ビジネスでは相手の興味を引くことが、とても重要な場合があります。プレゼンや広告などは、その典型でしょう。そんなときに効果を発揮するのが、相手を最後まで飽きさせない心理的な刺激です。そのような刺激の一つがミステリアスな話なのです。
- CMが禁止されたから売り上げが伸びたミステリアス!?
- 議論は反論が有利
- 常識を壊して興味を引く
CMが禁止されたから売り上げが伸びたミステリアス!?
米国ではタバコのテレビ・ラジオのCMが禁止されたことで、タバコ業界は広告費の3割のカットに成功し、売り上げが増加した例があります。
この一見、不思議でミステリアスな事例は、心理学とマーケティングの第一人者であるアリゾナ州立大学のロバート・チャルディーニ教授の著書『プリ・スエーション 影響力と説得のための革命的瞬間』に記された事例です。
チャルディーニ教授は、
「謎めいた話には完了を強く求めさせる力が宿っている」
と書いています。映画などでも謎めいたシーンが冒頭に盛り込まれることは少なくありません。
タバコのテレビ・ラジオのCMの話には続きがあります。
それはタバコ業界の代表者が、米国の議会公聴会でテレビとラジオでのタバコCMの禁止を熱心に提案したことです。
ただしタバコ業界は、広告をまったくしなかったわけではありません。紙媒体の広告やスポーツのスポンサー広告、販促用の無料サンプル、映画でのタイアップ広告などには逆に力を入れたのです。
このミステリアスな話の裏側には、テレビとラジオに公平な広告時間を与えるようにという米連邦通信委員会の決定が関わっていました。つまりタバコのCMが流れるたびに、その反論のCMが無料で与えられていたのです。
議論は反論が有利
じつは反論は非常に強い力を持ちます。特に相手の主張の情報源が全般的に信頼できないと論じると、ほとんどの場合、その論戦に勝つことができるそうです。
つまり常に反論の場が無料で与えられるテレビとラジオのCMは、タバコ業界にとってマイナスにしかなりませんでした。こうした反論の機会を減らすことで、タバコ業界は一定の売り上げを確保することができたのです。
すべての状況説明が終われば、その内容はさして驚くようなものではないでしょう。しかし、最初に謎めいたミステリアスな話題が提供されたため、通常なら興味が失せる話の細部にまで関心が増してしまったというわけです。
常識を壊して興味を引く
相手が「なぜ」と思う話を提供することで、相手の興味が一気に増すことはわかっていただけたのではないでしょうか。ただし問題は、ミステリアスな題材と謎めいたストーリーを作るのが、なかなか難しいことです。
そこで、その変化形として紹介したいのが、常識を覆して話を展開するといった方法です。例えば、ダイエット食品の販売をするときに、「そもそもカロリーは体重の増減と関係ありません」といった話をすれば、聞き手を引き付けます。
その上で常識が覆された根拠を示し、そこに自分の主張を織り交ぜていくことで興味を持ち続けてもらうことができるのです。
ビジネスの場面で、活用してみてはいかがでしょうか。