人が思い通りに動いてくれないこと、ありますよね。どう説得しても反発をくらうだけ、あるいは心に届いてないなと感じるような反応が返ってくるだけ……。そんなときに試したい心理学的方法をまとめました。
- 確かめたいのは「価値観」と「ルール」
- 自己開示が効果的なケースも
- 立場を入れ替えてみる
- 相手のニーズを第一にして練り直す
確かめたいのは「価値観」と「ルール」
素晴らしい商品やサービスを勧めても、まったく相手にされないことがあります。「どうしてこんな美味しい商品なのに売れないんだろう」「こんなにお得なのになぜ手に取らないんだろう」「将来的にプラスになるとわかっているのに、なぜ一歩を踏み出さないんだろう」。
そんな思いを抱いたときに思い出してもらいたいのが、「相手の認識がすべて」という原則です。自分がどれだけ「美味しい」と感じたり、「お得」と感じていても、相手がその思いを共有していなければ、行動に移すことはありません。
例えば「ここで頑張れば出世できるのに」という思いからアドバイスしても、そもそも出世に興味のない人にとっては何の意味もないでしょう。逆に言えば、本気で説得したいなら、まず相手の「認識」を確認する必要があります。そして相手の「認識」を理解したいときに確かめたいのが、「価値観」と「ルール」なのです。
「価値観」とは相手の人が大事にしていることであり、「ルール」は「価値観を」実現するための規則です。そして、その2つを探る質問が、「何が一番大切か」です。
例えば、プロジェクトを一緒に組みたい相手がいるなら、「仕事で一番大切なことは何ですか?」とたずねてみます。「公平さかな」といった答えが返ってきたら、「機会が公平であればいいんですか?」とさらにルールについて深堀りしていきます。すると「いや、機会が公平でも結局は偏っちゃうから、結果的に公平に分配する必要があると思うんだ」といったような答えを引き出せるかもしれません。
もちろん、こんなあっさりと相手の価値観やルールが判明することはマレだと思いますが質問の道筋はこんな感じです。
自己開示が効果的なケースも
相手の価値観やルールをたずねようと思っても、敷居が高いと感じてしまうこともあるでしょう。「ちょっと踏み込み過ぎかも」「唐突過ぎるかも」と感じてしまうことも少なくないからです。そんなときには、自分の価値観やルールを口にしてみましょう。
「私はスタッフの気持ちが仕事で重要だと感じていますが、○○さんが仕事で一番大切にしていることは何ですか?」といった具合です。自分の情報を先に開示すれば、相手も話しやすくなるので、踏み込み過ぎたといった気持ちを抱きにくくなるでしょう。
相手との心理的な距離が遠く、自己開示しても相手の価値観を聞き出しにくいと感じたときは、相手が話したい話題を選んで「どのように」「なぜ」と質問していくのもいいでしょう。
例えば、趣味が釣りならば、「なぜ釣りに夢中になったのですか?」「どうやって釣りの技術を磨いてきたのですか?」といったところから話を始めてみましょう。こうした質問の答えからも、相手にとって大切な価値観やルールを推測することができたりするからです。
立場を入れ替えてみる
相手の価値観をたずねる機会がないときは、相手と役割を交換してみるという方法もあります。実際に2つ椅子を置いて、片方で説得や提案をした後に、もう片方の椅子に座って、相手の立場から自分の説得や提案を考えてみるといった方法も有効でしょう。
相手の立場に立った時、自分の説得や要求はどのように見えるでしょうか? あまり魅力を感じないどころか、邪魔だと感じてしまうケースもあるかもしれません。
もっとざっくばらんな関係なら、実際に相手と立場を入れ替えて、2~3分意見を主張し合うといったことも効果的です。営業と製造の担当者が立場を入れ替えてみる。親と子が立場を入れ替えてみる。夫婦が立場を入れ替えてみる。そうやって相手の意見を自分のこととして発言してみると、互いの立場が一気に理解できたりするものです。
相手のニーズを第一にして練り直す
さて、相手の価値観やルールが理解できたなら、相手のニーズを第一にして提案や説得の内容を練り直してみましょう。
例えば、もっと家事分担を増やしてほしいとパートナーを説得しようとしていたものの、繁忙期は家事について考えられないという相手の気持ちを推測できたのなら、家事そのものを減らしたり外注できる方向で考えてみるのです。安い弁当を検索してみる。掃除の回数を減らしてみる。そうやって相手のニーズをかなえつつ、自分の要求をかなえる道を考えてみはいかがでしょうか?
自分の要求をすべて我慢する必要はありません。しかし相手に聞き入れてもらえないのなら、現実は変わりません。現実をかえるためにも、相手の価値観やルールを把握し、それに沿って説得や提案をすることが重要なのです。
今日は相手を動かしたいときの方法についてまとめてみました。仕事でもプライベートでも活用できる方法です。
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監修:日本産業カウンセラー協会
参考:『質問7つの力』(ドロシー・リーズ/ディスカヴァー・トゥエンティワン)/『世界一クリエイティブな伝え方』(大森健巳/きずな出版)