法をまとめてみました。

周りをドン引きさせるワル自慢

男性の「昔はワルかった自慢」を聴いたことがある人も少なくないでしょう。今はまじめに生きているけれど、昔はヤンチャしていたといった自慢は、周りをドン引きさせることがほとんどです。しかし発言している本人は、周りの反応に気づかないことが多いようです。

それにしても、どうして過去の悪事を自慢したくなるのでしょうか?

通常、明らかに自慢できる内容と思えないだけに、聞いている側はモヤモヤします。そこで3つの視点から、ワル自慢を解説していきたいと思います。

①ワルはモテるという意識
2006年~20007年にかけて「ちょいワルおやじ」という言葉が流行しました。このブームを先導したのは、雑誌『LEON』。「やや不良がかった中年男性」をイメージしたファッションを取り上げることで、中高年から圧倒的な支持を得たのです。そして、このファッションの効果として喧伝されていたのが、「モテる」でした。

マンガやドラマ、映画などでも、ちょっとワルい男性はモテます。「危険な香り」や「優しい素顔とのギャップ」を振りまいて、ヒロインを夢中にさせていくのです。

ただ、現実で「ワル」がモテるのかどうかは微妙でしょう。
心理学者のアンダーソンがアメリカ人の大学生を対象にした調査では、好まれる性格特性のベスト5が「誠実な」「正直な」「理解のある」「忠実な」「信用できる」であり、ワースト5が「うそつき」「いかさま師」「下品な」「残虐な」「正直でない」となっています。この調査は恋愛を対象としたものではありませんが、好意が恋愛に発展することを考えれば、「ワル」がモテない可能性は高そうです。

一方、イースタンコネチカット州立大学のマドリン・A・フジェール教授によれば、ワルい男が強い色気を醸し出すことはあるそうです。「反抗的で感情表現が苦手」「ナルシストで策略家」「反社会的かつ衝動的」といった特徴を持つ男性に惹かれる女性は確かにいるようです。

とはいえ「ワル」で強烈な色気を放つ人がいるというだけで、「ワル」だからモテるというのは男性の思い込みなのかもしれません。

ヤンチャ自慢の背後に自分がモテるというアピールがある場合は、「ワル」ならモテるという勘違いがあるのではないでしょうか。

②「逸脱」が男らしいと考える

男性学の第一人者である武蔵大学の田中俊之氏は、「男性らしさ」について、

「それは長く『達成』か『逸脱』か――だったんです」(「男はなぜ「昔はワルかった」と言ってしまうのか…男性学者・田中俊之さん」『読売新聞』2014年12月17日)

と語っています。

「達成」はいい大学や一流企業に入ったり、出世したり、スポーツの大会で優秀な成績を収めたりといったことです。男性である「優秀さ」を、そうしたことでアピールする人は多く、わかりやすい基準と言えるでしょう。

しかし「達成」は一部の男性しか実現できません。そんな「達成」をあきらめた人が「逸脱」に「男らしさ」を求めるのだそうです。昔の「ワル自慢」などは、「逸脱」そのものでしょう。

つまり「ワル自慢」「ヤンチャ自慢」は、「達成」を実現できなかった男性による、苦肉のアピール策なのです。ただ、この観念は一般的ではないため、「逸脱」の価値を理解できない多くの人は、自慢された時点でゲンナリしてしまうのでしょう。

③「ワル」が評価される現実がある

①や②のような意識を持ったとしても、現実でまったく評価されないなら、自慢話する人も少なくなるはずです。昔ワルだったけれど、モテもしなかったし、「逸脱」をアピールしても誰も反応してくれない。そんな状況が続けば、自慢をする気さえ失せてしまうからです。「ワル」が評価される現実が、どこかにあるからこそ、ヤンチャ自慢は廃れないのです。

関西学院大学の松本隆志氏は、『実話ナックルズ』や『チャンプロード』などの雑誌に掲載された不良の自伝を分析し、「ワル」が評価される社会構造を解き明かしています。

そもそも暴力に支配され、さらにやくざや先輩などに「上納金」を収めなければならない不良の世界は、その集団に居続けること自体が容易ではないと指摘、

過酷な環境(日常的に暴力が横行する集団)の只中にいるということに男らしさ、タフネス性という価値を見出している(「不良物語という名の搾取構造」松本隆志)

と解説しています。
そうした心理の表われた発言として、次のような当事者のコメントを紹介しているのです。

「(暴走族)が厳しいからこそ、ゾク出身者は引退後も根性があるとみられるし、そのへんの不良にはなめられない」(産経新聞大阪社会部 2002、P.122、暴走族18歳)(「不良物語という名の搾取構造」松本隆志)

暴力などに耐えた成果が「なめられない」というのでは、一般的には割に合わないと感じるものです。しかし「不良」にとっては何かしらの意味があるのでしょう。

さらに、こうした不良の共同体には、

「“搾取”を“自己鍛錬”“男らしさ”へと読み換えさせる仕掛け(不良物語)が潜んでいる」(「不良物語という名の搾取構造」松本隆志)

とも分析しています。

つまり不良や「ワル」の世界では、暴力や金銭的な搾取の中で「男らしさ」を磨いたと認められるのです。

しかもこうした評価は不良やワルの世界だけではない、と松本氏は指摘しています。

「制度の要求に唯々諾々と従い平々凡々にやるよりも、制度からはみ出した方が人間が大きくなるだとか、制度の中では育めない強さを身につけられるだとかは世間でよく言われていることではないだろうか」(「不良物語という名の搾取構造」松本隆志)

不良から更生し成功する物語がメディアで取り上げられることも少なくありません。その背景には上記のような意識が、視聴者の側にもあるのでしょう。ただ、そうした人生観を持っていない人には、自慢するポイントがどこにあるのかわからないといった状態になってしまうのです。

自慢話の対処法とは

自慢の裏側には承認欲求があるので、ヤンチャ自慢をする人を喜ばせるのは簡単です。「すごいですね!」と言い、相手の話を聞いてあげればいいのです。仕事関係などで相手を喜ばせる必要があるときは、耳を傾けてあげましょう。

人は相手の反応が薄いと話を繰り返すことが多いので、オーバーアクションで反応して、相手を納得させて話を切るという方法もあります。しかし話が止まらなくなる危険性も……。

話を聞くといった時間のムダの省きたいなら、興味なさそうな様子を相手に見せるのもいいでしょう。「そうですか」と淡々と対応していれば、自分の自慢話のバカらしさに気づいてくれるかもしれません。

さらに強硬に話を止めたいなら、「そうなんですか。ところで〇〇はどうなりました?」と、笑顔で一気に話題を転換しましょう。

さて、ワル自慢、ヤンチャ自慢などは多くの人のとって面白くもなければ、聞きたくもない話だということを、男性は肝に銘じておく必要がありそうです。

行動を理解する足掛かりになる心理学の知識に興味のある方は、こちらもご覧ください。

監修:日本産業カウンセラー協会

参考:「不良物語という名の搾取構造」(松本隆志)/『対人社会心理学 重要研究集2』(編者 齊藤勇/誠信書房)/「専門家が指摘!手のかかる『悪い男』が魅力的に見える心理」(COSMOPOLITAN)/「男はなぜ「昔はワルかった」と言ってしまうのか…男性学者・田中俊之さん」(『読売新聞』2014年12月17日)

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