「自制心があれば……」と思ったことは、きっと誰にでもあるでしょう。ただ「根性論で鍛えるのもちょっと……」という気持ちもわかります。そこで科学的に自制心を高めるテクニックを探しました!
- 自制心は鍛えることができる
- 重要なのは自制心の捉え方
- 自制心3つの側面
- 誘惑を減らす小さなルールをつくる
- 運動を習慣化する
- 人間関係を変える
- 自分の信念と行動を結びつける
自制心は鍛えることができる
うさぎ跳びや長距離のランニングで自制心を鍛えたいと思う人は少ないでしょう。ただ、もう少し我慢強ければ、もっと成功しているのでは、と感じることは意外に多いもの。
そこで我慢強くなくてもできる自制心の高め方を、心理学を紐解きながら紹介していこうと思います。
まず最初に知っておきたいのは、自制心は鍛えることができるということ。わずか2週間の訓練で我慢強くなったという研究結果もあるほどです。ただ問題はその方法でしょう。そもそも自制心が弱いからどうにかしたいのに、自制心が強くないと続かないような「訓練」は意味がないからです! そんな訓練に耐えられるなら、自制心について思い悩むこともないでしょう。
むしろ誘惑に弱い自分を心から治したいと感じるほど弱いメンタルの人が、ついつい試したくなるような方法が必要でしょう。
重要なのは自制心の捉え方
カールストン大学のアナマリー・ジェンナラ博士などの研究によれば、自制心の捉え方が我慢強くなるポイントの一つなのだそうです。
では、質問です。
非常に意志力の強い人は、「日々しっかり我慢する」か、「そもそも誘惑が少なくなるような生活を考える」のどちらを選ぶと思いますか?
この質問で「日々しっかり我慢する」と答えた人は要注意です!
というのも、この回答の人は、誘惑に負けないように戦略的に取り組んでいる人より、日々耐えている人の方が高い自制心の持ち主だと思い込んでいる可能性があるからです。そのため自制心を高めようと思ったとき、この手の人は我慢強くなろうとします。つまり美味しそうなハイカロリーの食事を目の前にしても自分は食べないと決めて、パーティーに行くような行動を取ってしまうのです。
一方、自制心を高めるために戦略的な生活の見直しが重要だと思っている人は、ただ根性を鍛えるといったことを避けようとします。
どちらの効果が高いのかは、言うまでもないでしょう。
根性で自制心を鍛えるのは無理だと感じていても、なるべく自制心を使わないように生活を改善することに抵抗を感じる人もいます。「鉄の意志」の持ち主だけが自制心の強い人だと思い込んでいるのかもしれません。しかしムダに自制心を使わない生活スタイルを考え、それを維持するように務めることも、十分に自制的な生活です。
つまり自制心が弱い私たちが最初に肝に銘じておくべきは、自制心を使わないような生活をデザインすることなのです。
自制心3つの側面
さて自制心を高めるための戦略を立てる上で、必要になってくるのが自制心の3つ側面です。通常、私たちは自制心とは我慢できる能力だと漠然と考えています。しかし心理学的な観点からとらえる自制心は、もう少し多面的です。
①誘惑を避けて行動を制御する
これが一般的な自制心のイメージでしょう。目の前の誘惑を避けることができることは、自制心の最も重要な側面だからです。
②未来のために望ましくない行動や衝動に抵抗する
自制心が強い人は、目先の欲望に捕らわれず、未来のために行動を抑えることができます。つまりしっかりと未来を見て動くことができるのです。
③使い過ぎると枯渇する
近年よく知られるようになってきた事実ですが、自制心を使い過ぎると我慢ができなくなってしまいます。例えば昼間は仕事が忙しく我慢の連続だったら、夜は自制心を発揮するのが難しくなります。昼間は我慢できたスイーツも食べてしまうし、朝ならできた資格の勉強も手が付かないのです。
この3つの側面を理解すると、自制心の戦略が豊富になります。
例えば誘惑そのものを避ければ、①の誘惑を避ける行動を強化できるでしょう。また未来の目標を常に確認するようにしたら、②の未来のために動ける自分を強くできるでしょう。さらに③のように使い過ぎて自制心がまったく働かなくなる前に、我慢できる数を減らすといったことも一つの方法でしょう。
では、こうした側面を意識した上で、具体的にはどのように自制心を高めるのかを紹介していきましょう。
①誘惑を減らす小さなルールをつくる
習慣化すれば、自制心が強くなくても理想的な行動が可能になります。例えば大人が歯磨きをするのに、それほど苦痛を感じないのは(歯磨き嫌いの幼児はけっこういますよね!)、すでに習慣化されているからです。
ただ、問題は習慣化が容易ではないことでしょう。例えば勉強を続ける習慣を大人になってから身に付けるのが簡単でないことは、多くの人が知っています。
そこで自制心を補助できるような小さなルールを、いくつもつくっておきましょう。
例えばアリス・ボーイズ博士は、ポテトチップを食べる時に、袋を止める大きなクリップをつかんでいるそうです。するとポテトチップをすべて食べ切ろうと思わなくなるとのこと。
自宅に帰ってからすべき資格の勉強が進まないなら、誘惑の種を出勤前に取り出しにくいようにかくしておくルールを設けましょう。テレビのリモコンなどが手元にないだけで誘惑は減ります。
②運動を習慣化する
「それができないから困る」と言いたくなる気持ちはわかります。しかし、運動をルーチンにすると、さまざまな悪習慣が改善するという研究結果があるので、自制心を高めて生活を改善したいなら運動のルーチン化は重要です。
ポイントは腹筋1回とか、小走りで10メートルといった最低限の目標を掲げて、調子が良い時だけ負荷を増やすこと。そうするといつの間にか日々、50回以上の腹筋をしていたといった結果が出るそうです。
③人間関係を変える
例えば資格の勉強をしたいなら、スクールなどに通って、真剣に勉強している人と友達になりましょう。人は環境によって行動を変えるものです。太っている友人と過ごすと、肥満になる確率が高くなのはよく知られた事象です。ハイカロリーな食事が当たり前の人たちと食事をすると、少し多めに食べてしまうことに抵抗がなくなります。
自分がどんな生活をしたいのかを考え、それを実践している人と一緒にいる時間を長くすれば、自制心を意識することなく生活が改善できるでしょう。これも自制心を使わないような生活をデザインするテクニックなのです。
④自分の信念と行動を結びつける
部屋の整理整頓が行き届いている人のほとんどは、キレイ好きです。では、キレイ好き以外の人が我慢して掃除しているのかというと、必ずしもそうではないでしょう。例えば散らかっていると、探す手間で時間が取られると感じる人や、使いたいモノが見つからないと新しく購入してお金のムダになると感じる人も、しっかり掃除をすることができます。
つまり自制心が必要な行動を、自分の信念と結びつけることができれば、我慢することなく行動できるようになります。どんな信念が自分の行動を促し、自制心が必要な行動とどうやって結びつけられるのかを考えてみましょう。
今日は自制心を高めるテクニックを紹介しました。
心のしくみについて興味のある方は、こちらもご覧ください。
監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会
参考;「Avoid This Mistake When Trying to Be More Disciplined」(Mark Travers Ph.D./Psychology Today)/「How to build and improve your self control」(Julia Yacoob, PhD/wikiHow)/「How to Use “Always Rules” to Reduce Daily Stress」(Alice Boyes Ph.D./Alice Boyes Ph.D.)