万引き依存症の治療から学ぶ 悪癖をやめるヒント

これだけは直したいと思っている行動はありますか?週末の深酒や日々の夜更かし、休日のスナック菓子のバカ食いなどなど、依存というほどではないけれど改善したいと思っている行動をやめるヒントをお伝えします。

  1. 万引き依存はストレスへの対処だった
  2. 後悔するような行動の改善のヒントに
  3. 行動を意識化する
  4. トリガーを考えてみる
  5. 欲求を抑える方法

万引き依存はストレスへの対処だった

万引きが依存症だと聞いたことある人は少なくないかもしれません。といっても犯罪行為をやめられないと言われても、と思う人もいるでしょう。しかし『万引き依存症』(イースト・プレス)の著者であり、万引き依存をはじめとする加害行為を繰り返すタイプの依存症の臨床に長年携わってきた斉藤章佳氏は、これらのタイプの依存者には罰を与えても行動は変わらず、

「『盗んでしまう自分』から『盗まない自分』に変えるスキル」

が必要だと説いています。罰や当人の後悔では、依存症は改善しにくいのです。

万引き依存は専門的に言うと、「行為・プロセス依存」に分類されます。これは薬物ではなく、特定の行為によって得られる刺激や安心感にのめり込み、日常生活に問題が生じている依存です。万引きだけではなく、ギャンブルやSNSなどの依存が、ここに分類されます。

そして『万引き依存症』によれば、「行為・プロセス依存に陥る人は、それによってストレスに対処している」ので、当人が万引きした後に、いくら反省しても万引き自体は止まらないというのです。

後悔するような行動の改善のヒントに

こうしたストレス発散のための行動は、万引きなどの反社会的な行動や、日常生活に支障ができるほどの行動以外は問題になりません。むしろ推奨されるたりもするでしょう。しかし依存とまではいかなくても、あとで後悔するような行動があるなら要注意です。

夜中のネットサーフィンをしなければ、こんな眠くはなかったのに……、せっかくの休日をボーっと飽きているはずのゲームでつぶしてしまった……などなど。何となく繰り返している行動が、日常の質を下げていることはよくあることです。ただ、いくら後悔しても行動が変わるわけではありません。

そこで万引き依存症の治療プロセスを応用して、日々の行動を改善するヒントを探ってみましょう。

行動を意識化する

まず万引き依存の場合は、

「品物がタダで手に入るというだけではなく、万引きをしたときに得られる精神的な高揚感、達成感があるので、やめられなくなります」

とのこと。

そうした高揚感や達成感を無意識に求めるようになると、何も考えないままに商品を盗むために手が出るようになるというのです。

じつはよく考えないで何となく始めてしまう行動こそ、改善したい行動の中心です。夜更かしなども、何となく自宅に帰ってテレビを付けていたら時間がたってしまったという感じではないでしょうか。

この「何となく」の行動を意識化するのが、行動改善の第一歩になります。

『万引き依存症』には、次のように書かれています。

「振り返るべきは盗った瞬間ではなく、『どんなときに万引きしていたのか』、『そのときの気持ち』、『実行するまでの過程』

です。『なぜ繰り返す必要があったのか』も重要な視点です。それが再発防止につながります」

トリガーを考えてみる

万引き依存では、実際に行動を起こす前のきっかけとなる「トリガー」があります。このトリガーは内的なもの(思考・感情・記憶など内的要因)と外的なもの(人・場所・物・状況)に分かれます。

これは改善したい行動にも当てはまることがあるでしょう。携帯ゲームなどを例に、少し具体的に考えてみましょう。

人――無理を強いる上司、口うるさい家族、問題を起こす思春期の子ども

場所――自宅のソファ、ベッド、リビングのテーブル、電車

時間――帰宅後、寝る前、昼休み、通勤時間

状況――寝不足である、生活のリズムが乱れている

感情――イライラ、孤独感、怒り、自己否定感

改善したい行動の後ろには、ストレスの原因となるような人がいたり、現実逃避してしまいたくなるような感情があったりすることが少なくありません。そのことを認識するだけでも、改善したい行動の意味づけが変わります。

携帯ゲームが面白くてやめられないのではなく、仕事のことを考えたくないから繰り返しているのだとすれば、その行動自体は前向きなストレス解消法なのかもしれません。ただ生活のリズムが崩れるほど続けてしまうのは問題でしょう。

それなら帰宅後はゲームアプリを開かないようにするなど、トリガーが引かれないように工夫することが重要です。充電の場所に置いて、もっと自分が夢中になれることを始めたり、孤独感があるなら家族と話してみたり、やめたい行動のトリガーを引かない環境を整えることで、次の日の朝の後悔がなくなります。

欲求を抑える方法

それでも欲求が高まってきたときには、どうすればいいでしょうか?

強烈な欲求にも対抗できる方法を、『万引き依存症』は紹介しています。

・輪ゴムで手の甲をはじく

・フリスクなどスーッとする清涼菓子を食べる

・好きな歌手の歌をイヤホンで聴く

・自分の嫌いなアロマ系オイルを嗅ぐ

五感を刺激することで、欲求の多くは収まってくるそうです。

また欲求が起きたときに、その欲求を追い払わず、「あぁ、○○したい自分がいるな」と自分の欲求を積極的に認めて、その強さを自覚する方法もあります。自分の欲求を観察しながら2~3回深呼吸した後、改めて欲求の強さを観察してみると、その強さが小さくなっているのがわかるでしょう。

こうした欲求の観察を繰り返すことで、欲求が起きても行動しなくなるようになるのです。

時間の重要性は誰もが認識しています。しかし、限られた時間をすべて有意義に使うことは、なかなか難しいでしょう。だからこそ、後悔するような時間の使い方を改善できれば、少しだけハッピーになれるのではないでしょうか。

試してみてください。

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