わずらわしい価格交渉から開放されるマジックワードを紹介

価格交渉はかなり面倒な仕事の一つでしょう。少しでも安くしようと粘られると、仕事へのテンションも下がってきます。といって契約間近の顧客を無視するわけにも……。そんな悩みを解消するマジックワードを紹介します。

  1. 心理学的に有名な価格交渉も……
  2. 金額発表前のジョークがポイント
  3. 線を描いただけで影響される

心理学的に有名な価格交渉も……

ビジネスでの価格交渉は、なかなか大変です。

昔のように既得権益などなく、価格と品質で激しい競争をしていることが多いだけに、ビジネスでの利益はギリギリであることも少なくありません。値引きしたら赤字になるという状況の中、値引き交渉を要求されるとストレスもかかります。

また、中には心理学的な手法で値下げ交渉を優位に進めようとする顧客も出てきます。

例えば他人からの譲歩や施しに、お返しをしたくなる心理「返報性の原理」を使う価格交渉などは、よく知られています。

まず、見積もり額の30%の値引きなど、思い切った値下げを提示されます。「さすがにそれは」と断ると、では15%、10%と譲歩をしてくのです。相手が譲歩しているのに、こちらは断っているばかり。そんな気持ちから値下げを承諾したら、相手の交渉術にはまったことになります。

考えてみれば、相手は最初に過大な値下げを要求して、少しずつ値引き幅を下げていっただけ。何の譲歩もしていません。

返報性の原理を知っていれば、このようなテクニックをかわすことができるでしょう。しかし何度も譲歩をすることがこの交渉術なので、ある種の茶番に付き合い続ける必要は出てきます。

こんな面倒な駆け引きなどを経ないで、できれば見積もりを提示する前に、相手に値下げ交渉する気をなくさせたいと思う人がいるかもしれません。そんな魔法のような手段をアリゾナ州立大学の心理学とマーケティングの名誉教授であるロバート・チャルディーニは教えています。

金額発表前のジョークがポイント

トップクラスの成績を誇る営業を調査したロバート・チャルディーニ名誉教授は、

「説得の達人を達人たらしめるのは、下準備、すなわち受け手がメッセージに出会う前から、それを受け入れる気になるようにする行為なのです」

と『プリ・スエージョン 影響力と説得のための革命的瞬間』(誠信書房)に書いています。

本書によれば、7500ドルのコンサルティングのプレゼンで、金額を発表する直前に「このサービスで100万ドルをいただくわけにはまいりません」とジョークを振るだけで、顧客からの値下げ交渉がいっさいなくなったというのです。

ジョーク1つで思うかもしれませんが、同様の心理については、いくつも実験が行われています。

例えば夕食に支払ってもいい金額をたずねるとき、設定となる店の名前が「スタジオ97」だと「スタジオ17」より高くなるという実験結果が出ているのです。

作業効率を図る実験として、自分の作業の結果を予測させたところ、「実験番号27」の方が「実験番号9」よりも予想値が高くなったそうです(『プリ・スエージョン 影響力と説得のための革命的瞬間』 誠信書房)。

どうやら人は関係ない数字であっても、その数値の大きさに影響を受けてしまうようなのです。

線を描いただけで影響される

提示した数字に影響される心理現象として有名なのは、アンカリング効果でしょう。値引き前の価格に赤線が引かれ、安い値段が書かれていると、それが定価だったとしても安い商品と思ってしまうといった心理効果です。

ただアンカリング効果は、いろんなところで応用されており、本当に安いのかと疑う人も出ています。しかしロバート・チャルディーニ名誉教授が説く「下準備」はメッセージ(見積額など)に出会う前の影響なので、アンカリングのように分かりやすく誘導されたわけではありません。

さらに不思議なことに、心理実験で短い線3本を描かせたグループと長い線3本を描かせたグループにミシシッピ川の全長を予想させたところ、長い線を描いたグループの数値が大きかったというのです。

数字だけではなく大きさを脳がイメージすると、それによって感覚が変わってくることは、覚えておきたい知識です。もちろんこうした「下準備」が人の行動を左右するわけではないかもしれません。しかし、それなりの影響を及ぼすことが心理実験でも確かめられており、それが実際にビジネスの現場で使われていることは知っておきましょう。

まず、「このサービスで100万ドルをいただくわけにはまいりません」というアメリカンジョークを、日本風にアレンジするところから始めてはいかがですか?

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