災害や新型コロナに対処するとき知っておきたい「楽観主義バイアス」って?

「楽観主義バイアス」という言葉を耳にすることが増えていませんか? 新型コロナウイルス感染症に関連する報道で見かけることが多くなっています。そこで楽観主義バイアスについて調べてみました。

8割の人が持つバイアス

「楽観主義バイアス」や「楽観バイアス」といった言葉を、コロナ禍のメディアでよく目にするようになりました。状況を楽観的に判断してしまう認識のゆがみという意味のようです。

具体的には、災害が起きても自

分や自分の地域は大丈夫と思い込むこと。災害被災者が語る「まさか自分が被害にあうと思わなかった」といったセリフは、このバイアスを示す典型例だそうです。

ただ、物事を楽観的にとらえる傾向はマイナス面ばかりではありません。災害だけではなく、犯罪や事故などを気にしないからこそ日常生活が成り立っているという側面もあるからです。完全に安全な環境で暮らそうとすると、事故やケガ、病気が気になって外にも出られなくなってしまうでしょう。

神経科学者のターリ・シャーロット氏は、80%の人が物事を楽観的にとらえる傾向があると指摘しています。例えば、離婚率40%の欧米社会で調査しても、新婚のカップルが離婚するとは思っていないそうです。もちろん「離婚するかも」といった見通しで結婚を決める人はほとんどいないでしょうが、離婚する確率を無視しているのは確かです。

日程や予算にも影響

『意志力の科学』(ロイ・バウマイスター、ジョン・ティアニー/インターシフト)で取り上げられているのは、計画に対する「楽観主義バイアス」です。論文の仕上がり時間を学生にアンケート調査した結果、彼らが考える最短日数の平均は27日、最長日数は49日でした。ところが実際にかかった日数の平均は56日だったのです。最長の日にちを7日間もオーバーしています。

また、こうしたバイアスは、予算の見積もりなどにも影響します。「これぐらいでおさまるだろう」という甘い見積りが破綻し、結局、完成までに何倍もの資金が必要になったという話は枚挙にいとまがありません。

読者の中にも、そうした苦い思いをした経験があるかもしれません。

期待が人生を楽しくする

では、「楽観主義バイアス」をなくし、現実社会をやや悲観的に見るようになれば、物事はうまく回るのでしょうか? ターリ・シャーロット氏によれば、事はそう簡単でもなさそうです。

著名人のプレゼンを放送するWEB上のビデオコンテンツTEDで、彼女は行動経済学者のジョージ・ローウェンスタインの研究成果を発表しています。

大学生にセレブから情熱的にキスされるのに、どれぐらいのお金を支払うのか答えてもらったのこと。ポイントは時期。

「今すぐ」「3時間後」「24時間後」「3日後」「1年後」「10年後」、どの時期に最も高い値段が付いたと思いますか?

正解は「3日後」でした。

素晴らしい体験だから、今すぐにというわけではなく、期待して待つ時間もほしくなるのが人間なのでしょう。そしてターリ・シャーロット氏は、この期待感が人生を幸せにする要因の一つであり、未来に期待を抱くには楽観的価値観が必要だと説明しています。

さらに楽観的な未来を思い込むと、その思い込みに沿った行動を取るようになるので、期待した通りの未来を実現できるという性質も人間は持っています。

また人は成功すると思えるものにこそ、さらに労力を費やす傾向があるといった論文も発表されています。勝率を変えられるゲームで、85%を97%に上げる場合と、3%から15%に上げる場合を比べると、前者の方を支持する人が多かったそうです。

つまり「楽観主義バイアス」で成功すると思っている方が、より成功に向けて努力する可能性が高いのです。

楽観主義もバランスが大事

こうなると「楽観主義バイアス」もバランスの問題となるでしょう。経済や健康に関連して楽観的すぎる予測で動くことは、マイナスの結果を生み出すかもしれません。少なくても新型コロナウイルス感染症のように、生命に直結する「楽観主義バイアス」は慎むべきでしょう。

あるいは楽観的な未来だと感じても、一応、最悪の事態も想定して対処をするといった方法もお勧めです。ビジネスなどでは、最悪の事態を想定することでリスクを回避できることもあるでしょう。

また8割の人が楽観的であると考えれば、少数意見のネガティブ要素をしっかり考慮に入れておくという方法もあります。なかなか難しいとは思いますが、成功に向かっていると思えるからときこそ、発生するトラブルにも思いを巡らせておくことが重要です。

今日は報道などで耳にすることが増えた「楽観主義バイアス」についてまとめてみました。

ビジネスに役立つ心理学の知識に興味のある方は、こちらもご覧ください。

監修:日本産業カウンセラー協会

参考:「ターリ・シャーロット:楽観主義バイアス」(TED)/『意志力の科学』(ロイ・バウマイスター、ジョン・ティアニー/インターシフト)/『災害から家族と自分を守る「災害心理」の基礎知識』(野上達也/セルバ出版)/「How the Chance of Success Affects the Effort People Put In」(Art Markman Ph.D./Psychology Today)

関連記事

ビジネスの現場でも注目されている「無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)」!... 東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長だった森喜朗氏の女性蔑視発言の騒動を受けて、無意識の偏見に警鐘を鳴らす記事も出ていました。そこで無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)について調べてみました。 「それって常識でしょう」は危険自分の偏見は気づきにくい自分から直したと思わせ...
ビジネスに必要な「自信」を手に入れる4つの方法... 特にビジネスでは、自信が重要だとされています。営業をするのにプラスなのはもちろんのこと、仕事を任せるときにも自信ありげな人に頼むことが多いでしょう。そこで、どうすれば自信を持てるのかを調べてみました。 自信と自尊心の違い 自信が生み出す安心感がパフォーマンスを向上させると言われ...
緊急事態宣言が守られなくなる6つのポイント... 現在、日本各地で非常事態宣言が出されています。しかし必ずしも人流を抑えられていないといった報道もあります。そこで、どんな条件がそろうと、非常事態宣言に従わない人が増えるのか、心理学的に調べてみました。 夜間の人流は増えている 東京都の人流データの分析を実施している社会健康医学研...
自信過剰の伝染がビジネスを失敗させる!?... 自信過剰な人に出会うことは珍しくはありません。何の根拠があるのかわからないけれど、とにかく自信満々。そうした人たちと一緒にいると、自分も自信過剰になってしまうことをしっていますか?今日は自信過剰が引き起こすビジネス上の問題と、その対策についてまとめました。 自信過剰の投資は危険自信過...
「まじめに仕事しているのに評価されない」と感じたときに対策法... 職場できちんと評価されていないと感じることはありませんか?これだけ貢献しているのに、上司や会社側の評価はイマイチ。そんな日々にやる気をなくしてしまっていることも……。でも、もしかしたら、心理学的な錯覚もあるのかもしれません! 能力が低い人ほど過大評価の傾向マインドセットを変えていく ...

働く人の心ラボは、働く人なら知っておきたい『心の仕組み』を解説するサイト。
すぐに応用できる心理学の知識が満載の記事を配信しています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です