何となく元気がないと思って、周りを見回してみたらモノがあふれて、部屋がぐちゃぐちゃ。そんな経験はありませんか? じつはモノがあふれて整理できない環境はメンタルに悪影響を及ぼすことが近年の研究でわかってきています。
- すぐに整理を!
- 幸福感が下がる
- 食事が増える
- ストレスが増える
- 他人の気持ちがわかりにくくなる
- モノが捨てられない3つの理由
すぐに整理を!
もし現在、自分でもイヤになるほど部屋がモノに溢れかえっているなら、すぐに整理整頓を始めた方がいいでしょう。というのも近年の研究は、散らかった部屋がメンタルに悪影響を及ぼすことを明らかにしているからです。
では、どんな悪影響があるのか説明していきましょう。
①幸福感が下がる
散らかっている部屋が幸福感を下げると聞いても、「自分にとっては落ち着く環境だから」と答える人もいるでしょう。しかしニューメキシコ大学の研究を知ると、散らかったままでいいとは思えなくなるかもしれません。
その研究によれば、自宅は外界とは違う、安全場所だと思える必要があるそうです。これは人間の祖先である哺乳類がネズミに似た生物だと考えれば、うなずけます。恐竜から逃げ回り、穴に隠れ住んでいた人間の祖先にとって、「自宅」は安全であることが重要な条件だったからです。
人間がヘビを見つける能力に優れているのは、森の中に住んでいた進化の過程では、とても危険だったからとも言われています。こうした「生物としての記憶」を無視できないものなのです。
モノに溢れて乱雑な空間を、人は安全だと認識できず、その結果、幸福感が下がってしまうと、ニューメキシコ大学の研究チームは結論付けています。無意識にそうした感情を持ってしまう可能性が高いので、少し面倒でも部屋を整理整頓した方がいいでしょう。
②食事が増える
レニー・バータリアン氏の研究によれば、キッチンが乱雑だと食欲が増すそうです。コーネル大学の学生は、散らかったキッチンだと通常のキッチンの2倍もクッキーを食べたというのです。
お菓子をついつい食べ過ぎてしまうという悩みを抱えている人は、とにかくキッチンを整理しましょう。自分が環境をコントロールできないと感じると、食へのコントロールも弱くなってしまうようです。
③ストレスが増える
自宅だけではなく、職場が片付いていない人もいるでしょう。サウスカロライナ大学の研究チームによれば、職場が片付いていない場合、ストレスが増加することがわかりました。結果、メンタルヘルスも悪くなる可能性が高いようです。
職場だからと気を抜くことなく、いらないモノはしっかり捨てて、整理された環境で仕事をするようにしましょう。
④他人の気持ちがわかりにくくなる
コーネル大学の研究によれば、背景が乱雑だと、他人の感情表現がわかりにくくなるそうです。背景にある乱雑さが、表情を読み取る能力の邪魔をするのではないかといった分析がなされています。
相手の気持ちが推測できないと、仲違いしてしまう確率も高まるでしょう。相手の気持ちを察するためにも、しっかりと部屋を片付けましょう。
モノが捨てられない3つの理由
部屋などを散らかしてしまう人の中には、モノが捨てられないタイプの人もいるでしょう。
モノが自分の一部だとみなす傾向がある人は、モノをため込む可能性が高いそうです。トロフィーなどが、その代表例でしょう。
不安や寂しさをモノで紛らわすタイプの人も、モノをため込んでしまう可能性があります。失恋してお買い物といった行動を取る人も要注意かもしれません。
モノが自分自身を保護してくれると感じるタイプも、モノをため込みやすいそうです。大きな商談のときに、高級スーツを着ていくといった行為は、その典型でしょう。
どうにもモノが捨てられないのであれば、捨てられない理由を考えてみましょう。「自分の一部」なのか、「寂しさを紛らわせている」か「自分の保護」なのかを把握します。モノが大切なわけではなく、モノを捨てないことで自分のどんな気持ちを癒しているのかがわかると、モノを溜めておきたい衝動が弱まる可能性があります。寂しいならモノをため込むのではなく友人に会ったほうがいい、自分を守りたいならモノに囲まれるのではなく関連知識を学んだ方がいい、といった発想の転換につながるからです。
そしてモノを整理することでメンタルヘルスも良くなっていく可能性が高まります。
今日はモノで溢れている環境が、どれだかマイナスに働くのかをまとめてみました。
人の心のしくみについて興味のある方は、こちらもご覧ください。
監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会
参考:「5 Reasons Why Clutter Disrupts Mental Health」(Susan Krauss Whitbourne Ph.D./Psychology Today)/「人はなぜモノを溜め込むのか: ホーディング傾向尺度の作成と
アニミズムとの関連性の検討」(池内裕美)