心理学が人間関係に活用できることは間違いありません。ただ、どんな場面で、どのように使えばいいのかは、意外に難しい問題かもしれません。そこで『一流の人はなぜモノの言い方にこだわるのか?』から、心理学の活用法を紹介します。
- 嫌いな人と距離を詰める
- 新しい人間関係を築くときに
- 相手から好かれたいなら
嫌いな人と距離を詰める
落ち込んでいるときに、誰かに慰めてほしいと要求が高まるという心理を「マイナスの自尊理論」と呼びます。心理学者のウォルスターが提唱した論理です。この理論は、意外なほど活用の範囲が広いものです。
落ち込んでいる人を慰めるときは、気の利いた言葉はあまり必要ありません。黙って寄り添って話を聴いてあげる方が感謝してもらえるからです。
実際、新聞記者の中には、選挙で落選した議員ほど訪ねるようにしている人もいるそうです。接戦であればあるほど落選のショックは大きいもの。しかも多くの人が当選した人に群がります。そんなときに訪ねてくる記者は強く記憶に残ります。次回の選挙で当選すれば、議員から厚い信頼を得られることでしょう。
また嫌いな人が落ち込んでいるときも、声をかけるチャンスになります。関係改善を狙うなら、落ち込んでいるときの方が効果も高いのです。「それ見たことか」などと思わず、一声かけてみるのもいいかもしれません。
新しい人間関係を築くときに
「アロンソンの不逞の法則」は、一緒にいる人から同じ褒め言葉を聞かされるより、関係の薄い人から褒められる方が喜びも大きいという心理です。
つまり関係性が築けていないときにこそ、さりげなく相手を褒めると効果的というわけです。もちろんおべんちゃらに聞こえないようにする必要はありますが、試してみる価値はあるでしょう。
『一流の人はなぜモノの言い方にこだわるのか?』(齊藤勇 監修/宝島社)には、次のように書かれています。
新しい職場や学校で、人間関係を構築する場合には、積極的に相手をほめ、喜ばせるような言葉をかけていくのである。
人見知りの人にとっては、少しハードルの高い会話のように思えるかもしれませんが、「それはすごですね」といった合いの手をいれるだけでも、効果はあるようです。米国で20世紀に最も貢献した心理学者100人にも選ばれているエリオット・アロンソン教授の理論を信じて、試してみましょう。
相手から好かれたいなら
相手からの好意を深めたいなら、あえて頼みごとをしてみるのも一つの方法でしょう。これは米国の心理学者、ジェッカーとランディの実験で明らかにしています。
頼みごとをすることは、マイナスに取られることも多いでしょう。しかし実験では、実験参加者に払った報酬を返金してほしいというお願いは、返金の金額が大きいほど担当者への好意が強まったのです。
これは「認知的不協和」と呼ばれるものです。
人は矛盾する二つの考えを持ったとき、その矛盾を解消するために、自分の認知を無意識に変えてしまうというもの。
この実験では、「実験に参加したのに報酬がもらえない」という認知と、「お願いをしにきた担当者のことは何とも思っていない」という矛盾に陥った実験参加者が、「担当者のことを気に入っていた」という認知に無意識に変えたというのです。
頼みごとをして感謝されれば、悪い気持ちにはならないでしょう。人間関係を近づけるために、あえて頼みごとをしてみるのも面白いかもしれません。
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参考:『一流の人はなぜモノの言い方にこだわるのか?』(齊藤勇 監修/宝島社)