私たちの「苦しみ」の原因は抵抗にあるといった理論があります。肉体的・精神的に厳しいとき、それに抵抗するから「苦しみ」が生まれるという理屈です。現実を受け入れ、より幸福に過ごすためのヒントをまとめてみました。
- 6つの典型的な抵抗パターン
- 何に抵抗しているのか考える
- 抵抗について書いてみる
- 自分で決める!
ブリティッシュコロンビア大学の研究によれば、きつい運動をしたとき「不快な感情をできるだけ受け入れるようにしてください」とアドバイスしたグループは、そうではないグループよりも55%も辛さが減少したそうです。
「この苦しさに伴う不快感がなくなればいい」と願ったり、「思ったより苦しくない」と自分を偽るより、「この運動による不快感は避けられない」と思うようにした方が「苦しさ」が軽減されるということに、多くの人は驚くことでしょう。というのも苦しい状況に陥れば、ほとんどの人が何らかの抵抗を示すことが一般的だからです。
では、どんな抵抗を示すのでしょうか? 『無(最高の状態)』(鈴木祐/クロスメディア・パブリッシング)は、代表的な抵抗として次のようなものをあげています。
①「怒り狂う」、②「引きこもる」、③「メタに身を置く」、④「見栄を張る」、⑤「頑張り過ぎる」、⑥「刺激に頼る」。
①「怒り狂う」は、よく見る抵抗でしょう。失敗を認められず、周りに当たり散らすといった行動を取る人は少なくないからです。
②「引きこもる」は、外部の関係を立って現実逃避するパターンです。電話を取らず、メールを見ないといった行動も典型例です。
③「メタに身を置く」の「メタ」とは、「超越した」「高次の」といった意味ですが、ここでは第三者的な立ち位置と考えればいいでしょう。自分の失敗なのに人ごとのように反応するケースです。
④「見栄を張る」は、ネガティブな自分を隠すために、お金や権力、成功体験などを誇示する行動です。
⑤「頑張り過ぎる」は、「自分が無価値だ」といった思いから逃れようと、ハードワークするパターンです。いくら頑張っても、充実感を得られない行動パターンです。
⑥「刺激に頼る」の典型例は、お酒に逃げることでしょう。食べ過ぎといったことも、この行動パターンの一つです。
自分の弱さや失敗を、上記のような行動で隠そうとしているなら要注意です。受け入れられないがゆえの行動が、辛さを強めている可能性が高いからです。
何に抵抗しているのか考える
では、上記のような行動をしている場合は、どうしたらいいのでしょうか?
まず、最初にすべきは、何に抵抗しているのかを確かめることです。どのような行動を定期的にしているのかを確認しましょう。例えば、特定の人の電話を避けてしまったり、あるグループで会った時だけ見栄を張ってしまったりといったことはありませんか? 抵抗が習慣化しているケースを特定し、自分が何に抵抗しているのかを考えてみましょう。
自分にとっての不快な現実にたどり着いたら、抵抗をやめて受け入れる努力をしてみてください。例えば、「書類のチェックは得意ではないから苦痛に感じるのは仕方ない」「学歴のコンプレックスがあるから居心地悪いのは当然だ」といった具合です。
ここで注意したいのは、現実を受け入れることが努力を中断することにつながらないということです。現実を受け入れてあきらめるわけではなく、自分の状況を把握し、そこから現実的に対処していけばいいのです。
受け入れる努力が効果を発揮しないように感じたら、受け入れがたい現実を自分の素直な気持ちとともに書き出してみましょう。可視化すると、それほど気にすることかといった感情も湧いてくるかもしれません。
例えば「恥ずかしいからイヤだ」「自分が劣っていると認めるのがイヤだ」「相手から否定されるから会いたくない」といった内容を書き出した場合、「現在の自分が周りの人より劣っていることを認めることに何の問題があるのだろう」と思えれば、ムダな抵抗はなくなります。
抵抗していることのバカらしさに気づければ、現実を受け入れられる可能性は高まります。
自分で決める!
現実を受け入れられない大きな理由の一つに、自分が決断していないケースがあります。「言われたからやっている」という気持ちは、思い通りにならない現実への抵抗につながるからです。
その意味では、上司に命じられた仕事であっても、実際にやると決めたのは自分だという意識を持つと抵抗感が薄れます。
辛いことがまったくない人生など、ほぼないでしょう。だからこそ辛さを倍増させる抵抗を手放すことが重要です。代表的な6つの抵抗に当てはまるようなら、何に抵抗しているのかを考えてみはいいかもしれません。
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監修:一般社団法人 日本産業カウンセラー協会
参考:『無(最高の状態)』(鈴木祐/クロスメディア・パブリッシング)/「Accepting a Reality That Feels Unacceptable」(Nancy Colier LCSW, Rev./Psychology Today)