誰かが笑っているのを見ると、「つられ笑い」してしまった経験はありませんか? あるいは他人のあくびがうつったと感じたことは?じつは笑いやあくびだけではなく、ストレスも伝染します。そこでストレスの伝染防止法を紹介します!
ストレスの伝染で生存率アップ
店主が怒鳴っているようなレストランに行くと、気分が悪くなりますよね。あるいはストレス過多の人が事務所に居ると、何となく職場の雰囲気がギスギスしてしまうといったこともあるでしょう。
ストレスが伝染することは、科学的にも複数の論文で証明されています。
集団行動をしていた人類の祖先は、ストレスや不安を伝播させることで仲間の生存率を上げてきたというのです。自分たちを脅かす捕食者の影を見たというストレスや不安が同じグループ内に一気に広がれば、グループの誰かが生き残る確率がアップするからです。
つまりストレスや不安の伝染は、人間の本能に関係しており、ストレスのない無警戒な状態であれば敵からの攻撃を避けることができません。最近の研究では、ストレスを感じるとアポクリン汗腺から特殊なストレスホルモンを分泌することもわかっています。結果、周りの人の嗅覚を刺激し、ストレスが伝染してしまうというのです。
ストレスの伝染は接客業で大きな問題となり、リッツ・カールトンでは、お客様に接するときにマイナスの感情を持たないよう指導しているそうです。
恋人のストレスは要注意!
またストレス伝染の確率は、相手によって変わってくることも判明しています。他人よりも恋人の方がストレスを伝染させやすいというのです。つまり恋人が常にストレスを抱えているようだと、一緒にいる自分もストレス過多になる可能性が高まります。
また、「他人がまき散らすストレスに“感染”しない4つの方法」(ショーン・エイカー ミシェル・ギラン/ハーバード・ビジネス・レビュー)によれば、映像を見ただけでもストレスが伝染することも判明しているそうです。陰鬱なドラマを見れば、よりストレスが高まってしまうとのこと。悲惨なニュースなどを見続けるのも、ストレスの観点からはお勧めできません。
映像でも伝染するのなら、テレワークでストレスをもらってしまうこともあるかもしれません。
ただし先にも述べたように、ストレスの伝染は人間の本能に関係しているので、完全に抑えることは難しいかもしれませんが、3つのストレス伝染を軽減させる方法を紹介しましょう。
①ストレスを捉え直す
多くの人はストレスを無くさねばと思っているのではないでしょうかそうした反応は、ストレスを余計に増加させてしまうようです。むしろストレスと闘うのを止めて、ストレスを正しく理解することで、悪影響が23%も減ったという研究結果があります。
ストレスが気力を高めたり、頭の回転をよくするといった「効果」があることは知られています。問題を解決しようとするときストレスは発生しやすいので、挑戦や成長の裏側にはストレスがあるともいえるのです。
ストレスを悪者に見立て、ひたすら回避するよりも、ストレスを成長のチャンスと捉えられれば悪影響は防げるかもしれません。
ストレスの伝染についても、同様の態度が必要です。ストレス過多の人と一緒にイラつくのではなく、相手がポジティブになれるお手伝いができる機会だと捉えることができれば、状況も違って見えるでしょう。
政治家の取材をしている記者は、候補者が選挙で落選したときこそ訪ねるべきだと話していました。ひどい状況で取り巻きの人が少ないときほど、強い絆をつくるチャンスだからです。
まず、ストレスのプラスの側面について考えてみませんか? 意外な発見があるかもしれません。
②恋人や家族のストレスを解消する
親密な関係であればあるほどストレスが伝染する可能性が高くなります。だからこそ家族や恋人のストレス解消を手伝ってみましょう。
しっかりと相手の話を聴いたり、一緒に気分転換したりと、できそうなストレス解消法はけっこうあるようです。
身近な人のストレスを解消することができれば、ストレスの伝染を抑えることもできます。一緒にできそうなストレス解消法を、互いに気分がよいときに探しておくのもお勧めです!
③自分のストレス値を下げておく
ある程度ストレスが伝染してしまうのが仕方ないなら、伝染しても気持ちや体が参らないよう、心身の調整しておきましょう。
例えば、ストレス過多の人に会いに行くときは、事前に運動をしたり、感謝を感じた身近な出来事を3つ書き出すなどして、テンションを上げてから会うようにしましょう。
もちろん不機嫌な人に会わなくていいなら、それにこしたことはありません。しかし仕事などで顔を合わせる必要があるなら、事前の対策を講じてみませんか。準備をしておけば、その自信がストレスによる悪影響を抑える可能性もあります。
今日はストレスの伝染について紹介しました。元気に過ごすための、ちょっとしたテクニックですので活用してみてください。
ストレスについて興味のある方は、こちらもご覧ください。
監修:日本産業カウンセラー協会
参考:「Why Stress is Easily Transmitted Between People」(Jake Teeny /Everyday Psych)/「他人がまき散らすストレスに“感染”しない4つの方法」(ショーン・エイカー ミシェル・ギラン/ハーバード・ビジネス・レビュー)