自分が選んだものしか見えない!3つの認知バイアスの恐ろしさ

インターネットを使えば、いつでもどこでも情報を手に入れられるようになりました。検索サイトで有益な情報を探し出すのが得意な方もいるでしょう。でも、そんな人にこそ気をつけてほしいのが認知バイアスです。

  1. 「世の中、歪んでる!」と思ったら疑おう、敵対的メディア認知
  2. 推測をもって情報を探すときには注意!確証バイアス
  3. 危ない状況でも「大丈夫」で済ませてない?正常性バイアス
  4. 認知バイアスを意識して、自分にとって本当に有益な情報を手に入れよう

「世の中、歪んでる!」と思ったら疑おう、敵対的メディア認知

認知バイアスの一つに、敵対的メディア認知があります。メディアが、自分とは反対側の立場を優遇する方向に偏向していると考える傾向のことです。自分の意見を「少数派だ」と感じている人ほど、この敵対的メディア認知に陥っている可能性があります。

敵対的メディア認知の効果を明らかにした実験として有名なのが、サブラー・シャティーラ事件のニュース映像を使ったものです。サブラー・シャティーラ事件とは、親イスラエル政党などで構成される「レバノン軍団」によって、パレスチナ難民が虐殺された事件のこと。同一のニュース映像を見ているにもかかわらず、親イスラエルの被験者たちは「このメディアはアラブ寄りだ」と評価し、新アラブの被験者たちは「イスラエル寄りだ」と評価しました。

そして実験では、該当する事件についてより詳しい知識を持っている人ほど、敵対的メディア認知の傾向が強いことがわかりました。政治や経済についての本をたくさん読み、テレビや新聞に接する機会多い人ほど「世の中、歪んでる!」と怒るイメージがありませんか。これは、認知の歪みが関係していると考えられます。

推測をもって情報を探すときには注意!確証バイアス

人が「こういうことではないだろうか」と推測をもって情報を探すとき、知らず知らずのうちにその推測を支持するような情報ばかりを集めてしまう傾向があります。この傾向を確証バイアスといい、多かれ少なかれ、誰もが日常的に確証バイアスを使って自分を納得させながら日々を過ごしています。

1982年には、次のような心理実験が行われています。被験者たちに「大きな試合の前日に激しい運動をしたテニス選手は、試合で勝つ傾向が強くなるか」検証するように求めました。検証に必要な情報は、どれでも参照することができます。情報リストの中には、テニス選手が前日に激しい運動をして試合に勝った回数と負けた回数、激しい運動をせずに勝った回数と負けた回数が含まれていました。

どの情報にも公平にアクセスすることができるにもかかわらず、最も頻繁に参照されたのは「前日に激しい運動をして試合に勝った回数」でした。検証しようとしている意見と一致する情報に、最も注目が集まったのです。

また、他の被験者たちには「大きな試合の前日に激しい運動をしたテニス選手は、試合に負ける傾向が強くなるか」と問いました。すると、激しい運動をして負けた回数についての情報に、やはり最も注目が集まりました。

冷静に考えれば、ある傾向が強いかどうかを検証するときには、どんな情報にもまんべんなくアクセスしなければならないはずです。しかし、被験者たちは、自分たちが検証しようとする考えに沿ったデータに強い関心を示しました。これでは、推測される考えが後押しされるばかりで、本当の意味で検証されたかといえばよくわかりません。

この実験は単なる笑い話に終わりません。あなただって、確証バイアスの罠にさらされているのです。最近、「調べてみたら、やっぱりそうだった」という経験があるなら、その推測についてもう一度調べ直してみてください。意外な事実がわかるかもしれませんよ。

危ない状況でも「大丈夫」で済ませてない?正常性バイアス

自分にとって都合の悪い情報にフタをしてしまったり、過小評価してしまったりする傾向のことを「正常性バイアス」といいます。この正常性バイアスも、誰にでもみられる心理的傾向です。

出かけるとき、「なんとなく具合が悪い」と思っていても、「まあ大丈夫だろう」とそのまま出かけ、本当に気分が悪くなって後悔したことはありませんか。おそらく、出かけてからだんだん具合が悪くなったのではなく、出かけるときからかなり具合が悪かったと考えられます。「とはいえ仕事だし」「ドタキャンは悪いから」などと自分の都合を真っ先に優先させた結果、正常性バイアスが働いてしまったのです。

自分の具合程度であれば被害は最小限で済みますが、危険なのが災害や事故などの場面です。例えば火災の可能性のあるタコ足配線を見ないふりしていたり、通学路が細くて危険なのに、「事故なんてめったに起こらないし」と目をつぶってしまっていませんか。

正常性バイアスを防ぐコツは、他人が同じような状況に陥っていたらどう思うかをイメージすることです。「それは当然、危ないだろう」と感じるようなら、きちんと対策を練らなければなりません。根拠のない「大丈夫だろう」は、命取りになるかもしれないのです。

認知バイアスを意識して、自分にとって本当に有益な情報を手に入れよう

3つの心理的バイアスが、自分の認知を歪ませていることがお分かりいただけたでしょうか。自分にとって本当に必要な情報を手に入れるには、上質で確かな検索源はもとより、「自分には認知バイアスが働いているのだ」と自覚することが最も重要です。認知バイアスを意識して、より有意義な人生を!

参考:『その部屋のなかで最も賢い人』(青土社)

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