ダイエットや資格試験の勉強など、さまざまな場面で自分をしっかりコントロールできたらと思うことも少なくないでしょう。成功を引き寄せる「自己制御」について、心理学の観点から考えてみました。
- セルフ・コントロールが成功を引き寄せる
- 自己主張できることも重要
- 自己制御を発揮するための4つのポイント
セルフ・コントロールが成功を引き寄せる
目標を立て、計画表も作ったのに三日坊主。そんな経験は誰にでもあることでしょう。トップアスリートがよく言うように、結局のところ「敵は自分」なのです。努力し続けることができれば、大概の扉は開けることができるのですから。
自己制御の実験として有名なのが、心理学者のウォルター・ミシェルらが実施した「マシュマロ実験」でしょう。実験では、4歳の子どもにマシュマロと呼び鈴を置きます。そして呼び鈴を鳴らせば大人が部屋にすぐ戻ってきてマシュマロを1つ渡すが、呼び鈴を鳴らさないで大人が部屋に戻るまで我慢できたらマシュマロを2つ食べることができると説明するのです。
そして12年後にこの実験に参加した子どもを調査してみると、呼び鈴を鳴らさなかった子どもはSAT(大学進学適性試験)での得点が高い傾向にあったそうです。
もちろん成績が優秀であることが、必ずしも幸福に繋がるわけではありません。ただ目標達成や課題の遂行に、自己制御が影響しているとはいえそうです。
自己主張できることも重要
自己制御については、発達心理学の領域でも研究されてきました。常磐大学の大内晶子准教授は自己制御を「自己主張」「自己抑制」「注意の移行(例:何かに夢中になっていても名前をよべばすぐに反応できる)」「注意の焦点化(話を最後まできちんと聞いていることができる)」という4つの側面からとらえました。そして
「望ましい社会的スキルの獲得は、自己制御の4つの側面がすべて高いことと関連することを明らか」
にしたのです。
ここで重要なのは、「自己主張」も重要な役割を果たしていることです。「自己制御」と聞くとただ我慢するだけのように感じますが、じつは主張すべきことをきちんと言うことも「自己制御」には重要なのだそうです。
鎌倉女子大学の佐藤淑子教授は「大学生の自己主張と自己の発達」という論文で、自己主張の重要性について次のように書いています。
「人と違う自分の考えを表現すること、自尊心を守ること、人との間に適切な心理的距離を持ち自分らしさを大切にすることと自己主張の発達は深く関連している」
この言葉の中に自尊心など個人の幸福感とも関連のありそうな項目が並んでいるのがわかるのではないでしょうか。自己制御しながらも自分を心理的に削らないで生きていくためのポイントの一つは、しっかりとした自己主張だとも言えそうです。
自己制御を発揮するための4つのポイント
では、自己制御を発揮するためには、どうしたらいいのでしょうか?
まず、セルフ・コントロールで重要なのは、自分を制御できる範囲は決められていて、制御し過ぎると合理的な判断ができなくなってしまうことです。つまりダイエットのために、職場やコンビニで甘いものを何度も我慢してしまうと、自宅で目に入ったお菓子の誘惑には負けてしまうというわけです。つまりダイエットをしたいなら、まず目に付くところにお菓子を置かないようにして、セルフ・コントロールをする頻度を下げていく必要があるのです。
そうしたセルフ・コントロールの原則をわかった上で、さらに何をすれば自分を抑制できるのかを「セルフ・コントロールに影響を与える先行要因の整理」(金子充 )著という論文から具体的な対策を書き出してみましょう。
①ポジティブな気分でいる
ネガティブな気分の人よりも、ポジティブな人の方が自分を向上させる目標を受け入れて、セルフ・コントロールできることがわかっています。しかもポジティブな気分の人は、目標を達成することで、さらにセルフ・コントロールを高めることも報告されています。
つまり、恋人に会ったり、趣味に没頭したりとポジティブな気分に自分を誘導してから、小さな成功体験を積んでセルフ・コントロールを高めていけばいいのです。例えば好きな映画を映画館で見た後に、すぐに喫茶店に入って30分間、資格の勉強をするといった方法は有効かもしれません。
②自信や自尊感情を高める
自分を認めることができると、セルフ・コントロールに使うエネルギーがなくなってきても、自分を制御できることがわかっています。ダイエットをしているのに夜になるとついつい食べてしまうとういった人は、セルフ・コントロールに使うエネルギーが不足しても合理的な判断を下せるように、自尊感情を高める行動を夕方に入れておきましょう。
退社前には自信のある仕事を必ずやるようにするといったことも、ダイエットを続けるのに有効なのかもしれません。
③「できない」ではなく「しない」と考える
セルフ・コントロールの課題を必ず「しない」と考えるようにしましょう。「お菓子が食べられない」ではなく「食べない」のであり、資格の勉強の邪魔になるネットサーフィンも「できない」ではなく「しない」と考えるのです。
これは考えるだけではなく、言葉にするときも気をつけてみてください。
「なんか甘いもの食べる?」と友達からきかれたとき、「今、ダイエット中だから食べられないんだー」は厳禁です!
④フェイスブックの「いいね」を気にしない
フェイスブックでポジティブなフィードバックをもらうと、セルフ・コントロール能力が低下するという実験をWilcoxとStephenが発表しています。これはSNSのフィードバックがモチベーションを奪うためだと説明されています。「いいね」をもらうことで、現実で努力をする気がなくなってしまうとのことです。
SNSにのめり込み過ぎると、セルフ・コントロールをしにくくなることは覚えておきたいですね。