ビジネスの現場でも注目されている「無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)」!

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長だった森喜朗氏の女性蔑視発言の騒動を受けて、無意識の偏見に警鐘を鳴らす記事も出ていました。そこで無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)について調べてみました。

  • 「それって常識でしょう」は危険
  • 自分の偏見は気づきにくい
  • 自分から直したと思わせるのがポイント

「それって常識でしょう」は危険

当人は悪気がないけれど偏見が強くて接すると不愉快になるといった経験もあるかもしれません。逆に自分の意識していない偏見が、周りを不快にしていないか心配になっている人もいるかも。

近年、「アンコンシャス・バイアス」への意識が高まっています。「無意識の思いこみ」「無意識の偏ったものの見方」「無意識の偏見」などとも訳されますが、意識していない偏った見方・考え方を示す用語です。

多様性が重要なテーマとなっている近年のビジネスでは、「アンコンシャス・バイアス」への注意が必要になるのも必然でしょう。また「アンコンシャス・バイアス」が、さまざまなイノベーションを阻んでいるといった側面もあり、時代の変化に対応するためにも「無意識の偏見」への対策が必要になってきているようです。

では、「アンコンシャス・バイアス」の具体的な例を書いてみましょう。

・「普通は〇〇でしょ」「それって常識でしょう」とよく口にする
・「女性には向いない」「その年齢だと無理じゃない」など、性別、年齢、学歴、社歴などで、能力や適性などを判断してしまう
・定時で帰る部下は無能だと感じる

このように仕事に関係ない属性などで能力を判断するような言葉を発していたら要注意です。

自分の偏見は気づきにくい

じつは自分のバイアス(偏り)は、気づきにくいという人間の特性があります。

プリンストン大学のエミリー・プロニンの研究によれば、自分自身は他の人よりバイアスの影響を受けにくいと思う傾向にあるそうです。

本当かな?と思った人に質問です。

「自分の仕事の能力は、日本人の平均と比べてどれぐらいだと思いますか?」

多くの人は平均よりは上だろうと思ったことでしょう。これは「レイク・ウォビゴン効果」と呼ばれる有名なバイアスです。さて、このバイアスを知ると、実力と当人の認識が食い違う人を思い浮かべられるかもしれません。ただ、改めて自分の実力を考えてみてどうでしょうか? 平均あるいは平均以下とはなかなか思えないものですよね。

では、自分のバイアスが気になる人はどうしたらいいのでしょうか?

なかなか矯正しにくいという研究結果もあるのですが、まずは自覚していない自分のバイアスを知ろうとすることです。自分で考えてもわからない場合は、仲の良い同僚などに聞いていいかもしれません。そして指摘されたら、自分にも偏見やバイアスがあるんだと自覚しましょう。

自分から直したと思わせるのがポイント


「アンコンシャス・バイアス」の問題でやっかいなのは、周りが困っているのに当人が気づいていないケースです。

重要なことは、そもそも気づきにくい問題だと認識することでしょう。
ケンカ腰で指摘して、どうにかなるのかは疑問です。「何だか分けわからないまま怒鳴られた!」と被害者意識を持たれてしまうケースもあるからです。

パデュー大学の研究によれば、自身のポジティブなイメージにつながるような声かけだと、無意識の偏見が減る傾向にあるとのこと。ただ実際の伝え方となると、なかなか難しいかもしれません。社内の研修やさらに上司から指摘といった方法も有効かもしれません。

ただ、社内で「アンコンシャス・バイアス」への意識が高まるようになると、意識を変えやすくなるでしょう。「アンコンシャス・バイアス」に留意している自らの姿勢が、会社の雰囲気を変えることにつながるでしょう。

なお、ハーバード大学とワシントン大学の研究者が開発した「アンコンシャス・バイアステスト」の日本語版がネットに公開されているので、リンクを付けておきます。無料ですので、気になる人は試してみてください。

心理学に興味のある方は、こちらもご覧ください。

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