ゴーン前会長と渡辺直美・横澤夏子の「変装」は どちらもバレることを想定していた!?

3月6日・7日と2つの変装が注目されました。東京拘置所から出てくるカルロス・ゴーン日産自動車前会長と、芸能人の渡辺直美さんと横澤夏子さんのディズニーランドでの写真です。3人の変装について考えてみました。

  1. 耳目を集めた2つの「変装」
  2. ディズニーの定番「おそろいコーデ」
  3. ゴーン前会長、反射材付きベストまで着用
  4. ゴーン前会長も「変装」を楽しんでいた!?

耳目を集めた2つの「変装」

たまたま起こった2つの変装は、どちらも大きな注目を集めました。カルロス・ゴーン前会長の変装は世界各国で報道され、その変装について新聞社が記事を掲載したほど。

一方、横澤夏子さんが渡辺直美さんと一緒にインスタグラムにアップした写真は、「変装のくせが強い」というフレーズとともにヤフー記事の「写真アクセスランキング (エンタメ)」 トップになりました。

さて、まずは横澤夏子さんと渡辺直美さんの写真から。

二人はディズニーの定番である「おそろいコーデ」で決めています。ミッキーの顔が大きく描かれたトップスに、トイ・ストーリーのレックスのかぶり物。さらにマスクとサングラスで、顔がわからないように「変装」していました。

しかし当人たちも「変装」に成功したとは思っていなかったようで、「変装の度が超えちゃってるよー」「逆に変な人って思われてよく見られたよー」「すぐ直美さんバレてたよー」と、横澤さんはハッシュタグを添えました。

つまり、これは芸能人と気付かれないための「変装」ではなかったのでしょう。

ディズニーの定番「おそろいコーデ」

ディズニーランドに行くとき、グループ全員同じような格好で楽しむ「おそろいコーデ」は、もはや定番となっています。もともとディズニーランドは、園内で買ったキャラクターのかぶり物を身に付けていても違和感のない場所として知られていました。

そこに2012年、中学生や高校生ではない集団が制服を着てディズニーランドを訪れる「制服ディズニー」が流行。2017年には体操着を着て入園する「体操着ディズニー」なるものも流行ったのです。

この「体操着ディズニー」はインスタグラムとセットになることが多く、ネタっぽさを全面に押し出した点が人気となったようです。

こうしたディズニーランドの独特な服装について、心理学的にはどのように解釈できるのでしょうか?

カーニバルや結婚式などの晴れ着について、北星学園大学の大坊郁夫教授は、「連続した日常を区切ることであり、空間や時間を超越したいとの期待であり、日々の生活での負のストレス発散の効用もある」と書いています。これはディズニーランドの独特な服装にも当てはまるものでしょう。

また、ファッション心理学を専門とする文化学園大学の杉田秀二郎教授は、集団で同じような恰好をすることで、団結感のようなものも生まれるといった効果も説明しています。

これも「おそろいコーデ」の効用として納得できる説明です。

じつは横澤夏子さんと渡辺直美さんのコーデは、日常ではない空間にいることをアピールするディズニーランドのコーデの原則をしっかり踏まえたものとなっています。

そのうえで、もともと非日常である「ハレ」の世界に住む芸能人が、異世界のディズニーランドに行ったらどうなるのかという世界観をも表しているのです。

ゴーン前会長、反射材付きベストまで着用

では、ゴーン前会長の変装は、どのように解釈すべきでしょうか?

東京拘置所から出てくるゴーン会長の格好は、青い帽子にオレンジ色の反射材付きベストを身に付け、マスクもしていました。ただゴーン前会長と一緒に拘置所の職員が10人ほど出てきたので、いっせいに注目を浴び、変装は早々に見破られてしまいました。

後日、この変装を提案した弁護士が、「すべて私が計画して実行した。彼が生涯をかけて築き上げてきた名声に泥を塗った」と自身のブログで謝罪。この変装が保釈後の住居をメディアにさらされないためだった、と明らかにしました。

確かにわざわざゴーン前会長を軽ワゴン車に乗せるなど、偽装工作は凝っていました。

ゴーン前会長も「変装」を楽しんでいた!?

ただゴーン氏自身が、この変装が一切報じられないと考えていたかどうかは疑問です。東京拘置所前に待機する数多くの記者・カメラマンは、たとえ10人もの職員に囲まれておらず、ゴーン前会長だとわからなくても映像だけは撮っていたでしょう。つまりマスコミから車を追いかけられる事態にはならなくても、変装した姿は後日世間に知られることになったわけです。

その服装との当人の生活とのギャップが、世間では衝撃を持って報じられることは、ゴーン前会長もわかっていたのではないでしょうか。実際、AFP通信は「世界中をプライベートジェットで飛び回り、フランスのベルサイユ宮殿で豪華なパーティーを開いた男と、これ以上異なる格好はなかった」と報じました。

ところがゴーン前会長は、この変装を面白がったと『朝日新聞』は伝えているのです。プライベートジェットに乗ってきた自分が軽ワゴン車で移動する「不自然さ」に楽しさを感じたのでしょう。

この「変装」には、ゴーン前会長にとって身元を隠す以外の意味もあったのではないでしょうか。検察の一部から「ふざけている」という声が出たと報じられたのも、ゴーン前会長が「変装」を楽しんだことへの怒りとも受け取れます。

渡辺直美さん・横澤夏子さんとゴーン前会長の服装は、どちらも「変装」と報じられました。しかしどちらも変装がバレることを容認していたように感じます。

先述の大坊教授は、衣服による「装いの効用」について、「社会的に適応するため」と論じています。渡辺直美さん・横澤夏子さんはディズニーランドと違う環境と芸能界にしっかり適応し、ゴーン前社長は司法で一緒に闘うグループに適応したとも言えそうです。

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