目標を放り出す「投げやり」な気持ちに対処するテクニック4選

せっかくダイエットを続けてきたのに、ある日を境に爆発的にスイーツを食べてしまった。禁煙していたのに、いきなり吸い始めて禁煙前より吸うようになってしまった。そんな良い習慣を壊す投げやりな心理とその対処法について、まとめました。

  • 習慣を打ち壊す「どうにでもなれ効果」
  • ルールを破った罪悪感が問題
  • リマインドペーパーをつくる
  • 抑制型の目標を変える
  • 悪癖をいい習慣に置き換える
  • ルール違反を習慣持続の糧にする

習慣を打ち壊す「どうにでもなれ効果」

せっかく続けてきた良い習慣が、パタッと止まってしまうことがありませんか? 1ヵ月続いたダイエットで順調に体重が下がっていたのに、コンビニで期間限定のスイーツを買ってしまってから食べるのが止まらなくなってしまい、一気にリバウンドしてしまった。数ヵ月間禁煙が続いていたのに、友人と一緒に飲んでいるときに何気なく勧められたタバコを吸ってから喫煙が始まってしまった。

そんな行動の裏側になるのは、「どうにでもなれ」といった投げやりな感情です。禁止していたスイーツを口にしてしまったら、「もう規制する意味がない」とばかりに誘惑に負けてしまって大量に食べてしまうのは、その典型でしょう。

こうした行動は目標のために節制している場合、誰にでも起こることです。貯金ためにムダ遣いを止めている人であれば、ちょっとした買い物をきっかけに貯金を切り崩してしまうケースがあり、時間が大切だからとゲームを控えている人が何かのきっかけで夜通しプレイしてしまうこともあるでしょう。

この投げやりな感情は、「どうにでもなれ効果」と呼ばれているもので、心理学の研究対象ともなっています。じつはダイエット中にスイーツを食べないという自らのルールを破ってケーキを一つ食べたとしても、それほど体重が変わるわけではありません。その時点からダイエットを始められれば、少しの後退から理想の体型に向かって再び歩むことができるわけです。つまり食べたことが問題ではなく、自分の感情や行動をコントロールできなくなってしまう心理が問題なのです。

ルールを破った罪悪感が問題

「どうにでもなれ効果」は、罪悪感と恥の意識が関係していると心理学では説明されています。ルールを破ってしまった自分が恥ずかしいから、「どうなってもいい」「どうにでもなれ」と思ってしまうわけです。逆に言えば、こうした罪悪感を取り除けば、良い習慣に戻ることが可能になります。

ルイジアナ大学のクレア・アダムスとデューク大学のマーク・リアリーは、「どうにでもなれ効果」にセルコンパッションの技法を使う効果を実験しています。セルフコンパッションとは「自分への慈しみ」のことで、他者を思いやるように、自分自身のことを大切に思うこと。

この実験では、まずダイエットをしている人を集めます、その人達に高カロリーのお菓子を食べてもらい、その後一部の人に「自分に厳しくしないように」といった声かけをします。それからお菓子の試食をしてもらいました。

つまりダイエットを挫折させて上で、1つのグループには「慈しみ」溢れる言葉をかけ、もう一つのグループには何もせずに、自由に食べる量が選べる試食会に参加してもらったわけです。結果、言葉掛けをしてもらったグループは平均28g、何もしなかったグループは平均70gのお菓子を食べていたのです。

私たちはルールを厳格に適応する必要があると感じています。だからこそルールを破った自分は恥ずかしい存在だし、罰を与える必要があると感じてしまうのです。そうした感覚は社会秩序を成り立たせるためには有効かもしれませんが、良い習慣を維持するためにはマイナスなのです。

良い習慣を維持するのに重要なのは、小さなルール違反を取り締まることではなく、ルール違反を認めて、改めて自分のコントロールを取り戻すことです。

では、そのために何をすべきなのかを紹介しましょう。

①リマインドペーパーをつくる

先程も説明したように、なげやりな自分の気持ちを抑えるのに、自分に優しい声掛けをすることは重要です。
ただ、問題は罪悪感に苛まれているときに、自分に優しくできないことでしょう。そこでネガティブな感情にのまれることを前提に、事前に自分への優しい言葉やこれから取るべき行動を、自分に語り掛けるような形式で書いておきましょう。

「いままで頑張ってきたんだから、ルールを破ってしまうときだってあるよ。〇〇(名前)が努力していたことは知っているから。明日から元の習慣に戻れるように、今日は早めに寝よう」

例えば上記のような形の文章をあらかじめ作っておき、自らのルールを破ったときに読めば罪悪感から少し距離を置くことができるでしょう。結果として、ルール違反の後でもセルフコントロールを取り戻しやすくなります。

②抑制型の目標を変える

「どうにでもなれ効果」が起きるのは、何かしら我慢をしていることがあるからです。我慢が積み重なったタイミングで、そのルールを踏み外すと「もうどうにでもなれ」と思ってしまうからです。

そこで元々の目標を抑制型ではないものに変えてみましょう。
例えばダイエットならば、スイーツを食べないようにするのではなく、運動を増やす、健康的な食事を増やすといったものにします。ムダ遣いが問題ならば買い物を止めるのではなく、貯金を殖やすといったことを目標にします。

ポイントは何かを我慢するのではなく、日々効果が積み上がっていく行動に変える事。貯金のように数値化できるものならば、その進捗が励みにもなります。

③悪癖をいい習慣に置き換える

②とやや近い方法ですが、悪癖を我慢するのではなく、別の習慣に替えるといったことも有効です。タバコを吸わないと口寂しいので、キャンディーを舐めるといった方法は有名でしょう。

何かを我慢するより置き換える方が、心理学的に負荷が少なくのです。目標を達成するために邪魔な悪癖があるなら、それを別な行動に変えましょう。

④ルール違反を習慣持続の糧にする

まず、最初に「人は絶対に失敗する」ということを肝に銘じておきましょう。どれだけ完璧な計画をつくっても、すべて実行できるわけではありません。ただその計画に向けて努力し続けることで結果は大きく変わってきます。
だからこそ「もうどうにでもなれ」という気分は、良い習慣を続けるために重要な材料になります。

そこでルールを破ってしまった場合に、なぜ良い習慣を放り出してしまったのかを考えましょう。その引き金(トリガー)が必ずあるはずです。仕事で失敗してムシャクシャしていたときに、コンビニに入ってしまったからスイーツを大量に買ってしまった。疲れているときにPCの電源を入れてしまったから、英語の勉強をしなかった。そんな様々な要因を避けられるように、行動計画を立ててみます。

コンビニがダイエットの邪魔になるなら、コンビニがある道を通らなくすればいいでしょう。PCが英語の勉強の邪魔なら、スイッチを入れるのが面倒くさく感じるようにしておきましょう。コードを引き出しにしまい、その引き出しにカギがかかっているといった状態なら、疲れた体でPCの電源を入れようとは思わないでしょう。

このように対処することを決めていると、「どうにでもなれ」という気持ちがチャンスだと感じるようになります。より習慣を強固にするための機会を得たことになるからです。

今日は投げやりな行動で良い習慣が壊してしまう心理について解説しました。習慣化が苦手だと感じる人は試してみてください。

心のしくみについて興味のある方は、こちらもご覧ください。

監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会

参考:「What the hell effect:What is the WTHE and what are its consequences?」(Wikiversity)/「How The What-The-Hell Effect Impacts Your Willpower」(Paula Davis J.D./Psychology Today)

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