職場の人間関係は難しいですよね。友達とも言えないけれど、協力すべきことは多く、共有する時間も長いからです。相手との距離を縮める方法が知りたいと感じる人も多いのではないでしょうか。そんな人にお勧めしたいのが「自己開示」です!
- 1時間で親しくなる!?
- 自己開示4つの注意点
- 職場で応用するときの2つのヒント
- 自己開示の参考にしたい10の質問
1時間で親しくなる!?
ギスギスした人間関係の中で働きたい人など、まずいないでしょう。互いの意思疎通がスムーズな方が仕事だってはかどります。といってもコロナ禍で飲み会を開くどころか、直接会うこともままならないというケースも。
他人との精神的な距離をもう少しだけ近づけたい場合に、自分の気持ちや情報を知らせる「自己開示」が有効だと社会心理学者のデブラ・マシェク博士は指摘します。リストに沿って自分の情報を開示し合う心理実験では、わずか1時間ほどでかなり強い絆ができたそうです。
その実験は34の質問が並んでおり、それを上から順に交互に答えていくだけ。とてもシンプルなものですが、少しずつ自己開示が進むよう質問リストが工夫されているため、実験が終わるころにはすっかり打ち解けた間柄になれるそうです。
自己開示4つの注意点
ただ、自己開示には注意点があります。
心理実験であれば質問が終わるまで一緒に居てくれますが、実際の人間関係では自己開示が原因で距離をあけられてしまうケースがあるからです。そこで自己開示をする際の注意点についてまとめておきましょう。
①無理にすすめない
いきなり個人的な話題を語られて、少し気味悪く感じたことはありませんか?
自己開示をするときは、いきなり深い話を持ち出さないようにしましょう。相手にとってちょうどよい距離感が大切です。
自分が自己開示をしたのに、相手が心を閉ざしたままなのは、まだ準備ができていない証拠。ゆっくり待つようにしましょう。
②時間をかける
職場の人間関係と心理実験の違うところは、実際に自己開示を進めるのに時間が必要だということです。そろりそろりとゆっくり進めましょう。距離感を一気に縮めようとすると、相手に警戒心を抱かせてしまうかもしれません。
③内容の強弱を知る
自己開示の情報には強弱があります。例えば単なる情報よりも感情に関連する方が、より親密な関係で発するべき内容となり強度が増します。親友にしか語れないような内容もあれば、ご挨拶するご近所さんに語れるぐらいの内容もあるというわけです。
重要なのは関係性にあった内容を選択することであり、相手との距離を縮めたいと思うなら少しずつ自己開示の内容の強度を上げていくといいようです。
④正直に話す
自分のことを話せばいいといっても、そこに自慢が入っているようでは「自己開示」になりません。マウンティングをしたい、かっこよく自分を見せたい、好感度を上げたいといった気持ちで自分の情報を開示するのではなく、ありのまま正直に話すことが重要です。
自己開示が相手との距離を縮めるのは、「そんなことまで話してくれる」といった気持ちが起きるからです。虚勢を張った「自己開示」には、心の距離を近づける力はありません。
職場で応用するときの2つのヒント
では、自己開示を職場で応用するのは、どうしたらいいのでしょうか?
デブラ・マシェク博士は、2つのヒントを書いています。
①チャットなどで気持ちを伝えること
例えば会議前に時間があるなら、チャットで自分の気持ちを話しておくことが距離を縮めるきっかけになるそうです。
「今日は発表があるから緊張してきた」「苦労してきたプロジェクトだけど、やっと最終段階にきたから興奮している」などなど。事務的な情報ではなく、自分の気持ちも相手に伝えてみましょう。
②メールに個人的な情報を入れる
たいした情報でなくていいのです。週末であれば「明日からは海外ドラマ三昧だよ!」といった情報を足すだけでメールの雰囲気が変わります。ビジネス情報だけを交換する間柄から、もう一歩だけ近づく。そのための小さな自己開示に挑戦してみるのも良いかもしれませんよ。
自己開示の参考にしたい10の質問
先述した心理実験の34の質問から、日本人でも使えそうな10の質問をセレクトしてみました。自己開示のする際の参考にしてみてください。自分が話すときにも、相手に質問するときにも活用できます。
数字の小さいものほど、内容が軽くなっています。9、10の内容は口にするのも勇気がいるかもしれませんね。
【質問事項】
1.世界の誰でも一緒に夕食を食べられるとしたら、誰がいいですか?
2.電話をかける前に予行演習をした経験がありますか? それはどうしてですか?
3.あなたにとって「完璧な」日に必要なものは?
4.自分の人生で最も感謝していることは何ですか?
5.1つだけ資質や能力を一晩で身に付けられるとしたら何がいいですか?
6.長年、夢見ていた希望はありますか? また、それを実行しなかった理由はなんですか?
7.人生の最大の成果は何ですか?
8.最も大切な思い出を教えてください。
9.自分があなたと親しい友人になる場合に、知っておくべき重要なことを教えてください。
10.今晩、自分が死んでしまったとき、話さなかったことを最も後悔しそうなことはなんですか? また、どうしてこれまで話さなかったのですか?
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監修:日本産業カウンセラー協会
参考:「Want to Nudge the Collaborative Spirit? Talk About Yourself」(Debra Mashek Ph.D./Psychology Today)/「The Experimental Generation of Interpersonal Closeness: A Procedure and Some Preliminary Findings」(Arthur Aron Edward Melinat Elaine N. Aron Robert Darrin Vallone Renee J. Bator)