自分の選択に、どれだけ自信を持っていますか?しっかりとした理由のある好き・嫌いの感情は、ちょっとやそっとでは変えようがないと思っていませんか?そう思っている方に人間の選択理由は当てにならないという実験を紹介しましょう。
- 選んだ写真がすり替わっても気づかない
- 脳はわかっている!?
- しっかりと体験するしかない
選んだ写真がすり替わっても気づかない
「どちらがいい?」ときかれて迷った末に1つを選択する。もちろん選んだ理由も明確に答えられる。そうした選択に多くの人は自信を持つものです。周りの人も好きな理由を答えられる以上、その選択は簡単には覆られないと思ってしまうのではないでしょうか。
しかし心理学者のヨハンセンの実験は、そうした常識をあっさりと覆しました。
彼は実験参加者に二人の女性のモノクロ写真を見せて、どちらが好きかをたずねました。実験参加者がどちらか一方を選んだ後、写真をひっくり返し、手品のトリックを使って、選んでいない方の写真を渡して好きな理由を尋ねたのです。
結果、6割の人が写真がすり替わったことに気づかず、「あなたが選んだのはこの人ですね?」という問いかけにも疑問を持たず、選んだもっともらしい理由を並べたてたというのです。
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ジャムや紅茶を使った実験でも、好みの味を選択した後にすり替えても、すり替えに気づいた人は3分の1に過ぎなかったことがわかっています。しかも実験に使われたジャムは、シナモンアップル・ジャムとグレープフルーツ・ジャム。苦みの強いグレープフルーツ・ジャムとの違いに気づかないなど信じがたいのですが、やはり人の選択はかなりあいまいだということが分かったのです。
脳はわかっている!?
この実験が少し心をざわつかせるのは、選択したものを忘れていることでしょう。しかもそれらしい理由までつけて。
では、結局のところ人は、どうして選択しているのでしょうか?
そうした疑問に対する答えも少しずつ実験で明らかになっています。
さまざまなインディーズの音楽を聴いてもらってアンケートを取った実験では、売り上げとアンケート結果に相関関係が見られなかったものの、MRIで調べた脳の反応とは相関関係があることがわかっています。
つまり脳は好きな音楽を選択できていたのに、アンケートではその曲を選択できなかったというわけです。
しっかりと体験するしかない
自分の選択は理由も含めて信じられないことを自覚すると、自分の抱いているこだわりから解放されるかもしれません。何となく感じている人の好き嫌い、仕事の好き嫌いも、自分で感じているほど当てにならないかもしれないのです。
「食わず嫌い」という言葉がありますが、「食って」下した判断ですら覆る可能性があるのなら、少量ティスティングをするだけで不十分だということでしょう。
どれぐらい真剣な選択から、自分の判断を信じられるのかという研究はないようですが、しっかり体験して吟味した選択は信じるしかないでしょう。仕事などの選択でも、ちょっとかじっただけで判断を下すのではなく、しっかりと取り組んでみた結果から考えてみるべきなのかもしれません。
選択や好き嫌いの理由がしっかりしているからといって、その判断が自分にとって絶対だとは思うのはちょっと危険かもしれません。
参考:
『本当は怖い59の心理実験』(おもしろ心理学会 編/青春出版社)