手が付けられないリストの溜まった「ToDoリスト」を心理学で改善

ToDoリストを見るたびにウンザリしてしまう人もいるのではないでしょうか? 日々タスクに追われているのに、ずっと消せないタスクやToDoが山のようにあったりするからです。そうした問題を心理学で解決しましょう。

  • 必要なのはToDoリストの使い方
  • ToDoリストの本当の効果を忘れている!?
  • ToDoリスト3つの問題とその対処法
  • どうしても進まないタスクのために

必要なのはToDoリストの使い方

タスクに追われている人は少なくありません。いくつものプロジェクトが同時進行しており、対処しなければいけない雑用もけっこうあります。そんな人にとって、ToDoリストは便利なツールのはずでした。タスクを共有化するアプリも、他のメンバーの進捗の把握ができることで、よりスムーズに仕事がはかどるはずだったのです。

しかし人によっては、もうToDoリストを見るのもイヤだと感じているかもしれません。というのもリストを開くたびに、1ヵ月以上手を付けていないタスクやToDo(期限が定めら得ていないタスク)を目にすることになるからです。何度締切りを設定し直しても、なかなか進まない事実が日々のモチベーションを下げていきます。また長期的には自己肯定感を下げてしまう原因になるかもしれません。

だからといってタスクやToDoを忘れていいわけでもありません。一方で自分を責め続けるようなツールを使い続けていいわけでもないでしょう。必要なのは自分の心に優しいToDoリストの使い方を知り、実践することです。

ToDoリストの本当の効果を忘れている!?

ToDoリストの使い方の改善方法を知る前に、最初に確認しておきたいのがToDoリスト活用の利点です。というのもToDoリストを使い続ける必要があるなら、イヤイヤでなく、そのプラス面も理解しておいた方が心理的にもいいからです。

もう皆さんが忘れかけているかもしれない、ToDoリストのプラス面は以下の通りです。

①計画的に時間を使える
②計画の方向性や目的を把握できる
③タスクの達成感が自信をつちかい、自尊心を高める
④日々の達成感が向上心を刺激する
⑤タスクを外部化することで注意力の低下を防げる

ToDoリストのプラス面を、多くの人は①だけだと思いがちです。しかしタスクを整理することで将来設計ができるようになり、それが自信につながり、向上心を刺激するといったことも重要なポイントなのです。

こうした効果は危機的に状況に陥ったときにも働きます。
宇宙飛行で事故に見舞われ、地球への帰還が危ぶまれた米宇宙船アポロ13号の船長が、タスクリストを活用して地球に戻ってきた話は有名です。酸素と水が不足している宇宙で冷静に行動するためには、ムダのないタスクのリストが絶対に必要だったのです。

このようなプラス面を見直すと、ToDoリストが持つ力を多くの人が十分に引き出していないとわかるでしょう。そして使い方を間違わなければ、ToDoリストでモチベーションをアップすることも可能なのです。

ToDoリスト3つの問題とその対処法

じつはToDoリストに扱いに困っているのは、あなただけではありません。リストアップしたタスクやToDoの41%が、実行されることなくタスクに留まっているというToDoリストに関する調査もあるほどです。

では、どうしてこんな問題が起きてしまうのでしょうか?
米国スタンフォード大学で教鞭を取るダニエル・マルコヴィッツ氏は、ToDoリストの問題点を3つ挙げています。解決法とともに、その問題点を紹介していきましょう。

Ⅰ.多すぎる選択肢の表示
私たちは細かな予定もToDoリストに書き込んでいきます。しかし、その膨れ上がった膨大なリストによって、私たちが動きにくくなっているという問題も起きているようです。

心理学者バリー・シュワルツによれば、選択肢が増えれば増えるほど意思決定や行動が難しくなってしまうそうです。私たちの脳が楽に決定できるのは7つの選択肢までという研究結果もあります。つまり30や40を超えるようなタスクを前にすると、現実逃避を始める可能性が高まってしまうのです。

【対策①】2分以内のタスクを実行する
タスクの数を減らす方法の一つは、すぐにできるタスクをToDoリストに加える前にやってしまうことです。例えば簡単なメールを送るだけなら、リストに加えて選択肢を増やすよりも実行してしまう方が心理的な負担が少なくなります。

【対策②】「時間があれば」と思っている選択肢を別のカテゴリーに
ずっと手を付けていないタスクやToDoの中には、「時間があればやりたい」と思っているものが含まれています。ToDoリストに入れていれば忘れることがない代わりに、目にするたびにモチベーションが下がるといったことが起こりがちです。思い切ってToDoリストから外して、別のリストに加えておくようにしましょう。

【対策③】タスクをまとめる
同じようなタスクやToDoをまとめることで、作業はしやすくなります。大きなタスクの下にサブタスクを置いて、タスクの数を増やさないようにするのも対策の一つになるでしょう。

Ⅱ.簡単なタスクに偏りがちな構造
ToDoリストは、5分で終わるタスクも、2時間かかるタスクも同列に並べられがちです。結果、早くタスクを処理したい人には、短時間で終わるタスクに目を奪われがちです。

また重要だけど難しいタスクやToDoを優先するという思想が、ToDoリストにはありません。そのため同じように並んでいるタスクから、より簡単なものを選んでしまいがちです。
簡単なタスクに手を付けやすい構造を、ToDoリストは持っているといえるでしょう。

【対策①】緊急度と重要度のマトリクスをつくる
縦軸に重要度、横軸に緊急度を置いて「重要で緊急」「重要だけど緊急じゃない」「重要じゃないけれど緊急」「重要じゃないし緊急じゃない」にゾーンを分けて、4分割にタスクやToDoを置いていきます。そして「重要じゃないし緊急じゃない」ゾーンのタスクを削っていきます。さらに「重要だけど緊急じゃない」タスクを、色分けするなどして取りこぼさないようにしましょう。

【対策②】スケジュール帳にタスクの処理時間書き込む
個々のタスクやToDoをToDoリストに書き出すだけではなく、タスクを処理時間とともにスケジュールやアプリにも書き込みましょう。日々の稼働時間をタスクで埋めるようにします。ToDoリストだけでは、完成までの時間がわかりにくいと感じる人には有効な手段でしょう。ただし予定通りに動くことができないケースも少なくないので、時間に余裕を持たせるようにしましょう。

Ⅲ.優先度の固定化
ToDoリストをつくるときに、優先度を固定しがちです。その結果、現状何に手を付けるのかを考えずにタスクを消化することが多くなります。こうした硬直したタスクのへの意識が、仕事の現状に合っていないことも起きてしまうようです。

【対策①】定期的にタスクを見直す
タスクやToDoを見直す時間を定期的に設けましょう。緊急度や重要度を考え、必要ないタスクはどんどん削っていきます。ここまで手を付けなくても、何の問題もなかったという事実を考えてみる必要はあるでしょう。

どうしても進まないタスクのために

やらなければいけないけれど、どうしても気が進まないといったこともあるでしょう。そうしたタスクを処理していくことも、タスクを減らすために重要です。その具体的な対処方法を3つ紹介しておきましょう。

①楽しいことと組み合わせる
好きな音楽を聴きながら作業したり、お気に入りのカフェで仕事をしたりといったことで、モチベーションが上がりにくいタスクを処理していきましょう。

②ご褒美を用意する
タスクを処理した後に特別のご褒美を用意しましょう。スイーツを食べるでもいいですし、舞台や映画を観るのもいいでしょう。ちょっと特別感のあるご褒美の方が、効果が高いでしょう。

③最悪の事態を想定する
そのタスクを処理しなかったことで起きる最悪の事態を考えてみましょう。こんな問題が起きるのであれば、早めに終わらせてしまおうと考えられればOKです。

今日はToDoリストの滞りを解消する方法をまとめました。

心のしくみについて興味のある方は、こちらもご覧ください。

監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会

参考:「To-Do Lists Don’t Work」(Daniel Markovitz/Harvard Business Review)/「How to stick to your to-do list?」(Abhilash Marichi)/「5 Reasons Why Writing Lists Is Good for Your Mental Health」(Sean Grover L.C.S.W./Psychology Today)

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