ロックダウンの罰金について心理学から考える

新型コロナウイルスにより世界各国でロックダウン(都市封鎖)が起こっています。中には外出禁止違反に罰金を科してしている国もあるそうです。そこで罰金にどれだけ効果があるのか、罰と効果について心理学的に考えてみました。

フランスでは罰金が増額

フランスでロックダウンが起きた当初、外出禁止違反の罰金は日本円で5000円程度でした。ところが出歩く人が後を絶たず、4回違反した人には45万円もの罰金が科されるようになったそうです。

さすがに45万円ともなると抑止力になりそうですが、そもそも罰金はどれほどの効果があるのでしょうか?

罰金で有名な国と言えば、シンガポールでしょう。

ゴミのポイ捨ては、初犯で最高1000シンガポールドル(約8万円)も科されるのです。再犯ともなれば2倍の罰金となるので、さすがにゴミを放り投げる人もいなくなるかと思うかもしれませんが、近年、シンガポールではポイ捨てが増えているとのこと。2014年には抑止力の低下が問題となり、罰金の額を引き上げたにもかかわらず、翌年には32%増という数字を記録しました。

●金銭報酬が内発性モチベーションを壊す

この問題を考える上で参考になるのが、お金とモチベーションの関係です。

ロチェスター大学の学生にパズルを解かせる有名な実験があります。

大学生のグループを2つに分け、第1回目は普通にパズルを解いてもらい、2回目は片方のグループにだけ「時間内に解けたら報酬を与える」と告知する。3回目は前に金銭的報酬を与えたグループにだけ「今回は報酬を支払えない」と宣言します。

じつは実験者が観察していたのは、8分の休息時間でした。この休息時間にモチベーションの高い学生はパズルを解き続けるからです。

結果、1回目から3回目まで同じ条件で実験を繰り返したグループは、休息時間内にパズルに費やす時間が変わらなかったのに、2回目から金銭報酬を約束したグループは2回目の休息時間こそパズルに費やす時間が延びたものの、報酬を支払わないと宣言した3回目は時間が減ってしまったのです。

金銭報酬の話さえしなければモチベーションが下がることもなかったのですから、金銭報酬が何かを変えてしまったことは明らかです。これは自発的に取り組む「内発性モチベーション」が、報酬や社会的な成功など外部からの報酬が動機となる「外発性モチベーション」に変わってしまった例です。

もともと面白くてパズルを解いていたのに(1回目)、報酬につられてやる気が上がり(2回目)、報酬が無くなってやる気をなくした(3回目)という流れです。

罰金が罪悪感を消した

お金が物事の捉え方を変えるという点では、保育園の引き取りに遅刻した親から罰金を取った実験も興味深いい結果が出ています。1時間遅れるごとに10ドルの罰金を取ったところ、遅刻が増えたのというのです。

もともと子どもを預けた親は罪悪感を抱きながら遅刻をしていました。しかし、金銭が発生したら、それは延長保育と同じ。どうにか遅刻しないようにという「内発性モチベーション」は、罰金のおかげで消えてしまったのです。

罰則の効果は限定的

では、罰金に変わる方法はどのようなものがあるのでしょうか?

行動分析学の観点からは、罰によって行動を規制すること自体、限定的な効果しかないことがわかっています。

効果が一時的だったり、より望ましくない行動に変わったり、抑制力が発揮されるときは従うけれど行動そのものが変わるわけではない、といった問題が生まれてしまいます。

これは罰しても行動が変わらない人を思い浮かべれば、すぐに納得できるのではないでしょうか。例えば学校での遅刻を例に取れば、監視がいるときだけ遅刻しない、監視がいない抜け道を探し出す、結局、遅刻癖は直らないといった結果になるということです。

行動分析学では、ターゲットとなる望ましくない行動を分析して、どうしてそんな行動を取るのかを明らかにします。その行動を続けることが、当人には何らかのプラスになっていると考えるのです。このとき「乱暴な人だから」とか、「人の気持ちがわからないから」といった、性格など行動に関連しない理由を考えないようにします。

そのうえで、その行動を変えていきます。

ロックダウンに協力する意味をしっかりと考える

こうしたことからロックダウンについて改めて考え見れば、まず「禁止されたから」という動機ではなく、自発的に取り組むようになる「内発性モチベーション」を高めることが重要になるでしょう。外出禁止の意味を理解し、自分が外出を控えることで大事な家族や友達を救うことができる。そう考えるだけで、「内発性モチベーション」が高まるのではないでしょうか。

行動分析学的に考えるなら、どうして外に出かけようとするのか、まず、その理由を探っていきます。例えば「出かければ仲間がいる」「楽しくお酒を飲める」などの理由が思い当たるかもしれません。こうした行動を変える方法として、『メリットの法則 行動分析学・実践編』(奥田健次 著/集英社)は「てんびんの法則」を紹介しています。

外に出かけてしまう人も自宅に居て「いいな」と思えることもあれば、「嫌だ」と感じることもあります。もちろん外に出かけるときも、自分なりにプラスとマイナスを感じています。

「てんびんの法則」は自宅のプラス・マイナスと、外に行くことのプラス・マイナスを合わせたときに、よりプラスが多い方に動くと考えます。自宅にいる安全性などより、外に遊びに行くプラスの感情が勝っているから出かけてしまうというわけです。つまり自宅でプラスの感情が湧くように環境を整え、外に出歩くより自宅の方がいいと思えば、外にも出なくなるのです。

例えばテレビ電話でつないで仲間と楽しく飲み会をするといった方法は、自宅のプラスを高めるでしょう。あるいは外を出歩くことの危険性を実感すれば、外出のマイナスが大きくなるはずです。

今回は罰とその効果について、心理学の観点から考えてみました。

さらに心理学で行動を変えていくことに興味のある方は、こちらをご覧ください。

参考:『世界最前線の研究でわかる! スゴい! 行動経済学』(橋本之克 著/総合法令出版)/『メリットの法則 行動分析学・実践編』(奥田健次 著/集英社)/「『遅れたら罰金』で逆に遅刻が増えるという人間の不思議な心理」(大江英樹 著/ダイヤモンド・オンライン)

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