「主体性がない」といった批判はビジネスの現場でも耳にすることが少なくありません。でも、本当にビジネスに主体性は必要なのでしょうか? ビジネスで必要な主体性について考えてみました。
- 自身の主体性を心理テストで考える
- 主体性がない人は声や表情のコントロールも巧み
- 行動に合わせて本当の気持ちを忘れてしまうタイプも
- 「主体性がない」原因は?
- セルフモニタリング能力を測ってみよう
自身の主体性を心理テストで考える
主体性のある人は、他人に導かれるのではなく、自分の考えに従って行動する人のことです。では、自分のやりたいように仕事を進めるのが主体性のある人の仕事ぶりでしょうか?
実際に空気の読めないタイプの人が、自分の思い通りに仕事を進めたら、さまざまなところから批判の声があがったりするのではないでしょうか。ビジネスでは言葉にならない周りの要求を感じ取り、それを仕事に落とし込む能力が求められることが多いのです。
いわゆる「主体性」が重要になるのは、その先の話となります。
主体性がない人は声や表情のコントロールも巧み
空気を読んでその場にピッタリの意見や感情を出せるように、自分を管理することを心理学では「セルフモニタリング」と呼んでいます。
心理学者スナイダーは、セルフモニタリング能力が高い人30人と低い人23人に、喜び・悲しみ・驚き・嫌悪・恐れ・罪悪感・悔恨の7種類の感情をこめて読んでもらいました。その後、別に選ばれたセルフモニタリング能力の高い人と低い人に、先の音声記録と顔写真を渡して、どんな感情を表現したのか当てさせる実験をしました。
結果、セルフモニタリング能力が高い人は、他人の表情や声色から感情を識別する能力が高いだけではなく、自分の声色や表情のコントロールも巧みだったことがわかったのです。
さらに別の実験では、セルフモニタリング能力が高い人は、他人の表情などに敏感で、新しい環境でも何が適切なのかをすぐに見つけ出し、自分の行動の手がかりとして使うことがわかったのです。
一方、セルフモニタリング能力が低い人は、他人の表情にも注意を払わず、周りの状況に関係なく感情や行動を表現してしまう傾向があるとわかりました。
行動に合わせて本当の気持ちを忘れてしまうタイプも
セルフモニタリングの研究では、少し不思議な実験結果も報告されています。
セルフモニタリング能力が高い人は、いつもと違う主張の文章を書かせても、自分の信条は変化しないことがわかっています。ところがセルフモニタリング能力が低い人は、もともとあった考え方を変えて強制的に書かされた文章に自分の主張を合わせてしまうのです。
これはセルフモニタリング能力が低い人は、気持ちや行動の一貫性を重視するため、行動と本来の気持ちに矛盾が生じると、行動に合わせて気持ちを変えてしまうからだと説明されています。
一方、セルフモニタリング能力が高い人は、態度を変えることに慣れているため、本来の意見に影響はでないというわけです。
「主体性がない」原因は?
空気を読んで臨機応変に対応するものの、自分の大切にしている意見そのものは持ち続ける。そうしたことがビジネスでは役立つのではないでしょうか。
ただ、セルフモニタリング能力が高い人が空気を読み過ぎると、主張が首尾一貫しなくなり、主体性がないという批判を浴びることになります。
一方、セルフモニタリング能力が低い人は、態度は一貫しているので、その部分での信頼度は高まります。
しかし会社などで求められる「主体性」は、先にも示した通り十分に空気を読んだ上での主体性です。つまりセルフモニタリング能力の高い人が、会社などの組織にピッタリの「主体性」に調整して使う必要があります。そして、もともと声や表情のコントロールに長けたセルフモニタリング能力の高い人なら、組織に合う「主体性」を演出することも可能です。
主体性のなさを嘆いている方がいるなら、その原因にはセルフモニタリング能力の高さがある可能性があります。どこまで主体性を発揮すべきなのかを考えて、小さな一歩を踏み出すことで評価は一変するかもしれません。
セルフモニタリング能力を測ってみよう
セルフモニタリング能力を測れる心理テストを用意しました。25問とやや長いのですが、自分のセルフモニタリング能力を測定してみましょう。
まず、自身の主体性について心理テストをしてみましょう!
【心理テスト】
自分に当てはまるものに〇、当てはまらないものに×をつけてください。
1.他人の振る舞いをまねるのは難しい。
2.わたしの行動は、たいがい本当の感情や態度や信念を表している。
3.パーティーや集会で、人の気に入りそうなことをしたり言ったりしようとは思わない。
4.わたしは自分が信じている考えしか主張しない。
5.ほとんどなにも知らないような話題についてもその場で即席の話をすることができる。
6.わたしは自分が人を楽しませたり感動させるためにショーを演じていると思うことがある。
7.社会的な場面でどう振る舞ったらいいかわからない時には、人の振る舞いを参考にする。
8.わたしはきっと良い俳優になれるだろう。
9.映画や本や音楽を選ぶのに友人のアドバイスを必要とすることはほとんどない。
10.わたしは実際に感じている以上に強い感情を抱いているように人に見えることが時々ある。
11.喜劇を見る時、1人でいるときより人と一緒に居る時の方がよく笑う。
12.集まりの中で自分が注目の的になることはほとんどない。
13.場面が違い、人が違うとわたしは全く別人のように振る舞うことがよくある。
14.人に好かれるようにするのは得意ではない。
15.たとえおもしろくなくても、楽しいふりをすることがよくある。
16.わたしは必ずしも常に見たままの人間であるとは限らない。
17.誰か他人を喜ばせたり、他人の歓心を買うために自分の意見ややり方を曲げるつもりはない。
18.わたしは自分を芸人だと思っている。
19.仲よくしたり、好かれたりするために、他の人が自分に望んでいることをするほうだ。
20.ジェスチャーゲームや即興芝居のような遊びは全く得意ではない。
21.いろんな人、いろんな場面に合うように自分の行動を変えるのに苦労する。
22.パーティーでは、自分の冗談や話は黙って放っておく。
23.人の中にいるときまりが悪くて、本来の自分を出すことができない。
24.(もし正当な理由があれば)人の目を見ながら、真顔で嘘をつくことができる。
25.本当は嫌いな人でも仲良くしてだますことができる。
結果
以下の答えと同じだったら、1問1点で点数を合計してください。
1× 2× 3× 4× 5〇
6○ 7〇 8〇 9× 10〇
11〇 12× 13〇 14× 15〇
16〇 17× 18〇 19〇 20×
21× 22× 23× 24〇 25〇
15点以上が「セルフモニタリング」能力が高い人
8点以下は「セルフモニタリング」能力の低い人 です。
今後のビジネスの参考にしてみてください。
参考:
『対人社会心理学重要研究集3』(誠信書房)
「意に反した行動をした後の態度及び感情状態の変化――セルフモニタリングとの関係」(同志社大学 水野邦夫)