部下に注意しなければいけないことありますよね。ただ、これが本当に難しい。「上から目線」に敏感な若い部下も多いだけに、どんな風に注意すべきなのかを迷ってしまうことありませんか。そこで部下に注意する方法について紹介していきます。
- ポジションに敏感な若者
- コンプレックスがつくる「上から目線」
- 「嫌われたくない」が危険
- 活用したい2つの枕詞
ポジションに敏感な若者
上司が部下を叱りにくくなっているようです。名城大学大学院の元教授である榎本博明氏は、自身が実施したアンケート調査を基に、「年長者からアドバイスされて、鬱陶しいと思うことがある」と回答した人が、20代では3割近くにもなったと書いています。また、「他人に批判されると、それが当たっていてもいなくても無性に腹が立つ」と回答した者も、20代では45%もいたというのです。
つまり内容にかかわりなく、アドバイスや注意に腹を立ててしまう20代がけっこういるということでしょう。「だからなんだ」と上司も言えればいいのですが、パワハラが問題になる状況もあり、気にしてしまう人も少なくないでしょう。また人出不足が問題になっている中で、部下が辞めてしまうことも会社として大きなマイナスになるケースもあります。
もちろんアドバイスや注意などを極力避けるという方法もありますが、仕事がなくなってしまうほどのミスや安全にかかわることは、しっかりと部下に伝える必要があるでしょう。
コンプレックスがつくる「上から目線」
近年、多くの人が気にしているものに「上から目線」があります。とりたてて威張っているような言い方でなくとも、「上から目線だよね」と評されることも。
また相手より自分が上だとアピールする「マウンティング」という言葉もよく聞くようになりました。ネットなど調べると、「旦那さん、ゆるキャラみたいで癒されそうだね」といったセリフなどもマウンティングとされるようです。というのも、この「ゆるキャラ」という言葉に、男性としての魅力への疑問が含まれているからだとか……。
こうしたマウンティングは、言葉に潜む上下関係に鈍感な人相手だとまったく効果を発揮しません。逆に言えば、どの立ち位置から語っているのかに、若い人が敏感になっているということでしょう。こうした文化背景の中では、立場が上である上司からのアドバイスや注意でも腹が立ってしまうのかもしれません。
とはいえ部下が敏感なのではなく、多くの人を不愉快にするような「上から目線」の人がいることも事実です。
・横柄な態度を取る
・威張る
・自慢話をする
こんな態度を取ってしまう方は、劣等感から自分のポジションを確認したいという欲求の強いタイプの可能性があります。部下へのアドバイスの仕方を考える前に、自身の態度を改めた方がいいでしょう。
榎本博明氏は『「上から目線」の構造』(日本経済新聞出版社)という本で、こうした態度を取ってしまう心理を次のように書いています。
自分は上司としての権威がないかもしれない。部下に軽んじられているのではないか。そういった自信のなさや不安の強い目で見ると、部下のちょっとした言動が自分をバカにしたもののように見えてしまう。そこで激怒したり過激な反応をする。
こうした言動は、結果的に「上司としての権威」を削っていくことになるので要注意でしょう。
「嫌われたくない」が危険
さて、日ごろから上から目線でもなく、部下への注意が苦手な上司は、どんな心構えが必要なのでしょうか?
精神科医の水島広子氏は、
一般に、嫌われたくないと思えば思うほど「嫌な上司」になります。自己正当化が増え、聞いているだけで不愉快になるからです。
と書いています。
嫌われたくないという「怖れ」は、「自分は嫌な上司ではない」という言い訳をアドバイスや注意に加えてしまいがちです。たんに改善すべき点を伝えればいいのに、部下からすると面倒な言い回しになってしまうケースが多いのだそうです。
また水島氏によれば、部下の間違いを指摘したとき部下が顔をしかめるのは、緊張しつつもしっかり聴こうと身がまえた結果だったケースも多く、必ずしも上司を嫌っているわけではないとのこと。こうした態度を敏感に察知して自分に関連付けたため、かえって注意やアドバイスの印象が悪くなってしまっているというわけです。
自身がどう見られているのかを脇におき、改善する事実だけを伝えることが、ポジショニングに敏感な部下への一言の基礎になります。
活用したい2つの枕詞
ただ、センシティブな部下を持った場合は、改善点を伝えるだけでは、部下のプライドを崩してしまうケースがあります。そんなときは、榎本博明氏が推奨する次の2つの枕詞を活用しましょう。
「自分も最初の頃はそうだったのだけど~」
「みんな慣れないうちはよくやるのだが~」
部下の気持ちをフォローする使いやすい言い回しです。
また、指示や命令をする際に、部下の意見も同時に聴くといった方法もあります。部下の立場に理解を示すことで、部下も嫌な気持ちになることなく軌道修正ができます。こちらはやや難しい面もありますが、訓練すれば効果は非常に高いものです。
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参考:『「上から目線」の構造』(榎本博明 著/日本経済新聞出版社)/『部下をもつ人の職場の人間関係』(水島広子 著/ダイヤモンド社)/「20代部下の半数が注意に逆ギレ!「上から目線」過敏時代の上司の心得」(榎本博明 著/DIAMOND online)