2018年あたりから雇い止めの問題がメディアで取り上げられることが多くなりました。
2015年に労働者派遣法が改正されて3年たったからです。そこで過去に雇い止めがどう決着したのかを紐解いてみましょう。
- 雇い止めの和解
- 解決が難しい雇用問題
- 早く解決したかった労働者
雇い止めの和解
2014年7月末、大手自動車メーカーを相手取り、正社員としての地位確認を求めた元派遣社員の訴訟で和解が成立しました。原告の15人は2003年7月〜2009年3月に半年から5年半にわたり、同工場で勤務。しかし2008年11月〜2009年3月の間に解雇され提訴していました。
一審の山口地裁判決では、派遣社員を一時的に直接雇用する制度によって、企業側が派遣期間の上限の年数を超えないように調整していたと認定。労働者派遣法に違反するとして、15人のうち13人を正社員として認めるよう命じました。しかし原告・被告双方が不服として控訴していました。
解決が難しい雇用問題
労働者派遣法は、通訳など専門的な26業務以外の職種(現在はすべての労働者派遣)の派遣期間を3年の上限としています。それ以上の継続を求める場合は、派遣労働者に直接雇用を申し入れないといけないとされています。そのため直接雇用を逃れたい企業が「クーリング期間」を利用し、期限となる3年直前に直接雇用する制度などをつくり、派遣を継続しようとするケースも出てきたのです。
また厚生労働省は「派遣先が講ずべき措置に関する指針」において、同一業務の契約更新については、直前の契約と次の契約が3ヵ月以上あいていない場合に継続した契約とみなすといった定めを設けています。そのため企業によっては、派遣業務を3ヵ月停止してから派遣を再開するといった問題も起きていました。
派遣労働は長期に安定した給与を確保できないといった問題が指摘されてきました。実際、リーマンショック後には雇い止めとなった派遣労働者が社会問題ともなりました。その一方で、働き方の多様性として労働者にも認められているのではないかという主張もあります。さらにグローバル化で激化した競争の中で、労働者の長期雇用を維持できないといった企業側の事情もあります。
すべてが納得する制度の構築はなかなか難しそうです。
早く解決したかった労働者
また働き手が裁判に訴えたからといって労働者の問題がすべて解決するわけではありません。冒頭で紹介した裁判でも、和解まで5年以上を費やした結果、原告は新たな職に就いていたと報道されています。そのため職場復帰ではなく金銭解決を目指した和解案は、互いにとって現実的だったという側面もあります。
実際、「これ(和解)によって、経済面や健康面などさまざまな困難を抱えた原告を早期に救済することができる」とのコメントを原告側が発表しています。
こうした問題解決の方法についても、どうすれば労働者を救済できるのかといった視点で議論する必要があるのかもしれません。