どんな行動が習慣化するの? 行動を習慣化させるメカニズムとポイント

続けたいと思っているのに習慣化しなかったり、止めたいと思っているについつい繰り返してしまったり……。思い通りに習慣化するのは意外に難しいもの。そこで習慣化のメカニズムについて解説しましょう。

  • 「きかっけ」と「報酬」が必要
  • どうして歯が磨きたくなるの?
  • 欲求が習慣をつくる
  • 悪習慣は別の行動に

「きかっけ」と「報酬」が必要

習慣に関する書籍はあふれています。というのも自由に習慣化できれば、苦労なく自分の生活をコントロールできるからです。実際、歯磨きしないときの気持ち悪さを、英会話の勉強をしないときに感じたら、勉強が習慣化しすぐに話せるようになりそうです。

ところが歯磨きは習慣化しているのに、英会話や運動を習慣化することは難しく感じます。それはどうしてでしょうか?

行動が習慣化するための大きなポイントは以下の2つです。

①シンプルでわかりやすいきっかけ
②具体的な報酬

①で、大きな効果をあげているのが、「if-then」ルールと呼ばれているものです。これは何かの行動をきっかけにするというシンプルなものです。例えば入浴の後とか、歯磨きの後といったすでに習慣化されている行動をきっかけにすれば、新しい行動も習慣化しやすいというものです。

例えば運動を習慣化したいのであれば、帰宅後にジョギングをすると決めるだけに習慣化できる可能性は、とても高くなります。それに②の要因を加えて、ジョギングの後に映画やドラマの鑑賞、ビールなどの報酬を組み合わせると、より習慣化する可能性が高まります。

どうして歯が磨きたくなるの?

ただ、上記の2つのポイントだけでは、習慣化は難しいのです。例えば多くの人が習慣化している歯磨きも、食後という「きっかけ」と、磨けば「歯が白くなる」という報酬だけで習慣化しているのではありません。

というのも、いつも磨いているのに、磨かないときの落ち着かない感じは、きっかけや報酬が与えているわけではないからです。じつは歯を磨かないときの気持ち悪さは、ペパーミントなどの香りとともに口がスッキリし感じないために起こっています。

驚く人も多いかもしれませんが、歯を白くするのに、口がスッキリする成分が必要なわけではありません。しかしひんやりとした刺激は、口がよりきれいになったとも感じるので、多くの人が歯磨きにスッキリした刺激を期待するようになったのだそうです。

こうした欲求こそが、習慣化の大きなポイントの一つなのです。

欲求が習慣をつくる

習慣化がうまくいかない裏には、欲求を刺激されないという問題があります。

例えば英会話の勉強が続かない人は、学習することが何らかの欲求につながっていないことが原因です。米国の調査によれば、ダイエット成功者はカロリーを抑えた朝食の後に、着てみたいビキニを想像したり、体重計に乗る時の誇らしい気持ちを味わっていたそうです。

このような欲求が満たされることで、翌日も同じような朝食をとろうと思えるのだそうです。

悪習慣は別の行動に

欲求の話は、悪習慣について考えるとよりわかりやすいでしょう。

アルコール依存症について研究してきたドイツ人の神経学者ウルフ・ミュラーは、次のようにアルコールの欲求を説明しています。

「人は何かを忘れるため、あるいは他の欲求を満たしたいがためにアルコールを摂取しており、そういう安堵感への欲求は身体的快楽への欲求とは脳内のまったく別の場所で生まれているのです」(『習慣の力』チャールズ・ヂュヒッグ/早川書房)

アルコール依存と聞くと、アルコールを摂取し続けないと手が震えるなど身体的な依存を思い浮かべる人も多いと思いますが、ウルフ・ミュラーはお酒を求める根源的な欲求には「安堵感」があると分析しているのです。アルコールがないと我慢できないという症状以前に、現実を忘れて飲むことで安堵したい欲求が満たされないと、悪習慣である飲酒を止めにくくなってしまうということです。

そのためアルコール依存症者の自助グループ「アルコホーリクス・アノニマス」(AA)は、グループでの集まりを重要視しますが、これはお酒を飲む代わりに、仲間と話し合うことでの安堵感を提供しているのだそうです。

つまり習慣という観点で見直せば、「金曜日の夜」という「きっかけ」があり、「安堵感」という「欲求」があったとしても、行動を「お酒」から「集まり」に変えることができるのです。

悪習慣は止めるのではなく、別の行動に替えろと言われるのは、欲求を打ち消すことができない以上、ずっと抑え続けるのが困難だからです。

つまり私たちが何かを習慣化したいときは、「きかっけ」と「報酬」を用意するだけではなく、報酬などに付随した「欲求」を作り出す必要があります。また悪習慣を手放したいときは、どうして悪習慣を続けているのかを考察し、その「欲求」を別の行動で満たせないか考える必要があるのです。

「欲求」が満たされる気持ちよい習慣は続くし、欲求が満たされないツマラナイ習慣は続かない。そうした当たり前のルールから、自分の習慣を見直してみると、もっと自分の習慣をコントロールできるかもしれませんね。

心理学を活用した生活改善に興味のある方は、こちらもご覧ください。

監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会

参考:『習慣の力』(チャールズ・デュヒッグ/早川書房)

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