Webでは「アフターコロナ」や「ポストコロナ」という単語が飛び交うようになりました。パンデミックが収まった後の世界は、過去の日常とは変わってしまうのだろうという予測からです。そんな新しい世界秩序のためにできることを考えてみました。
メディアが注目し始めた「アフターコロナ」
「アフターコロナ」や「ポストコロナ」は、まだまだ大きな注目を集めるには至っていないようです。しかし長期化する都市封鎖などにより、海外ではパンデミック前のような生活には戻らないだろうといった考え方が出ているようです。
まず、その論調のいくつかを紹介しましょう。
世界的なベストセラー『ホモサピエンス全史』などを執筆した歴史学者であり哲学者のユヴァル・ノア・ハラリ氏は、国家による監視やグローバリズムのあり方が劇的に変わる、と指摘しています。
携帯を追跡することで感染者と接触した人を特定できるアプリの開発が話題になっていますが、さらに監視を強化する可能性もあるという指摘です。
人やモノが国外を行き来するグローバリズムへの警戒も、すでに強まっています。安全のために人やモノの往来が止まってしまう現実を前に、企業も安全策を模索し始めているようです。ユヴァル・ノア・ハラリ氏は世界各国の協調を訴えていますが、企業はグローバルなサプライチェーンを見直すのではという見通しを多くのエコノミストが唱えています。
また、政府がすべての国民に生活に必要な最低限のお金を支給する「ベーシックインカム」が始まるのでは、といった論調も多く見かけます。日本でも国民一律に10万円が給付されますが、こうした現金給付が「ベーシックインカム」を一気に現実化させるという話です。
どれもこれも、コロナ禍の前なら「本当か?」と考えてしまうような話ですが、パンデミックの歴史を見返すと、社会の大きな変換は避けられないのかもという気もしてくるのです。
パンデミックは歴史をどう変えた?
感染症が社会制度を変えたことで有名なのは、大量の死者を出した16世紀のペスト流行でしょう。まず、労働者が一気に減ったことで農奴に依存した荘園制が崩壊。祈っても感染を止めることができなかった教会の権威が失墜してしまいます。結果、封建的身分制度も崩壊し中世の終わりへと導いたと言われます。
天然痘は侵略に来たスペイン人から持ち込まれ、アステカ帝国を滅ぼしました。人口数百万人を誇るアステカ帝国はスペインの武器に屈したのではなく、病に倒れたのだそうです。しかも抗体を持つスペイン人が元気なのに、自国の国民だけが倒れていく現実を前に、土着の神を捨てたとも言われています。
天然痘への対策である「種痘」(天然痘の予防接種)の導入は、イギリスとフランスの国力を逆転させたと言われています。種痘の積極的な導入に費やした50年の差が、大英帝国を反映に導いたというわけです。
もう自分たちの感覚も変わっているかも
こんな大掛かりなことを言われても、と思う人も多いかもしれません。しかし新型コロナウイルスが招いた混乱によって、私たちの「常識」も少しずつ変化しているかもしれません。
例えば、テレワーク。
テレワークが進まない理由として、そもそもペーパーレス化が進まない、ICT(情報通信技術)が揃っていないといった点がさまざまな企業で問題になってきました。しかし新型コロナウイルスの問題に吹き飛ばされた感があります。もちろん業種にもよりますが、さまざまな問題がありながらも、Zoomでの会議や自宅でのチャットが当たり前になりつつあります。
しばらくこうした状態が続いたとき、私たちは週5日の出社が必要という認識に戻れるのでしょうか?
実際、コロナ禍以降のテレワークによって人事評価そのものも変わる、といった論調の記事も散見するようになりました。
また一部大学などでは、講義の代わりとしてオンライン教育がスタートしています。非常事態宣言が長期化すれば、多くの教育機関がオンラインに切り替えていくでしょう。こうしたことが長く続けば、すべての講義に出席するといった意識も変わるかもしれません。
変化に対応するための学びが必要
さて、歴史的な転換点かもしれないコロナ禍を前に、私たちは何ができるのでしょうか? 特定の業種・職種・時代背景にとらわれない能力「ポータブルスキル」を磨けばいいのでしょうか?
たしかに経済産業省の提唱する「社会人基礎力」が過去のものとなるとは思えません。「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」という3つの柱は、仕事に必要であり続けるでしょう。
ただ能力を発揮する方法は、これまでと変わるかもしれません。
例えば社会人基礎力に挙げられている「自分の意見をかわりやすく伝える力」は、実際に会って説明するのか、テレビ電話なのか、チャットなのかで必要なスキルが変わってくるでしょう。
結局、大規模な社会変革が起きたら、時代に合わせて自分の能力を調整していかねばなりません。そのヒントになりそうなのが、よりよい生き方を追究する「キャリア学」です。キャリアの知識を使い自己理解を深めていけば、変化への対応もしやすくなるでしょう。
国家資格である「キャリアコンサルタント」の取得を目標にするなど、時代の激変に備えて今は地道に努力を重ねるときかもしれません。
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参考:『疫病と世界史』(ウィリアム・H. マクニール 著 中央公論社)/『働き方の哲学』(村山昇 著 ディスカヴァー・トゥエンティワン)/「社会を変革させるパンデミック 流行終息後でさえ続く変化」(山本太郎 著 『西日本新聞』)/「the world after coronavirus ― This storm will pass. But the choices we make now could change our lives for years to come」(Yuval Noah Harar 『FINANCIAL TIMES』)/「最新記事 ワールド ポスト・コロナの世界経済はこうなる──著名エコノミスト9人が語る」(『Newsweek』)