脳科学から考えるモチベーションアップの方法

モチベーションをどのように上げていくのかは、ビジネスパーソンにとって大きな問題でしょう。そこで脳科学の観点からモチベーションアップの方法を探ってみました。具体的な解決法とともにお伝えします。

  • 必要なのは自分のキャリアとの結びつき
  • ポイントは4つの情動
  • モチベーションアップの元を突き止める
  • 期待を上げ過ぎない

必要なのは自分のキャリアとの結びつき

近年、給料が上がらないのに効率化は求められ、景気が上向かないため成果も出しにくいといったことも多いでしょう。同じ会社で働き続け、一定の業績を上げれば一生安泰で、国や業種の経済成長とともに給与も上がり続ける。そんな働き方ができると考えている人は、もうかなり少ないでしょう。

そうした状況でのモチベーション維持は難しい問題かもしれません。

実際、企業が示すモチベーションアップの施策が自分にフィットしないことも増えてきていると思います。10年後の役職や、それにともなう給与アップを示されても、「本当に役職に就けるのか?」「今の収益が10年後も続くのか?」とか、そもそも「こんな働き方を10年も続けられるのか」といった疑問を感じてしまうからです。

だからこそ自分自身でキャリアについて考え、自分でモチベーションをアップし、自ら成長できる道筋を考える必要に迫られているのです。自ら動くためのモチベーションアップが、より大切になってきているといえるでしょう。

ポイントは4つの情動

では、モチベーションが高まっているときの脳内は、どんな状態なのでしょうか?

近年の研究では、ドーパミンが出やすい状態であることがわかっています。だからこそドーパミンを放出してくれる刺激が大切になってきます。脳科学の専門家である青砥瑞人氏は、その刺激を以下の4つの情動(怒り、恐れ、喜び、悲しみなど、比較的短期の感情の動き)で説明しています。

①SEEK
「SEEK」は探求する心です。こうすれば面白いかもしれない、楽しいかもしれないといった快楽への道筋を探すことで、ドーパミンが放出されます。旅行の予定を立てるときに感じる強いモチベーションは、「SEEK」といえるでしょう。

②WANT
「WANT」は欲求。すでに快楽だとわかっているものを「欲しい」と思ったときにドーパミンを誘導します。チョコ好きなら、チョコを食べたいと思ったことで、ちょっと遠いチョコレートショップに行こうという気持ちも湧いてくるものです。

③LIKE
「LIKE」は好きだという感覚です。ただ意外にも「自分の好き」を認識できていないことが多いそうです。「LIKE」を意識して周りを見渡せば、意外な好きを発見できるとのこと。例えばランチに立ち寄った店の音楽や、仕事で使うキーボードの打ち心地など、「ささやかな好き」を見つける能力を高めるとモチベーションをアップしやすくなるそうです。確かに「キーボードを打つのが心地よいから文書作成が少し楽しい」といった気持ちは、貴重かもしれません。

④「期待値、予測値差分」
少し難しい単語ですが、要は期待したり、予測した以上の結果が出るとドーパミンが出やすくなるということ。面白いことに期待より低い結果でもドーパミンが出るそうです。一方で報酬を受け取るのに慣れてしまうと、ドーパミンが出にくくなってしまいます。例えば働き始めて最初の給与は、嬉しくてワクワクしながらもらうことでしょう。しかし慣れてくれば、そんな気持ちもなくなってしまうのです。

モチベーションアップの元を突き止める

さて、上記の4つがドーパミンを出すことがわかったら、具体的にどんな出来事やモノがドーパミンを放出するのか、言い換えればモチベーションが上がり、行動する意欲が高まり、ポジティブになるのかを特定しましょう。

というのもモチベーションをアップさせる要因は、人によって異なるからです。それは個人個人の好みによっても変わりますし、過去の経験によっても変わります。
例えば同じ山に登ったとしても、何も楽しむ余裕もなく体力の限界を感じてしまった人と、高山植物などを眺めながら楽しんで登った人のモチベーションは変わってしまいます。以前に山に行って楽しかった人は、次の登山に対しても高いモチベーションを保てるでしょう。

だからこそ、まず「SEEK」「WANT」「LIKE」の情動に合わせて、自分がどんなことでモチベーションがアップするのかを書き出してみましょう。何を探求しているときにワクワクするのか、何が欲しいのか、どんなことが好きなのか。小さな要因でもいいので書き出して、それを仕事につなげていきましょう。

授業に興味が持てなくても、教える先生が好きで勉強へのモチベーションが高まったといった話は聞いたことがあるでしょう。仕事そのものでなくても、スタッフや仕事に使う道具、自分のこだわりなど、モチベーションアップに使えるものは意外にあるものです。

期待を上げ過ぎない

さて、「期待値、予測値差分」に関連したモチベーションアップの方法として、青砥氏は期待値を上げ過ぎない事を提唱しています。ドーパミンは期待値との差で放出されるので、期待値を上げ過ぎない方がモチベーションをアップさせる可能性が高まるのです。 

また目標だけではなく、段階的な目標やゴールも設定し、自分の成長にも注目できるようになることもモチベーションアップにはプラスに働くようです。

今日は脳科学の側面からモチベーションアップについて考えました。

心理学を活用したモチベ―ションアップに興味のある方は、こちもご覧ください。

監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会

参考:『BRAIN DRIVEN パフォーマンスが高まる脳の状態とは』(青砥瑞人/‎ ディスカヴァー・トゥエンティワン)

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