店内BGMは適当に選ぶべからず! 音楽による心理的効果

自分でお店をやっている人、あるいは音楽を選ぶ権限を持っている人は、どういう基準で店内BGMを選んでいますか。BGM次第で売れ行きが変わるのだとしたら、ぜひ音楽の心理的効果にあやかりたいですよね。適当に選ぶときっと後悔する、店内BGMの効果について解説します。

  1. 「自分のお店だから」BGM、好みだけで選んでいませんか?
  2. ミリマンによる店内BGM実験
  3. 回転率を速くしたいなら、アップテンポを選ぶべき
  4. 無音という手もあり!?
  5. 商品にも音楽を聞かせるとよい!?
  6. BGMを変えて、お客の動きを見てみるのも面白い

「自分のお店だから」BGM、好みだけで選んでいませんか?

1日の大半を過ごす店内だからこそ、自分の好みでBGMを選びたい。その感覚はとても大事です。とくにセレクトショップやコンセプトカフェなどでは、BGMを含めた世界観を大切にしなければなりません。店主の好みで曲を選ぶことが、イコールお店の雰囲気づくりにプラスになっていることもあるでしょう。

しかし、「お客は入るのに、なぜか売り上げが上がらない」「思うようにお買い物をしてもらえない」と悩んでいるのであれば、売り場の構成や品ぞろえだけでなく、BGMをいったん見直してみましょう。音楽を変えるだけで、売り上げに影響することを立証している心理実験があります。

ミリマンによる店内BGM実験

ロヨラ大学の心理学者ミリマンは、スーパーマーケットに協力してもらい、曜日ごとに店内音楽を変えてもらいました。この時、主に注目したのが音楽のスピードです。スローテンポ(1分間に72ビート)の曲を流したときと、アップテンポ(1分間に94ビート)のときでは売り上げがどう違うかを調査しました。

すると、スローテンポの音楽をかけたときの平均売り上げは、アップテンポのときの平均売り上げよりも38.2%増加したのです。音楽を変えるだけで売り上げが約4割増というのは、大変驚くべき結果ですね。

スーパーマーケットでは、お客の購買意欲を高めたいと思うためか、アップテンポで明るい曲が流れる傾向にあります。しかし、逆にスローテンポの曲を流したほうがお客の滞在時間が長くなり、売り上げが伸びるという結論に至りました。

回転率を速くしたいなら、アップテンポを選ぶべき

では、どんなお店でもスローテンポの曲を選ぶべきでしょうか。そうではないことを、ミリマンは別の実験で示しています。レストランで同様の実験を行ったところ、ランチタイムではアップテンポの曲のほうが11.6%の増収となり、ディナータイムではスローテンポの曲のほうが15.7%の増収となりました。

急いでご飯を済ませたい人の多い昼食の時間帯では、アップテンポの曲を流すと回転率が上がったことが、増収の要因と思われます。一方、ディナータイムではゆったりした曲を流すとお客の滞在時間が長くなり、飲み物やデザートの売り上げが増えたのです。

無音という手もあり!?

企業のBGM戦略の中には、店内に音楽を鳴らさない、つまり無音という手段をとるところもあります。子ども用品大手のある企業です。「そのほうが、お客様が買い物に集中できる」と、販売促進のために取りやめました。するとかなりの経費削減にもつながったそうです。

無音により落ち着いて買い物ができるかどうかはお客によるでしょうが、眠っている赤ちゃんが音楽によって起きない、子どもの声が届きやすいなど、利点は他にもありそうです。このように、思い切って無音にすることで、思わぬ効果が得られる場合もあります。

商品にも音楽を聞かせるとよい!?

もろみの段階でモーツァルトを聴かせ、他の日本酒との差別化を図っている酒造店があります。酵母菌は音楽を聞かせると質が良くなるという説があり、日本酒に限らず焼酎やパンの仕込みでも活用している例がみられます。

なお、音波による振動がお酒の味を左右するという説もあります。ワインを供するレストランなどにも、耳よりの話ですね。

BGMを変えて、お客の動きを見てみるのも面白い

お店のBGMを変えてみようかという気になったなら、日替わりでテンポやジャンルを変え、お客の入りと売り上げを観察してみてください。自分のお店だけのオリジナルデータが取れて、面白いですよ。思わぬ発見があるかもしれません。

そして、ずば抜けて売り上げが多い日があったなら、その日にかけたBGMのテンポを控えておきましょう。これから店内音楽を選ぶときの指標となります。

参考:『手にとるように社会心理学がわかる本』内藤誼人、かんき出版

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