ビジネスにおけるコミュニケーション能力の重要性は、いろんなところで強調されています。一方でコミュニケーションに自信がある人が多いわけでもないでしょう。そこで苦手だと感じる人が、コミュニケーション能力をアップする方法を調べてみました。
- 企業がコミュニケーション能力を求めている
- 6つの因子とは
- 話下手でもコミュニケーション能力がアップするポイント
企業がコミュニケーション能力を求めている
知っている人も多いと思いますが、近年、コミュニケーション能力はとても重要視されています。ビジネスの分野だけではなく、研究の分野でも専門家同士がコラボレートするためのコミュニケーション能力が必要だという話を耳にします。
一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)が発表した「2018年度新卒採用に関するアンケート調査結果」によれば、企業が採用に当たって重視したポイントは以下の通りです。
1位:コミュニケーション能力(82.4%)
2位:主体性(64.3%)
3位:チャレンジ精神(48.9%)
4位:協調性(47.0%)
5位:誠実性(43.4%)
コミュニケーション能力は断トツの1位です。
ただコミュニケーション能力に不安を持っている人も少なくないでしょう。特に話下手だったり、内気な人などはコミュニケーションに自信を持てないケースもあるでしょう。
ところで、コミュニケ―ション能力とは、どのような基準ではかるもので、またコミュニケーションに消極的な人はその能力を高めることができないのでしょうか?心理学博士の榎本博明氏の著作から内気な人のコミュニケーション能力の開発法について考えてみました。
6つの因子とは
ビジネス現場において、場を盛り上げることができる人をコミュニケーション能力が高いと考えることは少ないでしょう。確かに座持ちのするタイプは、宴会などは大きな力を発揮するかもしれません。しかし仕事上の付き合いでは、必ずしも有効とは限らないからです。
では、そもそもコミュニケーション能力が高いとは、どういうことなのでしょうか?榎本氏は、コミュニケーション能力を分析するツールとして、6つの因子を発表していますので、紹介していきましょう。
①社交性
慣れない相手に対しても気後れせず、場にふさわしい会話ができる性質
②自己開示性
自己防衛的に身構えず、率直に自分をさらけ出す性質
③自己主張力
自分の考えを理路整然と表現し、相手に説得的に働きかけることできる性質
④感情表現力
自分の気持ちをうまく表現し、相手の気持ちに訴えることができる性質
⑤他者理解力
周囲の人に関心をもち、相手の気持ちが考えを汲み取ることができる性質
⑥傾聴性
相手の言葉にじっくり耳を傾け、相手の自己開示を引き出す性質
こうやって並べると意外だと思うようなポイントもあると感じるかもしれませんね。
上記の6つの因子を、話下手の人の能力アップといった観点から説明していきましょう。
「① 社交性」については、雑談なども含まれるため、話下手の人が苦手と感じる大きなポイントの一つでしょう。しかし覚えておいてほしいのは、6つの因子の1つでしかないということです。
最近「雑談力」といった単語もあるようですが、雑談への注目が集まり、ここに自信がない人はコミュニケーション能力がないと勘違いする人も少なくないようです。しかし実際には雑談が不得意でも、相手の会話に合わせて話を聴くことができれば、社交性を発揮できます。
「② 自己開示力」は、自分の情報をオープンにしていく力ですが、自己開示によってより親密な関係になりやすいことを覚えておけば、内気で話下手な人でもコミュニケーション能力をアップすることができます。問題は、どれぐらい自己開示をするかでしょう。互いにちょうどよい具合に自己開示することが求められるからです。あまり自分が先走ってしまうと、相手を警戒させてしまいます。
ただ、これは相手の話をよく聴いて応えるようにしていけば、内気な人でも対応できるものではないでしょうか。
「③ 自己主張力」は、コミュニケーション能力に自信がないタイプの人でも、自分の考えを述べるだけなので得意だと思う人がいるかもしれません。ただ得意だからといって、複雑すぎる話をすると、相手がついてこられなくなります。話を単純化すること、さらに自己主張だけでなく、相手の話を聴くことのバランスもしっかりと意識するようにしてみましょう。
「④感情表現力」について、榎本氏は次のように書いています。
「論理能力はあるはずなのに、なかなか相手を説得できないという人の場合、感情表現力が弱点になっていることがよくあります」
理屈が通っても、相手が共感をしてくれないと仕事が進まないことは珍しくありません。ただ内気な人にとっては、自分の気持ちを表現しにくいと感じることも少なくないでしょう。
それでも気持ちをどうやって表現するのかを考えてチャレンジするだけでも、コミュニケーション能力をアップしていくでしょう。
また、相手の気持ちへの共感を大切にしてみましょう。言葉でうまく表現できなくても、相手の気持ちを想像して表情などを含めて相手に伝えることができれば、コミュニケーションはよりスムーズになります。そんなところから感情表現力を鍛えていくのも1つの方法です。
「⑤他者理解力」を苦手とする人は、少なくないでしょう。他人の気持ちに敏感な人もいれば、鈍感な人もいます。鋭い人であれば、0.5秒にも満たない一瞬の表情「微表情」など、さまざまな手がかりから相手の気持ちを推測します。
ただ、そうした微細な情報に気づけなくても、相手に好ましいメッセージを伝えることはできます。具体的には、とにかく相手に関心を持つことです。相手を理解しようと一生懸命になっている姿勢を、プラスにとらえる人は多いからです。
苦手だと思っても諦めないことが重要でしょう。
「⑥傾聴性」とは聴く力です。
そもそもビジネスで必要なコミュニケーション能力とは、自分がしゃべりまくることではありません。相手の要望を実現するためにしっかりと話を聴き、その姿勢から信頼関係を構築していくことです。その意味でも傾聴性がアップすると、ビジネスでのコミュニケーション能力は大幅にアップします。
しかも「傾聴」はスキルとして磨くことが可能です。コミュニケーション能力に自信がないと感じる人が、真っ先に身につけたいポイントです。
実際にコミュニケーション能力をアップしたいと感じる方は、こちらもご覧ください。
参考:『ビジネス心理学大全』(榎本博明/日本経済新聞出版)