「専門家の見解が聞きたい」「全然違うフィールドの知識が必要」と思うことありませんか。自分や会社の人脈でたどり着けない場合、たいていは諦めてしまうのではないでしょうか。しかし、スモール・ワールド現象を知れば、解決できるかも!
- スモール・ワールド現象とは、紹介の連鎖で誰にでもたどり着けるという仮説
- ミルグラムのスモール・ワールド実験
- じゃあ、到達できないメッセージにはどんな要因があるの?
- SNS時代の今、人探しはもっと簡単かも!
- 自分よりも知り合いの多い人に、一本メールを出してみよう
スモール・ワールド現象とは、紹介の連鎖で誰にでもたどり着けるという仮説
スモール・ワールド現象とは、どんなに自分と無関係な人物であっても、知り合いによる紹介を繰り返していけば、たやすくその人にたどり着くことができるという仮説です。学校に入学したり、就職したりなど新しい環境に入っていったとき、旧知の友人との思わぬつながりを感じることはありませんか。「世間は狭いね!」と感じるその瞬間が、「スモール・ワールド現象」を体現しているのです。
ミルグラムのスモール・ワールド実験
スモール・ワールド現象については、スタンレー・ミルグラムが行った実験が有名です。ミルグラムは、アメリカ中西部でランダムにサンプリングされた個人に手紙を渡し、知人だけで手紙を手渡しリレーしてボストンの株ブローカーへ届けるよう伝えました。最初の個人と株ブローカーには何の接点もなく、単に遠く離れたところに住んでいる人として選ばれただけです。
実験参加者は知人だけで手渡しリレーを行うわけですが、最後に手紙を受け取るべき株ブローカーを知らないながらも、「知っていそうな人」を選んで手紙を渡さなければなりません。こうしてリレーを行ったところ、平均して6人の中継者がいれば、見ず知らずの他人に手紙を渡せることがわかりました。
広大なアメリカにおいてすら、たったの6人で特定の他人にたどり着くのです。日本に限れば、もっと少ない人数で強力なツテにたどり着くことが期待されそうです。また、舞台を世界全土へと広げたとしても、現実味のない話とはいえないでしょう。
この実験は以前から言われていた「六次の隔たり」という仮説を証明したもので、紹介をたどっていけば誰にでもたどり着けるという言説は、かなり昔からありました。
じゃあ、到達できないメッセージにはどんな要因があるの?
実際にさまざまな人に「この人を紹介してほしい」とお願いしたのに、何の音さたもない……という経験を持つ人もいるかもしれません。ミルグラムの実験においても、到達した場合の平均値は6人であっても、実際には到達しなかったケースがたくさんあります。
メッセージが止まってしまう要因について注目し、実験を行った安田雪氏は、連鎖を止める要因を2つ提示しています。ひとつめは、より知人の少ない人へメッセージを送ってしまうこと。そして2つめは、知人間でメッセージがくり返されてしまうことです。
行き止まりを防ぐためには、「より知人が多い人につなぐ」「自分にメッセージを送ってきた人が属していないコミュニティーへつなぐ」。この2点が意識されると良いことを、実験は示しています。
また、ミルグラムの実験では、手紙の見た目がメッセージの伝達に大きな影響を及ぼしたことも知られています。確かに、「この手紙を確かに目当ての人へ送らなければ」と思わせる見栄えのするものでなければ、協力しようというモチベーションを湧かせることはできないでしょう。
SNS時代の今、人探しはもっと簡単かも!
ミルグラムの実験が行われたのは1967年ですから、まだインターネットが普及していない時代です。もちろんSNSなんてありません。それでも平均して6人の人を介せば、全く見ず知らずの人にたどり着いたというのですから、すごい話ですよね。コミュニケーション手段が多様化している現代であれば、もっと少ない人数で目当ての人物にたどり着くことも可能ではないでしょうか。
これについてはすでに調査が行われています。Facebookのユーザーを対象とした調査によると、平均して3~4人を介すれば誰とでも繋がれることがわかりました。この人数は、年々縮小しています。
自分よりも知り合いの多い人に、一本メールを出してみよう
コネもツテもない人に会いたいと思ったときは、丁寧なあいさつ文をしたためて、自分よりも知り合いの多い人に託しましょう。「この人を紹介していただけませんか」だけでは、「知らない」と言われて終わりかもしれません。「この人を知っていそうな人を、紹介してくれませんか」とお願いするのがコツです。
畑違いの人物であっても、事務所を通して依頼したらすぐ断られてしまいそうな超有名人であっても、まずは知人からあたってみるのが正解です。紹介を通して知り合えば、正面切っての依頼よりもフレンドリーに接してもらえる可能性があります。まずは、どの人にコンタクトをとると良いかを考えてみましょう。
コミュニケーションのスキルを習得したい方はこちらをご覧ください。
参考:『社会心理学』(池田謙一ほか 著/有斐閣)/「弱い紐帯の弱さ」(安田雪)/「スモールワールドとチャンス発見」(松尾豊)/「Three and a half degrees of separation」(By: Smriti Bhagat, Moira Burke, Carlos Diuk, Ismail Onur Filiz)