知ってる?ビジネスで使える選択のクセって

人は必ずしも明確な意思を持って選択しているわけではありません。何となく選んでしまうことも多いもの。そんな「何となく選ぶ」ときの傾向性について紹介しましょう。

  1. 3つの価格帯なら真ん中を
  2. 5つの選択肢なら真ん中を
  3. 多すぎる選択肢は選べない

3つの価格帯なら真ん中を

メニューで松竹梅と3つにわかれていたら竹を選ぶ人が多いというのは、経験的に知っている人が多いのではないでしょうか。3つの価格帯でどれを選ぶのかについては、米国でも実験が行われています。

『本当は怖い59の心理実験』(おもしろ心理学会 編/青春出版社)によれば、約100人の実験参加者に、まず2種類の高品質のカメラを見せて、値段の高いほうと安い方のどちらを選択するのかを調査したところ、だいたい半分に分かれたそうです。ところが先程の2つのカメラに、値段の安いもう1つのカメラを選択肢として加えると、圧倒的に中間の価格のカメラを選ぶ人が増えたのです。

ここで重要なのは、2種類の選択肢から3種類の選択肢に変えたとき、低価格のカメラを付け加えただけだということです。実験の記述にはカメラの性能について詳しくは書かれていませんが、松竹梅とあったらとりあえず中間の価格の竹を選んでしまう選択の癖は、ビジネスでも使うことができます。

例えば自社で販売したい上位機種の商品の売り上げが伸びないならば、その上の商品を選択肢に加えて真ん中の価格帯にすることで、売り上げは変わってくるかもしれません。

考えてみれば、うなぎ屋さんの松竹梅などは、どうして価格に差が出ているのか、きちんと説明をしてもらうことなく竹を選ぶことが多いと思いませんか? 量なのか、質なのか、何が違うんだろうと悩むことなく、とりあえず真ん中でと選択してしまう傾向性は、ビジネスの現場でも発揮されることでしょう。

5つの選択肢なら真ん中を

真ん中を選択してしまうのは、価格だけに限った話ではありません。

『本当は怖い59の心理実験』(おもしろ心理学会 編/青春出版社)によれば、同じテーマの写真5枚を横に並べて好きな1枚を選んでもらう実験をしたところ、実験参加者のほとんどが真ん中に置いてある写真を選んだというのです。

海をテーマした写真5枚、花をテーマにした写真5枚といった選択肢で、置いた位置で選ぶものが決まってしまうことに驚く人も多いでしょう。人の選択は自分が思っている以上にいい加減なものなのかもしれません。

じつは、この実験は別のバージョンで行われています。同じ写真を縦に並べたものと写真を現物の靴下に替えて横に並べたものです。結果はやはり同じで、写真も現物も真ん中が圧倒的に多かったとのこと。

ただし最も嫌いなものを選ばせたときは、真ん中だけが選ばれるという傾向は見られなくなりました。つまり「嫌い」は「好き」よりも、しっかりした意思で選ばれているともいえるでしょう。

多すぎる選択肢は選べない

ここまで3つの選択と5つの選択について書いてきました。それではもっと多くの選択肢を与えられたとき、人はどんなふうに選ぶのでしょうか?

こうした疑問に対しては、コロンビア大学シーナ・アイエンガー教授が有名な実験をしています。スーパーマーケットでのジャムの試食実験です。

24種類の試食を用意したケースと6種類のケースで、人が集まりやすかったのは24種類のケースでした。いっぱいの試食が並んでいれば、ちょっと食べてみたいなと思うのも当然でしょう。

ところが試食した人のうち、どれぐらいが購入したのかを調べると、6種類提示した場合は約30%の人が購入したのに、24種類を提示したケースでは3%しか購入しなかったのです。

どうしてこのような結果になるかについて、シーナ・アイエンガー教授は選択肢が多すぎると人は選べなくなると説明しています。

ただしこの実験は、すべての人に当てはまるわけではないという実験も行われています。

米スタンフォード大学経営大学院のジョナサン・レバーブ准教授は、ドイツの新車販売店で自動車の専門家に、多様な車からの選択を調査してみたところ「決断疲れ」をまったく起こさなかったと報告しています。

考えてみれば、バイヤーなどが購入を決めるときは、選択肢が20、30と増えることもあるでしょう。選択のポイントがある程度定まっているプロであれば、選択肢が多くても購入してくれる可能性が高いといえるでしょう。

いかがでしたか? 選択のクセはつかめましたか?

ビジネスで選択を迫るときは、売りたいものの価格を真ん中に、そして提示するパンフレットの写真も真ん中にというのが原則のようです。

ぜひ、試してみてください。

参考:

『本当は怖い59の心理実験』(おもしろ心理学会 編/青春出版社)

NIKKEI STYLE『選択肢が多すぎると選べない』は間違いだった?」

関連記事

先の見えない「コロナ禍」を乗り切る5つの方法... コロナ禍による先行きの見えなさに、不安になっている人も少なくないかもしれません。こうした予想を超えた事態に、どう対処すべきなのかを、不確実性という観点から紹介したいと思います。 予想外の未来に対応するコロナ禍は「ブラック・スワン」か!?5つの対策ポイント 予想外の未来に対応する...
「アフターコロナ」の「新たな現実」と今できること... Webでは「アフターコロナ」や「ポストコロナ」という単語が飛び交うようになりました。パンデミックが収まった後の世界は、過去の日常とは変わってしまうのだろうという予測からです。そんな新しい世界秩序のためにできることを考えてみました。 メディアが注目し始めた「アフターコロナ」 「ア...
ファクトフルネスから学ぶリスクを前にして焦らない方法って?... 現在、多くの人が不安を抱えながら生活しているのではないでしょうか。そんな中、警戒心を高めることはとても大切ですが、もし「いまやらなければ取り返しがつかない」と感じるほど焦っていたら、少しだけ落ち着いて現状を再確認することも必要かもしれません。 エボラに対応した人物からのアドバイスほん...
自分の選択は本当に信用できますか?... 自分の選択に、どれだけ自信を持っていますか?しっかりとした理由のある好き・嫌いの感情は、ちょっとやそっとでは変えようがないと思っていませんか?そう思っている方に人間の選択理由は当てにならないという実験を紹介しましょう。 選んだ写真がすり替わっても気づかない脳はわかっている!?しっかり...
消費金額を左右する「心理的財布」って知ってる?... ファッションにはいくらでもお金を使うのに、食事はとことん出費を削っている人っていますよね。それは商品に対する「心理的財布」が違うからなのです。お金を出す価値観について解説します。 同じく1万円が無くなったのに?どの財布から1万円は出たのか?ヨットが最もお金を使いにくい学生と社会人で異...

働く人の心ラボは、働く人なら知っておきたい『心の仕組み』を解説するサイト。
すぐに応用できる心理学の知識が満載の記事を配信しています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です