コミュニケーションが大切なことは、多くの人がわかっています。しかしコミュニケーション能力を上げるのは容易ではありません。そこで『あなは、なぜ、つながれないのか』(高石宏輔/春秋社)から、少し変わった能力アップの方法を紹介します。
- 58%はコミュニケーションが苦手
- 相手をそのまま模倣する
- ズレを発見する
58%はコミュニケーションが苦手
JTBグループで様々なコミュニケーションサービスを提供する株式会社JTBコミュニケーションデザインが、2018年にアンケート調査によれば、コミュニケーションを「苦手」「やや苦手」とした人が58%と半数を超えていました。特に苦手意識が強いのは、63%を占めた「主婦」で、次いで58%の「会社員」でした。
苦手な項目は、トップが75%の「複数の人の前で、発表すること」。次いで63%の「初めて会う人と話すこと」、 57%の「食事会や飲み会などで話をすること」「自分の意見を口に出して話すこと」と続きます。
このアンケート結果を見て、初めての人と話すときに感じる、あのちょっと気詰まりな雰囲気を思い出す人も多いでしょう。「何を話そう」「どんなことに興味があるだろう」「変に見えていないだろうか」といったことを考えていると、ますます会話もぎこちなくなりますよね!
こうした状態について、『あなは、なぜ、つながれないのか』の著者・高石宏輔氏は、「目の前の相手との関係が切れてしまう」と表現します。相手のことを見ていなかったり、感じられなくなってしまうことが、コミュニケーションを難しくしてしまっているそうです。
逆に自分の思い通りに会話を展開しようとするのではなく、相手の気持ちに通じ合い、互いにつながりを感じられる「同調」を実現できれば、
相手の気持ちを感じたり、相手に自分が言いたいと思っていることを自分のうちに感じて言葉にしやすい状態になる
のだそうです。
相手をそのまま模倣する
ただし同調しようと努力すると、余計な力が入ってしまいがちです。ポイントは、
自分自身の身体の緊張具合と感情を感じることと、相手に意識を向けること
です。
そして相手に丁寧に意識を向けて同調すれば、動きや筋肉の緊張の具合や声のトーンなども通じ合っているようになるそうです。
「同調」に近いものに、「ミラーリング」という心理学手法があります。相手のしぐさやクセ、表情、視線、会話のテンポや声のトーンを合わせることで、信頼関係を築きやすくする方法です。
ただ「同調」は「ミラーリング」より、より深くシンクロさせる必要があるようです。
実際、高石氏は次のように書いています。
相手の会話に合わせて、何かをしなければいけないという思い込みをいったん捨ててみて、自分をただ相手の前にある人形だと思ってみる。その人形は、相手の状態をそのまま映し、筋肉の緊張具合も、動きも、同じようになると思ってそのようにしてみる。
会話の相手をそのまま模倣してみるというのは、かなり思い切った方法でしょう。ただ、この状態になれば、相手を感じることができ、目の前の相手の状態を無視して、意志疎通をはかろうとする無意味が理解できるそうです。
ズレを発見する
「同調」の練習のために、高石氏は喫茶店で会話する二人組を観察し、そのズレを発見するよう提案しています。二人の話すペースが違ったり、動作がズレていたりする場合は、片方が別のことを考えているサインです。
実際に自分が会話しているときには、相手とのズレを観察しにくいので、まず他人のズレを発見できるようにしましょう。「同調」に必要な観察力が高まります。
また、実際に話しているとき、相手のことがよくわからないと感じたら、相手と同じ姿勢を取っているのかを確認してみましょう。相手に対する意識がおろそかになると、相手と姿勢が違ってしまうケースが多いからです。
さらに自分のコミュニケーションスキルを磨きたいなら、自分の口癖や会話中の動作の癖を探してみましょう。携帯などで録画して見直すのもいいでしょう。
こうした癖は、自分の自覚していない感情と結びついているケースが少なくありません。
例えば、「ちょっと困ったな」と感じたときに腕を組んでしまうのは、その典型でしょう。そして自分の感情に振り回されていると、相手に意識を向けるのがおろそかになります。
つまり自分の癖を把握しておけば、自分の気持ちの流れもわかりますし、改めて相手に注意を向けられるようになるのです。
コミュニ―ションの要は意思疎通です。だから相手の気持ちがわかり、自分の想いを的確に伝えられれば、たとえたどたどしくても成功でしょう。その意味ではコミュニケ―ションのテクニックを磨くよりも、「同調」をしっかりマスターすることが重要かもしれません。
実際にコミュニケーション能力をアップしたいと感じる方は、こちらもご覧ください。
監修:日本産業カウンセラー協会
参考:『あなは、なぜ、つながれないのか』(高石宏輔/春秋社)