手に入らないものこそ欲しくなる!? 実験が明らかにする選択の心理

「手に入らない」と聞いて、その商品を探した経験のある人もきっといることでしょう。ところが手に入れてみれば、さして欲しい商品でもなかったり……。

手に入らないからこそ欲しくなる。その心理を解説します。

  1. 手に入らないレコードの評価は上がる
  2. つくられた「品薄」に注意
  3. 「心理的リアクタンス」の魔法

手に入らないレコードの評価は上がる

「限定商品」「プレミアム」そんな宣伝文句には打ち勝てても、実際に「売り切れ」「品薄」という話を聞くと、俄然、燃え上がってしまう人はいませんか? 実際、人気が出て生産が間に合わなくなり、出荷に遅れが出ているという報道によって、品薄がより深刻化するのは珍しいことではありません。

でも、どうして商品がないとわかると、人は欲しくなってしまうのでしょうか。
「ない」と言われると欲しくなってしまう心理実験について、説明しましょう。

米国の社会心理学者ブレムが行った心理実験は、フォークソングを聞いて大学生に評価してもらうというものでした。
まず、初日に4種類のレコードの評価という実験の概要を説明するとともに、2日目の調査が終わったら4種類のうち1枚のレコードをプレゼントすると約束します。その後、4種類のレコードを鑑賞し評価してもらいます。

そして2日目の調査の日には、4枚のうち1枚だけが手違いで届かなかったため、そのレコードをプレゼントできないと伝えたのです。その後、1日目と同じようにレコードを鑑賞し評価してもらったのです。
結果、プレゼントできないと言われたレコードの評価が、2日目ではアップしました。

つくられた「品薄」に注意

人は自由に選択できなくなると、その事実に抵抗する心理が生まれるそうです。この実験のように手に入らないときだけではなく、なかなか会えない人だからこそ会いたくなったり、試験前にテスト科目以外を勉強したくなるのは、自由な選択を制限された反動なのです。

つまり手に入ると思っていたときは、それほど欲しいと思わないのに、手に入らなくなると思った途端、無性に欲しくなる原因は、こうした人間の心理によるものでした。

こうした心理を狙った販売戦略は珍しくありません。

数量限定とうたったり、メニューに品切れといった張り紙をしたり。午前中で完売だから午後からは店を閉めるという話が伝わり、余計に大行列ができたといった例も。さらには、紹介でなければ商品を買えないという方式を取る店などもあります。

もちろん実際に生産できる量が限られていることで起きる「品薄」もあるのですが、戦略として「品薄」が作られることもあるようです。消費者としては、少し注意しておきたいところです。

「心理的リアクタンス」の魔法

逆に商品を販売するときに「品薄」を煽るようなやり方は、一時的にはプラスに働きますが、行き渡ってしまうと魔法が解けたようにプラス評価を失ってしまいがちです。つまり新商品を広く知らせる効果はありますが、その後、リピーターを獲得できるのかは商品の持つ魅力によって変わってくる戦略ともいえます。

また「手に入らない」と聞けばプレミアム感は高まりますが、逆に「面倒だからいらない」と思う人は購入を避けるので、期待値を煽られた人だけが集ってしまいがちです。そうなるとリピーターとして定着してくれるかどうかが不安材料にもなるのかもしれません。

「手に入らないものが欲しくなる」タイプの人で、最も厄介なのは人間関係で同じような心理を発動してしまう人ではないでしょうか。今までそれほど好きではなくても、恋人ができた、結婚したなどなど、自分の手の届かないところに行ってしまうと思った途端、猛アプローチをかける人もいるからです。

こうした人にアプローチをかけられたときには、「手に入らない気持ち」が引き起こした心理的反応だと思い出すといいでしょう。手に入った途端、魔法のように冷めてしまう気持ちを信頼するのは、ちょっと難しいかもしれません。

こうした一連の心理は、選択の自由が外部から脅かされたときに起きる反発は、「心理的リアクタンス」の一つとして説明することができます。「心理的リアクタンス」とは、自由を制限されるほど、その自由を取り戻そうとする心理現象のことです。強制的に選択を狭められると逆に執着してしまうという心理を学ぶと、人の選択が心理的な制約を受けていることがわかりますね。

その心の仕組みを知っておけば、自分にとって本当に必要なものを選びやすくなるでしょう。

人の心理について興味のある方は、こちらをご覧ください。

監修:日本産業カウンセラー協会

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