計画倒れ対策と計画通り実行できないときの落ち込みを心理学で解決!

計画通りに実行できないことはいくらでもあるでしょう。毎日チェックしているToDoリストから、長期計画や貯金の計画まで……。それが憂鬱な気持ちの原因になっている人もいるかもしれません。そんな計画倒れにまつわる問題を心理学で解決しましょう!

  • コントロールの欲求がポイント
  • そもそもコントロールはできない
  • 事前に準備したい計画倒れ防止法4選
  • 計画が崩れて落ち込んでいるときに試したい方法3選

コントロールの欲求がポイント

仕事でも勉強でも、計画を立てることは当たり前になっているかもしれません。長期のプロジェクトであれば、その進捗状況をチェックする必要もあります。一方で、物事が必ずしも計画通りに進むわけではありません。チームの誰かの進捗が遅いこともあれば、依頼のミスが起こってしまっているケースもあるでしょう。あるいは自身のモチベーションの低下で、計画通りに進んでいないことも……。

計画通りに物事が進まないとき、私たちは苛立ちや失望、不安を感じることがあります。ときによっては、感情的な爆発を起こして、計画のすべてを放り投げてしまうケースすらあるほどです。

では、どうして計画通りに進まないことは、私たちをこれほど苛立たせるのでしょうか?

心理学的には、コントロールできないことへの不満や不安だと言われています。意識していないことも多いのですが、私たちは状況や人をコントロールしたいという欲求を持っています。実際、自分の思い通りの環境で、他人が自分の思い通りに動いてくれたら、ストレスの大部分がなくなるでしょう。
そうした欲求を真正面から打ち砕く行為が、計画変更や計画倒れです。計画変更しても大きな問題がないケースでさえ私たちがイラついてしまう背景には、こんな心理があったのです。

そもそもコントロールはできない

では、どうして計画変更が、たびたび起こるのでしょうか? 本当に仕事の遅い部下や突発的な決定を下す上司だけが原因なのでしょうか?

ここで考えてもらいたいのは、私たちがどれぐらい物事をコントロールできるのかです。出勤時間やモチベーションなどは、ある程度コントロールできるかもしれません。しかし自分の事であっても、睡眠の質やストレスレベル、健康状態といったものは、すぐにコントロールできません。
また自分ではコントロールできているつもりでも、日々のパフォーマンスに変化があります。平均以上の日もあれば、以下の日もあるからです。それが当たり前なのです。

もちろん他人をコントロールすることなど不可能です。恐怖や愛情、洗脳などで縛り付けることに成功しても、いつかは行き詰ってしまうことでしょう。

このように実際にコントロールできる範囲が小さいのに、私たちはさまざまなことをコントロールできると思いがちです。そうした思い込みを強化してしまうのが、「確証バイアス」です。これは先入観を補強する情報だけを集める傾向性のこと。
例えば、暇な時期の進行を思い浮かべて「1週間で終わるな」と思い込んでしまったり、前回たまたま手伝ってくれた臨時スタッフに今回もお願いできると考えていたり、集中力が奇跡的に途切れなかったときの自分を想定していたり。その結果、計画通りに実行しようとすると無理だったということも少なくありません。

ToDoリストに関する調査では、リストアップした項目の41%が、決して実行されることのない願望に留まっているという報告もあります。比較的小さなタスクを扱うことの多いToDoリストですら終えることができない。

つまり私たちは、思っているほど計画通りに実行できているわけではありません。

事前に準備したい計画倒れ防止法4選

計画が変わっても大丈夫なように準備しておくのも大切です。ここでは事前に考えておきたい計画倒れ防止の方法と、計画倒れで凹まないための方法を4つ紹介します。

①計画に余裕を持ちサボる日も決めておく
計画をガチガチに詰め込むのは厳禁です。計画の調整時間を組み込んでおき、計画がズレたらその時間で調整するといったことは有効な手段です。ただ、これは余裕を持って計画を立てられるからこそできること。つまり実際に手を付けるのが遅れないように、早いうちから計画を立てる必要があります。

また、モチベ―ションが低い日などをあらかじめ設定しておき、その日は継続的に進めているプロジェクトもサボることで逆に長く継続できることが、ポルトガルのカトリック大学の調査で確認されています。ダイエットや勉強など、日々の計画性が大切なプロジェクトこそ、あえてサボる日を設けてみましょう。

②計画変更を想定して対処法を用意しておく
過去のプロジェクトを思い返してみると、どんなパターンで失敗するのかが予測できるケースが少なくありません。寝不足でのパフォーマンスの低下や難易度の高い仕事でのミスなどなど。こうした計画変更につながる問題への対処法を、用意しておきましょう。

例えば「〇〇さんからの報告が遅れたら、〇日に聞き取り調査をする」「見積もりが終わらなかったら、翌日6時に起きて片づける」といった具合です。計画の変更を想定して対処法まで用意をしていると、心にも余裕が出てくるでしょう。

③期待値を考え直してみる
計画変更の問題は、行動以外の側面があります。じつは計画の変更が心理的な負担にならず、他に迷惑をかけないなら現実的に対処すればいいだけの話です。「計画通りにいかない」と落ち込んだり、ショックを受けるからこそ問題になることを理解しましょう。

そこで計画通りにいかなかったときの心理的な対処法を、計画段階から実行しておきましょう。

計画に込めた期待は、どのようなものかを考えてみましょう。上司へのアピールや別のプロジェクトの影響などなど、その計画に込めた自身の期待を書き出します。そして、その期待が本当に現実的なのか、あるいは本当に必要なのかを考えます。資格取得などのスキルアップの計画では、そもそも必要なかったということもありそうです。
必要がなかったり、期待値が高すぎる場合は計画を見直しましょう。

④計画変更の影響を考える
計画変更が自分にどんな影響を与えるのかを、事前に考えておきましょう。猛烈な怒りに襲われて誰かを怒鳴りつけてしまいそう人や、次の一手が探せずにオロオロしてしまう人もいるでしょう。そうした可能性を想定し、自分に与える影響が計画遂行にマイナスに作用するなら、その対処法を簡単に考えておきましょう。困ったら誰に相談するといった対処法もお勧めです。

計画が崩れて落ち込んでいるときに試したい方法3選

先程も触れた通り、計画変更はいつでも起きる可能性があります。そして計画が崩れたときは、現実に対処して問題解決をはからなくてはいけません。そのときに必要になるのが平常心です。

計画変更によるいら立ちや落ち込みを、最小限に抑える方法を紹介します。

①自己批判はマイナスだと知る
反省をするからこそ頑張れる。それは多くの人が支持することでしょう。しかし反省が自己批判になっているなら要注意です。
というのも過度な自己批判は、モチベーションや自制心の低下、先延ばしの増加と関連することが研究で明らかになっているからです。つまり自己批判が強くなると、計画の遂行に悪い影響が出てしまいます。

これまで計画が狂うたびに、自分を責めていた人は、それがマイナスの行動だったと理解しましょう。

②自分の批評家に名前をつける
自己批判と距離するための方法の一つは、攻撃する批評家に名前を付けることです。例えば「なんで私は計画通りにこなせないんだ」と考え始めたら、「ダース・ベータ―が来た!」と考えればいいのです。自分の内なる批評家に名前を付けるだけで、批判を冷静に受け止められる可能性が高まります。アニメや映画のキャラで名前を付けて、内なる批評家が出現しやすい場所に小さなフィギュアを置いておくと、より自己批判に飲まれにくくなるようです。

③現実的な計画だったか考える
計画の変更は、周りの人にとってどれだけの影響を及ぼしますか? じつは現実的な影響は限定的かもしれません。理想的な計画遂行を夢見ていただけなら、周りはすでに計画破綻を予知していたかもしれないからです。そうだとすれば、計画変更で落ち込んでいるのは自分だけかもしれないのです。

計画変更になったときこそ、実際の現実への影響を考え直してみましょう。計画の立て直しのときは、より現実的な計画を立てることに力を注ぎましょう。

心理学の知識をもっと生活に役立てたい方は、こちらもご覧ください。

監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会

参考:「The Illusion of Control」(Geraldine K. Piorkowski Ph.D./Psychology Today)/「Stop Being So Hard on Yourself」(Melody Wilding/Harvard Business Review」/「How to Cope When Things Don’t Go as Planned」(Sanjana Gupta/Verywell mind)/『倒れない計画術』(DaiGo/河出書房新社)

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